日常保全業務一括請負(エリアメンテナンス)
三井化学株式会社 大牟田工場
工場内計装機器の日常保全業務の一括委託により
安全で安定した操業と人的負荷軽減を実現
60ものプラントを擁する三井化学 大牟田工場では、ベテラン社員の退職などを背景に負荷が高まる現場計装機器の日常保全業務について、高度な保全ノウハウを持つパートナーに一括業務委託。自社の保全業務の効率化やトラブル対応の迅速化、予防保全の推進など、プラントの継続的な安定操業に向けた体制を強化することができました。
工場・プラント分野 化学 安全・安心 メンテナンスサポート ライフサイクルサポート
導入製品・サービス
ベテラン社員の退職などを背景に、計装機器保全業務の見直しが必要に
1912年の創業以来、100年以上の歴史を誇る三井化学株式会社。三井三池鉱山で産出する資源を利用した石炭化学事業を端緒に、石油化学をはじめとする様々な化学事業を発展させ、人々の豊かな生活に貢献してきました。現在、同社では、自動車材料を中心とした「モビリティ」、歯科材料や不織布(ふしょくふ)などの「ヘルスケア」、農薬、包装材料などの「フード&パッケージング」の各領域を成長戦略の要としています。また、大量生産品から多品種少量生産による高付加価値製品への事業ポートフォリオの変革にも注力しています。
大牟田工場は、石炭化学事業がメインだった時代から、同社の生産活動の中枢を担ってきた拠点であり、ポートフォリオ変革においても中心的な役割を果たしています。広範な製品分野に適用されるウレタンをはじめ、光学プラスチックレンズ原料、農薬などを主力としながら、多種多様な製品を生産。福岡 ヤフオクドーム約36個分にも相当する252万m²の広大な敷地内では、およそ60ものプラントが設置されています。
プラント内の膨大な計装機器の点検や修理といった保全業務は、同工場の保全部門が管理を行い、実作業は地元の設備会社の常駐職員に依頼していました。
「2000年ごろから、当社保全部門のベテラン社員が次々に退職し、保全部門の人員にかかる作業負荷が急速に増大していきました。製造現場でのトラブル発生にも迅速な対応が行えず、トラブル対応時の作業報告書作成といった日々の業務も後手に回っていました。改善策を検討し、実践していく時間を取ることが難しいというのが実情でした」(林氏)
パートナー選定では技術力に加え、協力会社の管理能力も評価
こうした課題を改善するために大牟田工場では、地元の協力会社のマネジメントなども含めて、計装機器の保全業務全般を一括でアウトソースすることを検討しました。委託先となるパートナーとして、計装機器メーカーや計装工事会社、計装設備メンテナンス会社など複数社を候補に比較検討した結果、アズビル株式会社に決定しました。
選定のポイントとしては、アズビルが計装設備における三つの重要製品である、計器、DCS*1、調節弁を扱うメーカーであり、フィールド機器からシステムまで広範な領域にわたる高度な技術力と知識を持ち合わせ、トラブルにも迅速に対応できるサービス体制があることです。さらに、国内外のプラントでの経験やノウハウを基に、アズビル全体としてのバックアップも期待できました。
「技術面だけでなく、現場で作業を担当する地元企業を円滑にマネジメントできるかどうかも重要なポイントでした。当工場では、以前からアズビルの機器を導入しており、我々自身、折につけフィールドサービスの担当者とも接してきました。現場で様々な仕事に取り組むその時々の印象からも、アズビルが製品導入先企業や協力会社との関係性を非常に重視する社風であることがうかがえました。また、アズビルのメンバーは、フィールド機器からDCSのソフトウェアまで、誰でも満遍(まんべん)なく経験と知識があり、現場機器の保全作業だけではなく、人材の育成やノウハウ伝承にも期待しました」(林氏)
保全作業の様子。ウレタンの製造現場のガス検知器を引き取り点検・修理しているところ。
三井化学 大牟田工場では、高屈折率プラスチック眼鏡レンズモノマーを生産している。
現状分析に基づく予防保全と人材育成で安定操業を支える
年2回開催されている定期報告会では関係者が全員集まり、システムに蓄積された保全履歴データの解析結果について討議しつつ、今後の保全計画への反映などを進めている。
2005年10月、大牟田工場とアズビルの間の日常保全業務一括請負(エリアメンテ)の契約がスタートしました。以来、10年以上にわたりアズビルの現場監督者以下数人の担当者が同工場に常駐。現場で実作業を担当する地元企業とタッグを組み、日々の保全業務に当たっています。
大牟田工場が最大の成果と捉えているのが、プラントの操業の安定性が大きく高まったことです。
「原因の特定が非常に難しい古い空気式機器の故障に対しても、経験を活かしながら、製造現場に迷惑のかからない形で保守対応をしてくれています。また、突発的なトラブル発生時にもスピーディな対応が可能になりました。加えて、故障対応だけでなく、大事に至る前に異常にいち早く気づいて対処するという常に予防保全の観点に立った保全業務の提案により、止めることの許されないプラントの安定操業を支えてくれています」(林氏)
アズビルは、大牟田工場が運用する保全情報システムに蓄積されたデータを自社で解析。年2回開催される定期報告会を通して、故障頻度が高まっている機器の特定とトラブルの未然防止に向けた適正な点検サイクルの立案、あるいは定修*2の際に力点を置くべき箇所の提案なども常に実施しています。保全を実施した際の作業内容の明文化を含む、現場の業務プロセス全体の見直しなどの改善活動も定常的に推進しており、そうしたことが大牟田工場の日々の安定操業に貢献し、ひいては計装機器の運用にかかわるコスト削減にもつながっています。
また、当初の期待であった大牟田工場で保全業務に当たる地元企業の人材育成や、保全現場における技術・ノウハウの伝承という点でも、アズビルは多大な貢献を果たしています。
「プラント操業における最重要テーマである安全についてもしっかりとした教育を実施してくれています。例えば、アズビルが社内で育成・認定している安全マイスター*3を招いてのKY(危険予知)トレーニングや、実際の製造工程を模して作業上の危険を疑似体験できる機器を使った安全体感訓練なども随時実施しています」(林氏)
怖さを知っていると現場に出たときに慎重になるという観点から、地元企業はもちろんのこと、三井化学の希望者に向けても安全帯につるされたときの体にかかる負担、静電気のショックを用いた感電したときの疑似体験、ヘルメットへ物が落下したときの衝撃など、実際に体感して怖さを体で覚えるという安全教育を実施しています。
こうした取組みにより、保全業務の品質や効率、安全性が大きく向上。三井化学の保全部門の人的負荷の大幅な削減が進み、担当者が運転改善など上流の管理業務に注力できる体制が整いました。
「大牟田工場において、機器保全の現場だけではなく、製造の現場からもアズビルは信頼される存在となっています。今後は、デジタル通信と診断機能を備えた機器によるリモート監視など、アズビルが提供する最新の製品・ソリューションなども活用しながら、さらなる保全業務の効率化とコスト削減を目指していきたいと考えています。もちろんアズビルには、それに向け、さらに積極的な提案を期待しています」(林氏)
用語解説
※1 DCS(Distributed Control System)
分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。
※2 定修
各種生産施設やプラントで定期的に実施される大規模な点検・修理作業。定期修理。
※3 安全マイスター
知識、経験、指導力を活かし、現場や職場に根差した安全力の底上げを図るとともに、労働災害の未然防止、リスク低減の指導・援助、教育・訓練などを行う安全衛生のプロフェッショナル。アズビルの社内資格制度で審査・選考され、資格が与えられる。
お客さま紹介
大牟田工場
技術部
電計グループ 1チーム
チームリーダー
林 昌幸 氏
三井化学株式会社 大牟田工場
三井化学株式会社 大牟田工場
- 所在地/福岡県大牟田市浅牟田町30
- 創業/1912年
- 事業内容/トルエン、ベンゼン、メタノールを主原料とするファインケミカル製品の生産
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2017 Vol.1(2017年02月発行)に掲載されたものです。