大津市企業局 浄水管理センター
安全な水を安定して供給するために
水位の変動を未来予測システムがサポート
水道関連設備の管理運営にあたる大津市企業局 浄水管理センターでは、市民生活に不可欠な水を安定供給し続けるため、近未来の配水池の水位変動を予測するシステム ACTMoSを導入しました。配水池のポンプ停止などをはじめとする突発的なトラブル発生時、速やかに適切な対策を講じることができ、さらに安定した品質の水を提供することにも貢献しています。
大津市企業局 浄水管理センター
工場・プラント分野 上・下水道 安全・安心 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア
導入製品・サービス
設備監視の一元化に加え、水位予測計算のシステム化を目指す
琵琶湖の西南端に位置する滋賀県の県庁所在地大津市は、比良(ひら)、比叡、音羽(おとわ)、田上(たなかみ)などの山並みに囲まれた自然豊かな街として知られます。そうした大津市で、日々の生活に欠かすことのできない生活インフラにかかわる事業を行っているのが大津市企業局です。「くらしを支えるパートナー」をキャッチフレーズに、高品質な水道水・ガスの供給、および下水道処理に日夜取り組んでいます。中でも水道事業は、市内約15万4000戸、およそ34万人の人々に水を安定供給しています。
大津市企業局では、2014年7月、浄水管理センターを新たに開設。同センターに設置した中央監視システムから、市内6カ所の浄水場と、合計で137ある加圧ポンプ場・配水池などの水道施設の運転状況、各所の水質などを一元管理しています。
「水道事業者として一番避けなければならない事態は『断水』です。今まで6カ所の浄水場それぞれに24時間体制で2人の職員が常駐して監視業務を行ってきました。就労人口の減少を背景に職員が減る中で、施設ごとに行っていた監視業務を1カ所に集約し、24時間体制による監視を、より少ない人員で可能にする体制を整えました」(水野氏)
「こうした一元統合監視体制の整備により、各施設の運転に異常が発生した際にも、浄水管理センターから即時確認することができるようになりました。しかし、設備故障やトラブル発生の際、各戸に配水するために、一時的に水を貯留しておく配水池の貯水量があとどれくらいで底をつくのかの見込みについては、いまだ人手による計算で予測しており、システム化の余地が残っていると感じていました」(奥野氏)
例えば、台風や雷雨などによる停電で配水池に水をくみ上げるためのポンプが動作しなくなることがあります。この場合、その状況がどれだけ続くと配水池の水位が低下して断水に至るかの時間を、職員が水位の減少傾向を見て計算し、その結果に基づいて機器の修理対応や、断水が起こった際に各戸へ水を供給するための給水車の手配など、必要な対処を行っていました。
「現場では多くの職員が対応にあたりますが、一方では計算の作業に高いスキルと豊富な経験を備えた職員の確保が必要というジレンマを抱えていました。さらに、もし計算を間違えてしまったらという、職員の心理的負担も課題でした」(奥野氏)
配水池の水位変動を予測。適正な対処に向けた意思決定を支援
こうした課題に対して、浄水管理センターが導入を検討したのが、アズビル株式会社が提供する重要プロセス変数変動監視 ACTMoS™でした。ACTMoSは、監視対象となるプロセス変数の1ポイントから、近い将来その監視対象がどのように変動していくのかを予測することができます。
「アズビルからはACTMoSを用いて、配水池の水位の異常変動の検出・通知、また水位変動の未来予測に役立ててみてはどうかという提案がありました」(山本氏)
そこで、2018年8月からACTMoSの試用を開始。実際に配水池やポンプなどの水道設備や水質の監視を行い、ACTMoSが算出する結果の検証を開始しました。
折しも、その試用期間中に配水池の送水管が漏水を起こすという事象が発生しました。そのときは、熟練の職員が地方で行われていた水道関連のイベントのために出張しており、残された最小限の人員で復旧しなければならない状況でした。
「漏水によって配水池の水位が下がる中、対処にあたった職員は、漏水状態のまま一時的に断水し修理を行うか、それともポンプで水を配水池にくみ上げて、余裕のある水量に達してから工事に着手するかという決断を迫られました。このときACTMoSは、修理に要する時間内に貯水が底をつき、断水に至ると予測を行ったことから、配水池の水位を十分に上げてから工事を行うと判断し、断水を回避することができました」(福知氏)
突然の漏水発生に、ACTMoSの予測に基づいた判断をし、事なきを得ることができましたが、その後、トラブル発生時のデータで、従来どおりの計算で導き出す結果がACTMoSの予測と同じであることが分かりました。
「現実に送水管からの漏水という事態に直面したとき、ACTMoSによる未来予測が短時間での対策決定を支援してくれました。この経験からACTMoSの本格採用を決断しました」(福知氏)
浄水管理センターに設置されたACTMoSは、他社監視システムにも導入可能。複雑な条件設定を必要とせず、アナログデータとして収集している1ポイントのみで予測が可能なところも利便性につながっている。
水質チェックなどの日常業務でもACTMoSを活用
浄水管理センターは2019年5月にACTMoSを正式に採用しました。
「ACTMoS導入後は、少し先の状況を予測してくれるため、その動きを見越した対応が可能になりました。今まで故障などが発生すると、水位予測は2人態勢で10分ごとに計算を行ってきましたが、その部分を自動化することで、技術力のある職員が本来の、人間でなければできない仕事に注力することができます。また、災害時は故障や機器停止などが各所で同時に多発することが予想されます。これを人手による計算で対応するのは困難です」(奥野氏)
「ACTMoSに計算を委ねることで、これから起こることを予測し、実際に起こるまで、どれだけの時間があるかを把握し、対処することができるようになりました」(福知氏)
現在では、配水池の水位の定常的な監視と設備故障時などの貯水残量の変動予測のほかにも、浄水場で水をきれいにするための浄水処理や配水池から各戸へ水を送る際の水質チェックの領域においてもACTMoSを活用しています。
「浄水処理水は水温に応じて最適なpHを維持せねばなりません。その値をコントロールするための薬品注入のタイミングは熟練職員による経験に頼ってきました。そういったpH管理、あるいは配水池から各戸への送水に際しての残留塩素のチェックといった面でもACTMoSを活用しています」(山本氏)
浄水管理センターでは、今後もACTMoSの活用を進め、水道運営において、より広範な場面で利用していきたいとしています。
「普段とは異なる設備の状態や水質をいち早く捉え、ご利用者さまに安全な水を安定的に供給していきたいと考えています。アズビルには、ぜひ今後も積極的な提案・支援を期待しているところです」(水野氏)
浄水管理センター内の大型ビジョンにACTMoSの監視画面を表示し、随時状態の確認ができるようになっている。また、異常発生時にはモニタ上に警報が表示されて職員の注意喚起を行っている。
ACTMoS導入以前からデータ管理システムとして運用しているアズビルの総合プラント情報マネジメントシステムePREXION™。他社監視システムが収集したデータを含む、各施設の運転データを一元的に蓄積。監視・運転状況の分析などに利用している。
※ACTMoS、ePREXIONは、アズビル株式会社の商標です。
お客さま紹介
大津市企業局
施設部
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施設整備課
課長
水野 敬 氏
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設備グループ
グループリーダー(主査)
福知 健 氏
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施設整備課
設備グループ
保全グループ
主任
奥野 誠 氏
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浄水課
維持管理グループ
グループリーダー(主査)
山本 誠治 氏
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- 所在地/滋賀県大津市柳が崎6-1
- 設立/2014年7月29日
- 業務内容/水道施設の運転管理、水質管理にかかわる監視
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2020 No.1(2020年02月発行)に掲載されたものです。