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障がい者が安心して働ける場を提供し社会に貢献

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厚生労働大臣が認定する「もにす認定」を取得、
グループ外からの業務の受託拡大を目指す

知的障がい者の雇用促進を目的に、1998年2月に設立されたアズビル山武フレンドリーは、2024年4月、厚生労働省が実施する「もにす認定」を取得。障がい者が安心して働くことができる環境を積極的に整備するとともに、azbilグループ外からの業務の受託にも積極的に取り組み、業務を通じた障がい者の自立と社会参画を推進しています。

創業27年目を迎えた、障がい者雇用を推進する特例子会社

アズビル山武フレンドリー株式会社は、アズビル株式会社(当時、山武ハネウエル株式会社)が知的障がい者を雇用する特例子会社として、1998年4月、アズビルの藤沢テクノセンター(当時、藤沢工場)内で創業しました(設立時、山武フレンドリー株式会社)。同社は、アズビルの創業90周年記念で実施されたアイデアコンテスト「クリエイト21」の中で、社員からの発案を契機に設立されたというユニークな経緯を持っており、知的障がい者、さらには精神障がい者の方たちにも働く場を提供するとともに、個々の特性に合わせたスキル向上と、自立、社会参画を促進していくことをミッションに掲げています。

2009年には伊勢原工場(現在は湘南工場に統合)、2011年には湘南工場内に分室をそれぞれ設置。現在、藤沢テクノセンターと湘南工場に38名のアズビル山武フレンドリーの社員がおり、azbilグループ内の事業運営に付随する業務に取り組んでいます。具体的には、郵便物の集配、宅配便・製造部品の受入れ、製本、エアクリーナーのメンテナンス、工場廃棄物の回収・分別・解体、緑地の維持管理、生産ラインでの製造補助、製品開発における実験データの記録支援など、多岐にわたります。近年は、azbilグループが働き方改革の一環として業務環境におけるペーパーレス化を進めていることもあり、紙の文書をスキャンして電子保存するという業務が急増しており、社会全体でデジタル化が進む中、業務内容も変化しつつあります。

社員の指導・管理に当たるスタッフは8名で、アズビルからの出向者で構成されています。アズビル社員の発想から生まれた会社ということもあって指導担当者の社員に対する理解は深く、また社員の成長への想いも強いものがあり、それらが的確な指導に直結しています。一方、社員は質の高い仕事を実践することで成果を発揮しています。障がいのある社員とのこのような良好な関係が継続的な事業拡大と雇用拡大の要因となっています。

藤沢テクノセンター内施設の清掃作業
藤沢テクノセンター内施設の清掃作業
アズビル社内向けの機関紙を封筒に封入して宛名ラベルを貼り付け、配送する業務
アズビル社内向けの機関紙を封筒に封入して宛名ラベルを貼り付け、配送する業務
藤沢テクノセンターの植栽の整備作業。
藤沢テクノセンターの植栽の整備作業
工場廃棄物を回収、解体し、分別して廃棄までの作業を担当。
工場廃棄物を回収、解体し、分別して廃棄までの作業を担当

自己採点を通じて明らかになった、自社の強み・課題

アズビル山武フレンドリーでは、2024年4月に「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づく「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」(通称、もにす認定制度)の認定を取得しました。この制度は、障がい者雇用の促進や安定に関する取組みの実施状況などが優れている中小事業主を厚生労働大臣が認定するものです。認定を受けた事業主を地域における障がい者雇用のロールモデルとして公表し、地域の中小企業全体で障がい者雇用の取組みを進展させることが期待されています。

もにす認定の取得を目指す事業主は、地域の労働局に申請し、面談と書類審査により、認定基準をすべて満たしていると認められなくてはなりません。その書類の一つが、自社が実施する取組みの内容やその成果、および情報開示にかかわる詳細な評価基準項目をまとめた評価基準自己採点表(以下、自己採点表)です。自己採点の内容は、第三者による評価や明確な証跡によって客観的に裏付けられている必要があるため、申請準備には多大な労力を費やします。アズビル山武フレンドリーは、2023年10月に神奈川労働局を訪問して面談を受け、数回にわたる書類確認手続きを経て、認定を取得しました。

取得に向けた取組みは、同社にとって、強みとなる点、逆に改善を要する課題などを明らかにするきっかけとなりました。具体的な強みとして、その雇用状況が挙げられます。azbilグループでは、法定障害者雇用率※1の算定にかかわるグループ適用を行っている国内5社(アズビル、アズビル山武フレンドリー、アズビルトレーディング株式会社、アズビル金門株式会社、アズビルTACO株式会社)全体での障害者雇用率において、法定障害者雇用率である2.5%を上回る、2.63%を達成しており(2024年6月1日現在)、その達成にはアズビル山武フレンドリーが大きく寄与しています。平均勤続年数が15年以上と極めて長く、設立時から在籍し、既に50歳を迎えた社員もいるなど、定着率の高さも強みの一つです。同社では、障がいのある社員もアズビル社員と同じ勤務時間(7時間55分)で働いています。障がい者雇用事業所としては就労時間が長いことから賃金も高く、賞与も支給されます。そうした待遇面も社員のモチベーションとなり高い定着率につながっているといえるでしょう。もにす認定の取得に際しては、これらの点が高く評価されたものと考えられます。

一方、課題として明らかになったのが、社員の自立や自己啓発を促す制度など、将来に向けて、地域社会との共生を後押しするための仕組み、あるいは会社で長く働き続けることを支援するための仕組みを強化することです。同社ではその対応策として、社員の地域参加や友人づくりを応援すべく、レクリエーション補助金を制度化しました。また、スポーツジムでの健康増進や、パソコン教室での学習、そのほかの資格取得など、社員自らが学ぶ機会を奨励する自己啓発補助金制度も立ち上げ、健康なからだづくりや、スキルアップをサポートする体制としました。両制度ともに2024年10月から運用を開始しました。

藤沢公共職業安定所 所長(左)から認定通知書を授与されるアズビル山武フレンドリー株式会社 大塚社長(右)

藤沢公共職業安定所 所長(左)から認定通知書を授与されるアズビル山武フレンドリー株式会社 大塚社長(右)

認定取得を有効な材料とし、グループ外からの業務受注強化を目指す

アズビル山武フレンドリーが、もにす認定を取得した目的の一つに、外部からの業務受注の強化があります。認定取得により公的にオーソライズされた評価を得ることは、内部的には障がいのある人たちが安心して働くことができる環境を整えることに寄与するだけでなく、それによって職場が活性化し、仕事に対する意欲の喚起にもつながります。

一方、外部的には、認定の取得が障がい者雇用にかかわる優れた仕組みを有している会社であることの証明となり、azbilグループ外からの仕事の受注にも有利な材料となります。その結果、社員が意欲的に働き、外部企業からも受注できることで会社の業績が向上し、新たな人材の採用に必要な原資が得られるという好循環を生み出します。

アズビル山武フレンドリーでは、もにす認定の取得以前から、輸送船を運航する日本郵船株式会社の関係会社より、自動車輸出に使用する車両固定用ロープ(ラッシングベルト)の保証期間が切れた際に、それを切断しリサイクル燃料の再生業者に送付するという業務を受託しています。もにす認定を得たことが、そうしたグループ外の企業からの受注拡大につながることも大いに期待しています。

今後もアズビル山武フレンドリーでは、知的障がい者や精神障がい者が活躍できる職場づくりに注力し、事業の拡大に積極的に取り組みながら、社員の雇用をさらに拡大することで、より一層の障がい者雇用促進を通じて社会貢献を果たしていきます。

有識者インタビュー

神奈川労働局
職業安定部 職業対策課

日本では障害者雇用促進法で企業に対して、障害者雇用率に相当する障害者数の雇用を義務付けています。2023年の法定雇用率は2.3%でしたが、神奈川県内の民間企業の法定雇用率達成企業割合は46.6%。未達成企業の約9割は中小企業であり、なかなか雇用が進んでいないのが現状です。
また、近年は精神障がい者の求職者が増えていますが、身体障がい者と比べ、事業主側の理解が進んでいない状況にあります。もにす認定制度は、そうした理解や障がい者雇用への関心を促すとともに、障がい者雇用に取り組む企業に社会的なメリットを付与することで、雇用を促進することを目指し創設されました。

労働局・ハローワークは、障がい者雇用を推進する厚生労働省の下部組織として地域の関係機関と連携し、障がいのある求職者に対する就職支援を行うとともに、企業への人材あっせん、各種の指導・支援を通じて障がい者雇用を推進しています。法定雇用率が達成できていない企業にはハローワークが指導を行いますが、障がい者を雇用したことがない企業には、そのノウハウがありません。そのためハローワークでは、「企業向けチーム支援」として、企業ごとのニーズに合わせ、障がい者雇用の準備段階から採用後の定着までの一貫した支援を行っています。
また、企業で働く方を対象に、精神障がいや発達障がいへの理解を深めていただく一助として「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催しています。

企業を対象とした障がい者雇用促進のためのセミナーを実施しており、もにす認定企業の方に自社の取組みについてお話しいただくこともあります。
もにす認定制度に最も期待されているのは、障がい者雇用の理解とその周知効果です。現在、神奈川県には23社のもにす認定企業がありますが、企業に限らず、障がい者やその保護者、学校などにはまだ、もにす認定を知らない方が多くいます。そうした方に向け、もにす認定企業の取組みを発信し、障がい者雇用を広めていきたいと考えています。

2026年には法定雇用率が2.7%に引き上げられ、従業員37.5人以上の企業が対象となるため、新たに雇用義務が発生する企業も増えます。また既に雇用している企業も、今後、雇用拡大に伴う職域開発や高齢化などの新たな課題が生まれてくるでしょう。そうした意味でも、アズビル山武フレンドリーには既に取り組んでいる高齢化やキャリアアップに向けた施策など先進的な取組みを推進し、障がい者雇用におけるロールモデルとなる活動にも、今後より一層注力していただけることを大いに期待しています。

もにす認定を取得した会社が使うことができるマーク

もにす認定を取得した会社が使うことができるマーク

  • *1:法定障害者雇用率
    障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)に基づき、民間企業や国、地方公共団体は、定められた障害者雇用率に相当する人数以上の障がいのある方を雇用しなくてはならない。事業主に対して、従業員の一定の割合以上の障がい者の雇用を義務付けている。