ユニチカ株式会社 宇治事業所
DCS更新を契機にプラントの運用改善に着手。
ツール導入で作業負荷の大幅な軽減を実現
「高分子」「機能材」「繊維」「生活健康・その他」の各分野で幅広い事業を展開するユニチカ。同社の宇治事業所では、樹脂事業の主力製品「Uポリマー」の製造プラントを支えるDCSを更新。併せて、プラント操業の運用改善を支援するための仕組みを構築しました。その結果、現場担当者の作業負荷を大幅に軽減。人材の有効活用の可能性が大きく広がっています。
![ユニチカ株式会社 宇治事業所](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/__icsFiles/afieldfile/2021/07/30/nou_388_01.jpg)
ユニチカ株式会社 宇治事業所
工場・プラント分野 化学 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア
導入製品・サービス
プラント操業の運用改善に向けた仕組み作りもDCS更新と併せて検討
ユニチカ株式会社の前身、有限責任尼崎紡績会社が設立されたのは1889年。以来、120年を超える歴史の中で、ユニチカは紡績業から様々な分野へと事業を発展させてきました。現在は、フィルムや樹脂、不織布などの「高分子事業」、ガラスクロスや活性炭繊維などの「機能材事業」、建築や衣料分野向けの「繊維事業」、健康補助食品や医療材料などの「生活健康事業・その他事業」を4つの柱に事業を展開しています。
同社の宇治事業所は京都・宇治川河畔の31万m²という広大な敷地に作られた生産・開発・研究の中核拠点です。この宇治事業所では、樹脂事業の主力製品「Uポリマー」を製造しており、同プラントの監視・制御をつかさどるDCS※1について更新を行うことになりました。Uポリマーとは、同社が世界に先駆けて工業化したスーパーエンジニアリングプラスチック製品で、その優れた透明性・光学特性、耐熱性を活かし、自動車のヘッドライトのリフレクターをはじめ、幅広い分野の製品で活用されています。
「今回の更新は、プラントを立ち上げてから十数年間稼働してきたDCSの老朽化によるものですが、これを契機にプラント操業についても運用のあり方を見直し、改善を図りたいと考え、それを支援する仕組みも併せて検討することにしました」(濵田氏)
既存の人的スキルや設備を最大限に活用できる点を高く評価
![2階の監視室に設置されたHarmonas。1~4階に設置されたプラント内の各設備について監視・制御を行っている。](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/img/nou_388_02.jpg)
2階の監視室に設置されたHarmonas。1~4階に設置されたプラント内の各設備について監視・制御を行っている。
ユニチカでは、これらの要件に基づき、複数のベンダーに提案を依頼。各社から提出された提案内容を、ユニチカ設備技術株式会社とともに検討を開始しました。ユニチカ設備技術は、ユニチカの製造設備の設計・建設・維持管理を担当する企業で、そこで培ったノウハウを活用して、各種プラントのエンジニアリングサービスの提供、あるいは耐火スクリーンや水質連続監視装置といった製品の販売も行っています。
DCS更新について検討を行った結果、アズビル株式会社が提供する協調オートメーション・システム Harmonas™が採用されました。
「現場担当者から、これまで慣れ親しんできた使い勝手を踏襲したいという強い要望が上がっていました。既存のDCSはアズビルのものでしたので、そういった意味でもHarmonasは最適な選択肢でした。さらに、アラームやトラブルを減らすための運用改善についての相談もアズビルに投げかけていました」(角川氏)
「既存DCSで利用していたキャビネットを再利用してコスト削減を目指したいと考えていました。既存設備を有効利用できるという観点からも、アズビル製品を継続利用するメリットは大きかったです」(大林氏)
運用改善に関してアズビルが提案したのは、運転支援自動化パッケージ Knowledge Power™(ナレッジ パワー)を導入するというものでした。
実際の導入は、2つのフェーズに分けて実施されました。まず、2010年5月に既存のDCSをHarmonasに置き換えました。その後、約1年の運用を経て、2011年5月にはKnowledge Powerとともに、運用支援ツールとしてアズビルが提案していた、モバイルDCS PlantWalkerHyperVision™(プラントウォーカーハイパービジョン)(以下、PlantWalker-HV)、リレーショナル製造情報管理システムPREXION™(プレキシオン)を導入しました。
![プログラムを組むことなく非定常操作に必要なプロセスの部品を組み合わせることで作業手順を作り込み、システムを自動化することができるKnowledge Power。](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/img/nou_388_03.jpg)
プログラムを組むことなく非定常操作に必要なプロセスの部品を組み合わせることで作業手順を作り込み、システムを自動化することができるKnowledge Power。
![モバイルDCSを実現するPlantWalker-HVは、現場で作業を行った結果を携帯端末で確認することができる。携帯端末でポンプを起動し、動いたことを確認してからバルブを手動で開くなどの作業をする場合、現場と監視室の距離が離れているプラントでは特に大きな威力を発揮する。](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/img/nou_388_04.jpg)
モバイルDCSを実現するPlantWalker-HVは、現場で作業を行った結果を携帯端末で確認することができる。携帯端末でポンプを起動し、動いたことを確認してからバルブを手動で開くなどの作業をする場合、現場と監視室の距離が離れているプラントでは特に大きな威力を発揮する。
簡便なプログラムの記述により工程の自動化が容易に行える
![突発整備発生中のアラームと、それに対する回避操作が可視化されている。ここで見つかった操業パターンがKnowledge Powerにて自動化された。](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/img/nou_388_05.jpg)
突発整備発生中のアラームと、それに対する回避操作が可視化されている。ここで見つかった操業パターンがKnowledge Powerにて自動化された。
ユニチカではこれらのツールを軸とした運用改善に着手しました。これまで人手で行ってきた作業を、Knowledge Powerでプログラム化して自動化するという取組みを実施しています。その結果、例えばプラントの起動/停止など、従来は担当者がDCSの画面を見ながら操作を行っていた工程においても、人を張り付けることなく、システムで自動実行できるようになりました。
「プログラム作成も簡単で、3日間のトレーニングを受講するだけで、現場で監視・制御に当たる担当者全員が、必要な手順をKnowledge Powerに組み込めるようになりました」(和田氏)
「現場担当者がツールの利用について困ったときにサポートできるようにと、ユニチカ設備技術のスタッフも一緒にトレーニングを受けたのですが、実際にはサポートも全く不要で、現場で問題なく使いこなしています」(三上氏)
「以前は、ある時間帯にいつも特定のアラームが当たり前のように発生し、それに対して定められた操作を行うという運用を行っていました。そうした工程を見直し、Knowledge Powerで操作を自動化し、アラームが発生しないような運用に変更しました」(角川氏)
また、同社ではKnowledge Powerに加え、アズビルのイベント解析サービス※2を利用。DCSで蓄積しているアラームの発生時間、頻度、操作の内容や回数などの情報をイベント解析することで、その相関関係をグラフなどを用いて見える化しています。このサービスを使って、運用上の課題やムダを検証し、それを改善するプロセスをKnowledge Powerに実装するという方法を繰り返し、アラームの発生を最小限にとどめることができました。
「イベント解析により、あるアラームが発生すると必ず行っている作業のパターンがあることが分かりました。その内容を現場の作業と照らし合わせKnowledge Powerに作り込みます。これを繰り返すことでアラームの発生が大幅に減りました」(角川氏)
一方、PlantWalker-HVの導入も現場作業の効率化に大きく貢献しています。プラントの設備は、建物の1階から4階に設置されています。例えばトラブル発生時などは、対象となる機器の設置階と2階の監視室を往復して対応していました。
「PlantWalker-HVがあれば、現場で作業を行った結果を携帯端末でその場で確認できます。DCSを現場へ持ち出せるイメージです」(田中氏)
このような工程の自動化、運用作業の効率化が、担当者の大幅な負担軽減につながっています。さらに、2~3人で構成されるオペレーションチームが2つの現場を兼務するといった、人材の有効活用の検討も進んでいます。
「今回、Knowledge Powerを中心に構築した運用の仕組みやノウハウについては、今後立ち上げる新規プラントにも、ぜひ適用していければと考えています。今後もアズビルには、さらに手厚いサポート、積極的な提案を期待しています」(濵田氏)
用語解説
※1 DCS(Distributed Control System)
分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機器を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。
※2 イベント解析サービス
DCSに蓄積されているアラーム通知/操作履歴データ(=イベント)を独自手法で解析し、操業改善につながるポイントを可視化する。解析レポート作成にとどまらず、ユーザー/ベンダーが協働して改善策の検討に当たる操業改善検討会の定期実施まで含めた形で提供される。
お客さま紹介
![ユニチカ株式会社 樹脂生産開発部 樹脂製造課 課長 濵田 知宏氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/__icsFiles/afieldfile/2021/07/30/nou_388_07.jpg)
樹脂生産開発部
樹脂製造課
課長
濵田 知宏氏
![ユニチカ株式会社 樹脂生産開発部 樹脂製造課 係長 角川(すみかわ) 公孔氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/__icsFiles/afieldfile/2021/07/30/nou_388_08.jpg)
樹脂生産開発部
樹脂製造課
係長
角川(すみかわ) 公孔氏
![ユニチカ株式会社 樹脂生産開発部 樹脂製造課 係長 和田 朋彦氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/__icsFiles/afieldfile/2021/07/30/nou_388_09.jpg)
樹脂生産開発部
樹脂製造課
係長
和田 朋彦氏
![ユニチカ株式会社 樹脂生産開発部 樹脂製造課 田中 幸氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/__icsFiles/afieldfile/2021/07/30/nou_388_10.jpg)
樹脂生産開発部
樹脂製造課
田中 幸氏
![ユニチカ設備技術株式会社 第一事業本部 設備1G 大林 元幸氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/__icsFiles/afieldfile/2021/07/30/nou_388_11.jpg)
第一事業本部
設備1G
大林 元幸氏
![ユニチカ設備技術株式会社 第一事業本部 設備1G 三上 圭太氏](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/__icsFiles/afieldfile/2021/07/30/nou_388_12.jpg)
第一事業本部
設備1G
三上 圭太氏
ユニチカ株式会社 宇治事業所
![](https://www.azbil.com/jp/case/aac/nou_388/__icsFiles/afieldfile/2021/07/30/nou_388_06.jpg)
ユニチカ株式会社 宇治事業所
ユニチカ株式会社 宇治事業所
- 所在地/京都府宇治市宇治戸ノ内5
- 設立/1926年3月
- 事業内容/「高分子」「機能材」「繊維」「生活健康・その他」の各事業にかかわる生産・開発・研究
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2013 Vol.1(2013年02月発行)に掲載されたものです。