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本田技研工業 埼玉製作所 寄居完成車工場

最新の安全規格に準拠した燃焼安全制御を実現。
グローバルな生産拠点へノウハウを展開

本田技研工業において、最新の生産技術を発信するマザー工場としての役割を担う埼玉製作所 寄居完成車工場。同工場では安全への取組みの一環として、工業用燃焼炉の最新安全規格である「JIS B 8415」に対応した燃焼安全制御を自動車生産ラインの塗装空調・塗装乾燥・脱臭設備に導入しました。さらに、そのノウハウをグローバルな生産拠点に展開していく体制を整えています。

工場・プラント分野 自動車 安全・安心 調節計(温調計)/記録計 燃焼安全装置

導入製品・サービス

最新JIS規格に準じた燃焼安全制御で、最先端の安全操業の実現を目指す

1948年の創業以来、「技術で人の役に立ちたい」を理念に、世界中の顧客に喜びを届ける技術・ものづくりに取り組んできた本田技研工業株式会社。近年では、その主力事業である自動車や二輪車に加え、ビジネスジェット機HondaJetの製造・販売を手掛けるなど、コーポレートスローガンである“The Power of Dreams(夢の力)”を原動力に、常にチャレンジを続けています。

本田技研工業 埼玉製作所は、自動車のボディのプレスから溶接、塗装、組立てに至る工程を担当する狭山完成車工場、寄居完成車工場、小川エンジン工場という三つの工場で構成され、国内を含む27カ国、68の生産拠点に向けた「ものづくり発信拠点」の役割を担っています。中でも2013年7月に操業を開始した寄居完成車工場は、年間25万台を生産する国内最大級の生産拠点です。本田技研工業が注力する、ものづくりにおけるCO2排出量最小化による環境負荷低減、あるいは製品品質の向上にかかわる先進技術を全面的に採用し、海外の生産拠点に対し、そのノウハウを展開していくためのマザー機能を持つ工場と位置付けています。

「寄居完成車工場は建設企画の段階から、環境面、品質面だけではなく、生産ラインにおいて最も重要な基盤となる安全面においても、最先端の取組みが求められていました。特に、自動車生産ラインにおいて、厳しい温湿度管理が求められる塗装ブースの空調、塗装後の乾燥プロセス、排気時の脱臭プロセスの工程で不可欠なガスバーナの燃焼安全制御は、重要なポイントでした」(伊藤氏)

「火気を用いる工程について、当社では以前から『爆発火災安全基準』という厳格な社内規定を設け、それに沿った運用を徹底してきました。公的にも近年、規格の見直しや制定がされており、燃焼装置関連の安全については『JIS B 8415』※1が改正されたこともあり、最先端の操業安全を目指すのであれば、改正JIS規格に準拠する必要があるだろうと考えました」(向後氏)

燃焼制御を適正に行うための機器配置を追求

改正JISに準拠したプロセスがプログラミングされており燃焼安全制御を行うバーナコントローラ RXシリーズ。

改正JISに準拠したプロセスがプログラミングされており燃焼安全制御を行うバーナコントローラ RXシリーズ。

同社では改正JIS規格と自社の爆発火災安全基準との擦り合わせを行い、それに沿った燃焼制御を実現するためのシステム・機器の採用に向けた検討を開始しました。その結果、同社が寄居完成車工場の塗装空調・塗装乾燥・脱臭設備への導入を決定したのは、アズビル株式会社が提供するバーナコントローラ RXシリーズを中核とする燃焼安全制御でした。

「当時、業界に先駆けていち早く改正JIS規格に適合した製品とソリューションの提供を開始していたのがアズビルです。RXシリーズには、同規格への対応に必要なすべての機能がパッケージングされ、その点が大きな魅力でした。また、当社では以前から狭山完成車工場でアズビルの燃焼監視の仕組みを採用してきた実績もあり、アズビルには大きな信頼感がありました」(伊藤氏)

寄居完成車工場の稼働開始に向けて、塗装空調・塗装乾燥・脱臭設備へ新たな燃焼安全制御を適用した取組みをスタート。しかし、稼働までには様々な困難があったといいます。

「RXシリーズを導入し、そのプログラムを実行することで、JISの新規格に沿った制御自体は可能になるのですが、正しく制御するためには、ガスユニットやバルブなどの配置を精査する必要がありました。燃焼炉の起動に際し、安全を配慮したタイマー設定などでタイミングによってはバーナがうまく点火しないなどの問題が発生していたのです」(向後氏)

そこで同社では、機器配置の設計を見直し、トライアンドエラーを繰り返しながら機器の物理的な位置関係を調整して、制御の適正な動作を追求していきました。

「空調機8機、燃焼炉16基において同様の取組みを行ったため、調整の期間は半年にも及びましたが、予定どおり稼働を開始しました。その間、アズビルは当社の要請に応じて技術員を随時派遣してくれるなど、常にスピーディな対応で我々をバックアップしてくれました」(伊藤氏)

塗装乾燥イメージ図

燃焼安全制御で生まれた安全の確保は、生産の安定性向上にも貢献

本田技研工業では、寄居完成車工場の実績を基に、爆発火災安全基準の一部改定の検討やグローバル展開可能な燃焼安全制御の仕組みを整え、そのノウハウをほかの生産拠点にも取り入れていく予定です。既に、新基準に準拠した燃焼安全制御については、メキシコにある同社の生産拠点に適用されているほか、ブラジルや中国の拠点にも順次展開していきます。

「我々にとって最大の成果は、バーナの燃焼設備において、より高度な安全性が確保されたことです。事実この2年間、燃焼プロセスに関係した安全面での問題は一切発生していません。こうした取組みが、安定生産にも大きく寄与しています」(伊藤氏)

「燃焼系において監視するポイントも明確になったことに加え、一元監視できるようになりました。その結果、燃料や燃焼用エアの送出から、バーナの着火、燃焼に至るプロセスの状況が、より詳細に把握できるようになりました。仮にどこかに不具合が生じても、プロセスを検証することで原因の究明が容易になり、問題対応の迅速化にもつながります」(向後氏)

今後、同社では、蓄積した大量の運用データを分析し、現場で作業を行っているメンバーに最適な情報を「見える化」からさらに進化させる「見せる化」とすることで、さらに安定的で高効率な生産の実現にもつなげていきたいと話します。

「アズビルは、制御にかかわる高度なノウハウ、提供する機器の高い信頼性をベースに、今回のプロジェクトにおいても確実に、迅速にサポートしてくれました。これからも我々の生産活動をしっかりと支えていってくれることを大いに期待しています」(伊藤氏)

用語解説

※1 JIS B 8415

2008年に改正された工業用燃焼炉にかかわる安全規格。気体燃料および液体燃料で加熱される熱利用設備に対する安全要求事項について規定している。

 

お客さま紹介

本田技研工業株式会社
日本本部
四輪生産統括部
生産企画統括部
埼玉企画推進室
事業企画ブロック
技師
伊藤 勇治 氏
本田技研工業株式会社
寄居完成車工場
寄居管理ブロック
技術主任
向後 儀鎮(こうご よしやす) 氏

本田技研工業 埼玉製作所 寄居完成車工場

本田技研工業株式会社 埼玉製作所 寄居完成車工場

  • 所在地/埼玉県大里郡寄居町大字富田2354
  • 操業開始/2013年7月
  • 事業内容/自動車のプレス、溶接、塗装、合成樹脂、車体組立、完成車検査

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2015 Vol.6(2015年12月発行)に掲載されたものです。

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