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三菱ケミカル株式会社 水島事業所

安全計装に基づいた地震対策システムを整備
プラントの緊急停止にかかわる高信頼性を追求

三菱ケミカル 水島事業所では、大規模な地震が発生した際に事業所内への緊急時放送や客先へのパイプラインの遮断を行う地震対策の仕組みをリニューアルしました。インテリジェント地震センサ安全計装コントローラを組み合わせた自己診断機能を備えたシステムを導入することで、有事の際は適切にプラントを停止することができるなどの信頼性が大幅に向上。より高い次元での、さらなる安全の取組みを推進しています。

工場・プラント分野 化学 安全・安心 運転監視・制御システム&ソフトウェア スイッチ/センサ

大規模地震発生のリスクに備えたプラントの確実な緊急停止が課題

2017年4月に、三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの統合により設立された三菱ケミカル株式会社。「KAITEKI実現」というビジョンの下、人や社会、地球が直面する課題を技術力で解決することを通じて、世界の持続的な発展に貢献することを使命としています。

水島事業所は、プラスチック製品や高機能化学製品、情報電子材料などを生産する、三菱ケミカルの石油化学領域における主力工場です。水島石油化学コンビナート内の約180万m²という広大な敷地内に、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルなど、約30基ものプラントが日々生産活動を行っています。

同事業所では大規模地震発生の際の安全を確保するために、各プラントに地震センサを導入し、一定規模以上の地震が発生した場合にはプラントの操業を安全かつ確実に緊急停止する仕組みを構築してきました。地震の判定には、より信頼度を上げるためにリレー回路を組んで多数決(2-out-of-3)処理※1を実施。10年以上運用を続ける中で、経年劣化が発生するものもあり、その更新を順次行う時期を迎えていました。

「大規模地震災害のリスク対策に対する重要性はますます高まっています。特に当事業所のような石油化学プラントでは、大量のエネルギーを保有し、様々な化学物質を扱っていることから、より高度な地震対策が社会的に求められています」(石川氏)

こうした状況から、エチレンなどの素材をコンビナート内の客先へ供給するためのパイプラインを対象とした、高度な地震時緊急遮断システムへの更新に着手することになりました。

「このシステムは、パイプライン遮断に加え、事業所内に放送で地震発生を知らせるものです。更新にあたってはDCS※2に代表される運転監視システムとは独立し、プラントやプロセスの運転継続が安全上行えない場合の異常検出、緊急停止、インターロックなどの処理を実行する安全計装の考えを取り入れ、より高いレベルで信頼性、安全性を追求したいと考えました」(石川氏)

地震センサと安全計装の連動で、システムの高度な信頼性を担保

プラント内の3カ所にインテリジェント地震センサSES70が設置されており、信号を受信するコントローラ側で多数決(2-out-of-3)処理により地震を判定する。

そこで、いくつかのメーカーのシステムを比較、検討した結果、アズビル株式会社が提供するインテリジェント地震センサSES70安全計装コントローラTriconexシリーズを組み合わせたインテリジェント地震緊急停止システムを採用しました。

「選定にあたっては、有事の際、確実に動作してくれる信頼性が最重要の要件となりました。当社では以前から数多くのプラントでアズビルの地震センサを採用しており、その高い信頼性については長年の運用の中で立証されていました」(髙橋氏)

Triconexシリーズは、IEC※3など第三者機関が定める安全計装にかかわる規格をクリアしており、極めて高度な信頼性が担保されている点が評価されました。

「特に重要なポイントとなったのが、Triconexシリーズにインテリジェントな地震センサを組み合わせることで実現する自己診断機能です。コントローラ内で実行される2-out-of-3処理により冗長化された3台の地震センサの動作、配線の導通なども含め、実際に地震発生時の信号を送受信するループチェックと地震センサの健全性確認をシステム自らが自動で、しかもオンラインの運転中に行えるようになっており、これが最大の決め手となりました」(石川氏)

システムが定期的に自動で自己診断。より高い次元での安心感が得られる

水島事業所が採用したアズビルの地震対策ソリューションは、2016年10月に稼働を開始しました。インテリジェント地震センサ安全計装コントローラの組み合わせによる一歩進んだ地震対策が、従来システムを大きく上回る安心感を提供しています。

「これまでは年1回の定期修理を含め、半年に1回のサイクルで、システムをオフラインにしてセンサやコントローラの検査を行っていましたが、現在ではインテリジェント地震緊急停止システムの自己診断機能が週1回のペースで必要なチェックをしてくれるため、常に信頼性が担保されています。定期修理時以外に行っていたオフラインによる機器の検査も不要となりました」(髙橋氏)

新システムの稼働を開始した直後、鳥取県中部地震が発生。放送で警報を出す基準である40Gal※4と、パイプラインの遮断を行う80Galの間の値となる50Galの地震でしたが、水島事業所内のルールに定められた通りに放送が流れ、必要な施設内パトロールや機器類の点検などもスムーズに実施できました。

今後、水島事業所では各プラントで運用している地震対策の仕組みについても、インテリジェント地震センサ安全計装コントローラを組み合わせたソリューションを順次導入していく検討をする予定です。大規模地震発生時のプラントの緊急停止にかかわる高度な安全性と確実性を確立していきます。

「将来的には当事業所のプラントで利用しているアズビル製の圧力、流量といった各種センサ類と安全計装の仕組みを連動させて、緊急時の制御を自動診断できる機能なども、アズビルにはぜひ実現してもらいたいと考えています」(髙橋氏)

「我々がパートナー選びのポイントに据えているのは、製品やソリューションの性能もさることながら、一緒にどんな仕事ができるかということです。我々から投げかける困難な相談ごとにも、常に快く、真摯(しんし)に対応してくれるアズビルには、今後も水島事業所のよきパートナーとして、プラントの安全かつ安定的な操業に貢献していただきたいと思います」(石川氏)

地震制御盤内部にはTriconexの安全計装コントローラが組み付けられている。また盤面に取り付けられた表示器には、地震センサが検知した地震情報が表示される。

地震制御盤内部にはTriconexの安全計装コントローラが組み付けられている。また盤面に取り付けられた表示器には、地震センサが検知した地震情報が表示される。

※Triconex is trademark and the property of Schneider Electric SE, its subsidiaries and affiliated companies.
※SESは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 多数決(2-out-of-3)処理

システムを三重化し、三つの値のうちどれか一つが違っていても、残り二つが同じ場合にはそちらを採用することで信頼性を向上させる処理。

※2 DCS(Distributed Control System)

分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。

※3 IEC(International Electrotechnical Commission)

国際電気標準会議。電気、電子などの技術分野で国際的な標準となる国際規格を制定するための国際機関。

※4 Gal

地震動の加速度で1秒間にどれだけ速度が変化したかを表す単位。

お客さま紹介

三菱ケミカル株式会社
水島事業所
設備技術部
計装グループ
チームリーダー
兼 認定検査室
石川 努 氏
三菱ケミカル株式会社
水島事業所
設備技術部
計装グループ
技師 兼 認定検査室
髙橋 和也 氏

三菱ケミカル株式会社 水島事業所

三菱ケミカル株式会社 水島事業所

  • 所在地/岡山県倉敷市潮通3-10
  • 操業開始/1964年
  • 施設概要/ポリエチレン、ポリプロピレン、ブタノール、アクリロニトリル、γ-ブチロラクトンといった素材や、透湿性フィルムなどの機能商品を生産

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2018 Vol.1(2018年02月発行)に掲載されたものです。

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