Harmonas-DEO(英文サイトへリンク)
MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE
生産能力倍増を目標にプラントを拡張
さらなる生産効率の向上と安定操業を目指す
MITSUI ELASTOMERS SINGAPOREでは、急速な需要拡大に対応するため、生産能力の倍増を目指してプラントの新設に踏み切りました。生産を支える制御システムの構築に際しては、既存プラントにおける経験を踏まえたプロセスの改善などにも積極的に取り組み、生産工程におけるさらなる効率向上を実現しています。
![MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/__icsFiles/afieldfile/2021/07/29/nou_357_01.jpg)
MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE
工場・プラント分野 化学 安定稼働 稼働改善 海外 運転監視・制御システム&ソフトウェア
導入製品・サービス
生産能力の倍増を目指し、新プラント建設を決断
石油精製の分野で世界をリードする、シンガポールの石油化学産業の集積地として知られるジュロン島。約32平方キロメートルの島内には、一大石油化学コンビナートが展開され、関連分野の世界的プレーヤー企業の工場が、日々石油の精製や石油化学工業用品の生産を行っています。同島にあって、2003年4月以来、タフマー※を中心としたエラストマー製品の生産工場を操業しているのがMITSUI ELASTOMERS SINGAPORE PTE LTD(MELS)です。タフマーは、軽量で柔軟性を特長とする樹脂です。ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂にブレンドすることで耐衝撃性などが改善され、自動車のバンパーほか、包装材や電線被覆材、スポーツシューズのミッドソールなど、様々な用途に用いられています。
2007年7月、MELSは近年の特にアジア地域における急速な需要拡大を受け、生産能力の倍増を目指して生産設備の増強を決定。従来の第1プラントに加え、新たに第2プラントを新設することにしました。それに際して同社では、山武の現地法人であるアズビルシンガポール(ASG)をパートナーに迎え、プラントの生産工程を支えるDCS※1に山武製の監視・制御システムHarmonas-DEO™と関連制御機器を採用しました。
「山武のDCS製品については、第1プラントでも採用しており、その実績に裏付けられた大きな信頼感がありました。また、これまでのオペレータのスキルをそのまま活かせるという意味でも、ASGおよび山武製品の採用は極めて自然な成り行きだったと思います」(大堀氏)
さらなる機能性を追求し、2つのシステムをリニューアル
![第1プラント、第2プラントを集中監視する中央制御室に設置されたHarmonas-DEO。](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/img/nou_357_02.jpg)
第1プラント、第2プラントを集中監視する中央制御室に設置されたHarmonas-DEO。
MELSでは、第2プラントの建設を機に、これまで第1プラントで稼働してきたPlant Information System(PIS)、およびモデリングシステムのリニューアルにも着手。PISとは、生産する各銘柄のレシピ情報を管理し、生産時にその情報をDCSに伝えて、圧力や温度の適正な制御を行うといった機能や、逆にDCSから生産結果を収集して指示どおりの生産が行われたかを検証する機能などを提供するもので、いわばMES※2に相当します。従来、同社では、あるデータベースパッケージを基にこのシステムを自社開発していましたが、将来に向けた汎用性や拡張性の確保を目指し、その再構築を山武に依頼しました。
また、MELSでは単一設備において多品種の銘柄のタフマーを連続生産しており、生産銘柄を変更する際には、通常、まずレシピを変更して生産を行い、その生産物をラボに持ち込んで、その粘度などの物性値が当該銘柄の許容範囲にあるかどうかを検証するというプロセスを踏みます。つまり、物性値が次に生産する銘柄の要件を満たしているかどうかは、実際に生産してみた後でないと分からないわけです。
これに対し同社では、あるモデリングツール製品をベースに設備内の様々な情報を収集、分析して、実際に生産した後ではなく、生産しながら生産物の物性値を推定するための仕組みを構築してきましたが、運用を重ねていくうちにコストや今後のシステムの継続性、スペック上の課題が浮上していました。そうした課題の解消に向け、既存ツールを山武の提供するデータマイニングツールdataFOREST™に置き換えることにしました。
「生産物の物性値を実際に調べなくても、その推定を正確に行うことができれば、生産対象の銘柄の切り替えに要する時間を大幅に短縮することができ、ひいてはプラント全体の生産性向上にも大きく寄与することになります。dataFORESTの仮想センサ技術は、まさにそうした我々のニーズを最適な形で満たしてくれるツールだと考えました」(WASUNTARAWAT氏)
![事務所に設置されたTSS(Thin client Supervisory Server)サーバー/クライアントのクライアント端末。MELSでは、TSSの導入により、中央制御室以外からも随時、Harmonas-DEOの監視・制御画面の確認、操作が行える。](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/img/nou_357_03.jpg)
事務所に設置されたTSS(Thin client Supervisory Server)サーバー/クライアントのクライアント端末。MELSでは、TSSの導入により、中央制御室以外からも随時、Harmonas-DEOの監視・制御画面の確認、操作が行える。
![事務所に設置されたPREXIONのクライアント画面。ここでは、生産設備の稼働状況にかかわる履歴やトレンドの閲覧が行え、トラブル発生時の原因解析にも役立てられている。MELSでは、第1プラント構築時にPREXIONを導入し、第2プラントにもこのツールを適用。プロセス改善に活用している。](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/img/nou_357_04.jpg)
事務所に設置されたPREXION™のクライアント画面。ここでは、生産設備の稼働状況にかかわる履歴やトレンドの閲覧が行え、トラブル発生時の原因解析にも役立てられている。MELSでは、第1プラント構築時にPREXIONを導入し、第2プラントにもこのツールを適用。プロセス改善に活用している。
安定操業と品質確保に向け、生産プロセスの改善をさらに推進
今回のプロジェクトについては、全面的に山武が構築を請け負ったPISを除いて、すべて第1プラント同様、ソフトウェアやハードウェア機器を山武が提供し、生産のニーズに合わせたエンジニアリングやプログラミングの作業をMELS自身が実施するという体制が取られました。
「そうした形で我々自身が容易にエンジニアリングに取り組めるという点も山武製品を利用する上での大きなメリットです」(LI氏)
MELSの第2プラントは、2010年3月に稼働を開始。DCSやPISといったシステムの安定稼働により、同社ではプラントの生産能力を倍増するという所期の目標を達成することができました。
「第2プラントでは、第1プラントでの経験を活かし、自動化のためのシーケンスなども改善してDCSに実装しています。その成果もあって、第1プラントの立ち上げ時に要した日本からの支援スタッフの数が9人だったのに対し、第2プラントではそれが2人。あとは現地の担当者だけで賄うことができました」(大堀氏)
「稼働後の操業についても、第1プラント同様、24時間365日、連続稼働を要求されるシビアな現場です。仮にシステム上のトラブルが発生した際にも、ASGに連絡すれば速やかに担当者が駆けつけ、最短時間で解決してくれるので、サポート面でも大きな安心を感じています」(KUAH氏)
MELSでは、今後も今回導入した一連のシステムをさらに使いこなすことで、継続的な安定操業と、生産物の品質確保に向けた生産プロセスの改善を強力に推進していくことになります。
「まだ確定していませんが、さらなるプラントの増設も検討のテーブルに上りつつある状況です。そうしたプロジェクトが現実のものとなれば、制御システム構築のパートナーとしてASGが最も有力な候補に挙がることは間違いありません。ASGには、ぜひ今後も、その優れたサポート力、製品力で、当社の生産活動を支援していってもらいたいと考えています」(大堀氏)
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 DCS(Distributed Control System)
分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。
※2 MES(Manufacturing Execution System)
製造業における受注から製品の製造、出荷に至る生産活動のトータルな最適化を支援するシステム。製造状況の把握や実績の記録のほか、作業の手順の標準化といった局面でも役立てられ、現場作業の効率化や品質向上に貢献する。
お客さま紹介
![MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE 取締役 プラント部門 ゼネラルマネージャー 大堀 良治氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/__icsFiles/afieldfile/2021/07/29/nou_357_06.jpg)
SINGAPORE
取締役
プラント部門
ゼネラルマネージャー
大堀 良治氏
![MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE エンジニアリング部門 マネージャー LI Shi Wei氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/__icsFiles/afieldfile/2021/07/29/nou_357_07.jpg)
SINGAPORE
エンジニアリング部門
マネージャー
LI Shi Wei氏
![MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE 生産部門 マネージャー KUAH Hsian Yang氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/__icsFiles/afieldfile/2021/07/29/nou_357_08.jpg)
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生産部門
マネージャー
KUAH Hsian Yang氏
![MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE プラント部門シニアエンジニア WASUNTARAWAT Parinda氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/__icsFiles/afieldfile/2021/07/29/nou_357_09.jpg)
SINGAPORE
プラント部門
シニアエンジニア
WASUNTARAWAT Parinda氏
MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE
![](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_357/__icsFiles/afieldfile/2021/07/29/nou_357_05.jpg)
MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE
MITSUI ELASTOMERS SINGAPORE PTE LTD
- 工場所在地/701 Ayer Merbau Road Singapore 627853
- 設立/2001年2月7日
- 生産内容/エラストマー製品の製造・販売
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2011年08月号に掲載されたものです。