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株式会社クボタ 京葉工場

原料搬送用コンベヤに噴霧式潤滑装置を採用
予防保全の仕組みとコスト低減を実現

水道などの生活インフラを支える鋳鉄管を生産するクボタ 京葉工場。原料搬送用コンベヤのチェーンの寿命延長を図るため、従来の滴下式潤滑装置に替えて、噴霧式潤滑装置を導入しました。チェーン全体に潤滑油をムラなく浸透させることが可能となり、チェーンの寿命を左右する摩耗を軽減。故障を未然に防ぐ予防保全の仕組みを構築し、使用する潤滑油のコストやメンテナンスにかかわる負荷の低減も併せて実現しました。

工場・プラント分野 鉄鋼 稼働改善 噴霧潤滑装置

チェーンコンベヤの寿命延長が鋳鉄管製造現場での重要な課題に

1890年の創業以来、水道用鉄管による近代水道の整備、農業機械による食料増産と省力化、環境施設による人類と環境の調和などを念頭に、暮らしと社会に貢献する様々な製品を世に送り出してきた株式会社クボタ。現在では、「食料」「水」「環境」という三つの領域での課題解決を通じて、地球と人の未来を支え続けることをミッションとする「グローバル・アイデンティティ」を掲げ、事業を展開しています。その中で「水」の領域において主に上水道の管路として用いられる鉄管の製造を行う鋳鉄管(ちゅうてつかん)専門工場が、1960年から操業している京葉工場です。

「世界でも唯一、9mという長さの中・大口径管を量産できる能力を備えている点が当工場の大きな特徴です。現在は中近東、東南アジアの下水道分野にも進出しており、世界中のライフラインにかかわる質の向上に寄与すべく生産活動を推進しています」(奥野氏)

同工場における鋳鉄管の製造は、大きく「溶解」「鋳造(ちゅうぞう)」「焼鈍(しょうどん)」「加工」「塗装」といった各工程からなります。一連の工程の中で、原料や製品を搬送するために数多く利用されているのが金属製チェーンを用いたコンベヤです。

「鋳造工程では製品と同じ形をした中子を砂型で作ります。高熱を扱う当工場の生産現場では、上昇気流によって砂ぼこりが舞い上がり、これらがチェーンの接続部に入り込むため、どうしても摩耗が激しくなります。コンベヤのチェーンは定期的に保守・交換を行っていますが、チェーンが摩耗し全体的に伸びてくると駆動部からいきなり外れる、チェーン自体が切断するという事態に発展するケースもあります」(柴木氏)

鋳鉄管の副原料の一つであるコークス(石炭の一種)を、溶解炉に投入するための付帯設備へと運ぶ「トレイリフタ」と呼ばれるカゴ付きコンベヤは、同工場の溶解工程における生産の起点となるものです。この設備が止まってしまうとすべての製造ラインに影響してくるため、不測の事態を未然に防止する必要がありました。このため、チェーンの摩耗を減らし、寿命を延ばす上で最も有効な潤滑油注入といった日常のメンテナンスを今までも欠かさずに実施してきました。

「同設備で利用している周径46m、ピッチ200mmのチェーン4本には、潤滑油をチェーンの上から垂らす滴下(てきか)式の潤滑装置を利用していました。振動の多い現場ということもあり、滴下箇所にブレやムラが生じ、潤滑油の効果を最大限に得ることが難しい状況でした」(佐藤氏)

L43シリーズが設置されたトレイリフタ。搬入口から原料の一つである石炭を投入すると、カゴ付きのチェーンコンベヤで溶解炉に投入するための付帯設備へと運ばれる。

L43シリーズが設置されたトレイリフタ。搬入口から原料の一つである石炭を投入すると、カゴ付きのチェーンコンベヤで溶解炉に投入するための付帯設備へと運ばれる。

エアを用いた噴霧式ユニットで、ムラのない潤滑油の浸透が可能

クボタが独自に開発したサンドレジン遠心力鋳造で製造された大口径ダクタイル管。

クボタが独自に開発したサンドレジン遠心力鋳造で製造された大口径ダクタイル管。

そうした折、アズビルTACO株式会社から京葉工場に対し提案されたのが、セミドライルブ連式潤滑ユニットL43シリーズでした。同シリーズは圧縮空気と潤滑油を混合し、オイルをミスト状にして潤滑点にスプレーする噴霧式の製品で、油量、エア量を調整しながらムラなく対象箇所に潤滑油を浸透させることが可能です。

「当工場では、エア機器、油圧機器などアズビルTACOの空気圧技術を用いた製品をこれまでも数多く採用してきており、様々な工程で実績を上げていました。そうした背景もあって、L43シリーズの提案について前向きに検討しました」(柴木氏)

そこで同社では、アズビルTACOからL43シリーズを借り受け、現場のトレイリフタを支えている両側のチェーンのうち片方の2本に適用し、実運用の中で検証を行うことにしました。

「そろそろ交換が必要かと危惧はしていたのですが、検証を行った1カ月の間にL43シリーズを設置していない側のチェーンが切れるという故障が発生しました。このとき、設置側には何の問題も生じておらず、L43シリーズ導入の有効性を実感したため、本格採用を決定しました」(佐藤氏)

2~12個の吐出ノズルの装着が可能で、ノズルごとにエア量、潤滑油量を調整できるセミドライルブ連式潤滑ユニットL43シリーズ(左)と潤滑油を噴霧するノズル部分(右)。

2~12個の吐出ノズルの装着が可能で、ノズルごとにエア量、潤滑油量を調整できるセミドライルブ連式潤滑ユニットL43シリーズ(左)と潤滑油を噴霧するノズル部分(右)。

汎用潤滑油の利用が可能になり、コストと業務負荷の軽減にも効果

ジャパンラグビー トップリーグで活躍するクボタラグビー部「クボタスピアーズ」のグラウンドも京葉工場内にある。クボタがカンパニースポーツと位置付け強化に取り組んでいる。

ジャパンラグビー トップリーグで活躍するクボタラグビー部「クボタスピアーズ」のグラウンドも京葉工場内にある。クボタがカンパニースポーツと位置付け強化に取り組んでいる。

その後、同工場ではトレイリフタの両側にL43シリーズを設置。2016年7月末から実稼働を開始しました。

「チェーンが突然切れてしまうと、関係する製造部門にも大きな迷惑をかけてしまいます。油を差すということは予防保全の一環であり、より適正な効果がある形で仕組みを構築することができました。予防保全でチェーンの寿命延長ができれば、ランニングコストも確実に減ってくると手応えを感じています」(柴木氏)

また、L43シリーズの導入は、潤滑油のコスト低減にも貢献しています。以前の滴下式では、チェーン上部から油を垂らすことを考慮し、浸透性に優れた高価な潤滑油を採用していました。これに対し、噴霧式のL43シリーズは、潤滑油を必要な場所へ吹き付けることで満遍(まんべん)なく油を浸透させられるので、汎用(はんよう)の潤滑油を利用することができます。

「日常点検および潤滑油の補給などは、我々保全部隊ではなく、製造部門が担当しています。L43シリーズで利用する油は資材部門で一般的に扱っているものなので在庫切れの心配もなくなりました。現場の負荷が軽減されたとの声も寄せられています」(佐藤氏)

今後、京葉工場ではL43シリーズを、溶解工程のトレイリフタだけでなく、ほかの工程のチェーンコンベヤへの適用についても検討を進めていきます。

「チェーンを効果的に潤滑するために、ノズルの設置位置についてはアズビルTACOからきめ細かなアドバイスを受けました。アズビルTACOには、製品だけではなく持ち前の技術力とノウハウを活かし、今後も我々を支援してもらえればと思います」(柴木氏)

「我々の工場が目指すのは、鋳鉄管製造の分野での世界一。そのためには技術だけではなく、設備も世界一でなければならないと考えます。そうした取組みを支えてくれるパートナーとして、アズビルTACOには今後も大いに期待しています」(奥野氏)

お客さま紹介

株式会社クボタ<br />パイプシステム<br />事業ユニット<br />京葉工場<br />工場長<br />奥野 高志 氏
株式会社クボタ
パイプシステム
事業ユニット
京葉工場
工場長
奥野 高志 氏
株式会社クボタ<br />パイプシステム<br />事業ユニット<br />京葉工場<br />生産技術課<br />課長<br />柴木 敦 氏</p>
株式会社クボタ
パイプシステム
事業ユニット
京葉工場
生産技術課
課長
柴木 敦 氏

株式会社クボタ<br />パイプシステム<br />事業ユニット<br />京葉工場<br />生産技術課<br />職長<br />佐藤 伸二 氏
株式会社クボタ
パイプシステム
事業ユニット
京葉工場
生産技術課
職長
佐藤 伸二 氏

株式会社クボタ 京葉工場

株式会社クボタ 京葉工場

  • 所在地/千葉県船橋市栄町2-16-1
  • 操業開始/1960年
  • 事業内容/鋳鉄管(呼び径75~1500mmの直管、呼び径600~1600mmの長尺管)の製造

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2017 Vol.1(2017年02月発行)に掲載されたものです。

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