株式会社CFP 岡山ケミカルリサイクル工場
サーキュラーエコノミーの推進に向け、ケミカルリサイクル工場を自社主導で立上げ
カーボンニュートラルな社会の実現を目指し、廃プラスチックのリサイクルを通じてサーキュラーエコノミーに貢献する(株)CFP。同社では、2011年から研究を開始し、新たなケミカルリサイクル工場の建設に際して、プラントメーカーに委託することなく自社設計によりプラント開発を行ってきました。計装・制御領域については、専門知識を保有する外部のパートナーに協力を依頼することで自分たちの理想を実現し、現在、本格稼働しています。
工場・プラント分野 化学 その他(市場・産業) 品質管理 圧力計(圧力センサ)/差圧計(差圧センサ) コントロールバルブ(調節弁)/操作端 調節計(温調計)/記録計
廃プラスチックの油化の研究に基づく油化装置を自社で開発
「ステークホルダーと共にカーボンニュートラルな明日をつくる」という目標の下、プラスチックのマテリアルリサイクル※1とケミカルリサイクル※2の事業を展開する株式会社CFP(以下 、(株)CFP)。同社は2011年に、独自の油化技術により廃プラスチックを軽油やナフサ、重油といった原料として再生する油化装置の研究・開発を開始し、ケミカルリサイクルを通じてサーキュラーエコノミー※3の実現に貢献しています。
(株)CFPでは、研究を重ねてきた油化装置を用いて、自社の敷地内で廃プラスチックのケミカルリサイクルを行うことを目的に、2022年に岡山ケミカルリサイクル工場を新設し、油化装置(ケミカルリサイクルシステム)を設置する計画を立てました。
「マテリアルリサイクルできていない廃プラスチックを買い取り、油に再生して、化学メーカーなどに有効活用してもらう方法で、世の中のリサイクルの取組みが加速すると考えました」(福田氏)
プラントの建設には専門のプラントメーカーに委託するのが一般的ですが、油化装置に関する知見が国内でもトップクラスの(株)CFPでは、プラントの設計から設備や機器の調達、計装設計までを自社で行ってきました。
「操業開始後のメンテナンスや、今後の工場増設などを見据えると、自社が主導するかたちで取組みを進め、ノウハウを蓄積していくことが肝要であると考えました」(福田氏)
実績や知見に基づいた最適な製品を選定
通信ゲートウェイとして各デジタル指示調節計とPLCを接続し、遠隔監視を実現している計装ネットワークモジュール スマート・デバイス・ゲートウェイ 形 NX-SVG。
(株)CFPのケミカルリサイクルは、まず廃プラスチックを粉砕して高温で加熱、ガス化したものを冷却し油として液化させてから、分解油を生成するという熱分解法のプロセスで行われ、各段階で温度や流量、液位などの計測と制御が必要です。同社では油化装置の設計や仕様を産業機械の商社に提示し、計装機器の選定を相談。その際に候補としてアズビル株式会社の製品が多く挙げられました。
「自社でプラント開発を進めるには専門知識を持つ外部のサポートが不可欠で、アズビルからは当社が希望する制御を実現できる提案をしてもらいました」(鈴木氏)
「アズビルの製品は、油化装置の試験機の段階から利用しており、2017年に海外に納品した装置でも採用していました。計装の領域で実績のあるアズビルに、計装機器の選定および計装・制御設計を依頼するのは、自然な流れでした」(福田氏)
アズビルは(株)CFPから提示された仕様を基に、一連のプロセスの制御を行う上で最適な製品として、差圧・圧力発信器や温度計、液面計、それらの情報を基に制御を行うデジタル指示調節計、流体を実際に制御するコントロールバルブなどを提案しました。さらにそれらの機器がどのように関連しているかを図解したループ構成図を要望に合わせて都度提示し、制御方法の細部について(株)CFPと検討や擦り合わせを進めていきました。
(株)CFPの長年の研究開発と運転技術の確立によって、岡山ケミカルリサイクル工場では遠隔監視の機能を導入することになりました。これに対しアズビルでは、計装ネットワークモジュール スマート・デバイス・ゲートウェイ* 形 NX-SVGを導入。通信ゲートウェイとして各デジタル指示調節計とPLC※4を接続したシステムを構築し、制御盤メーカーと協力して制御システムの遠隔監視を実現させることができました。
*各種制御デバイス間の情報連携をプログラムレスで実現し、開発作業をスマート化することができる通信ゲートウェイのこと。
岡山ケミカルリサイクル工場が本格稼働、全国各地・海外での「地産地消」を目指す
2023年4月にプラント建設に着工、2023年10月のプラント完成を目指して作業が進められました。
「試運転の段階で仕様の変更などで調整が必要な事案が発生しましたが、アズビルの担当者に相談することで、解決できました。アズビルは当社のやりたいことをくみ取り、制御盤メーカーとも細かく調整を行い、適切かつ迅速に対応してくれたところに大きな安心感がありました」(鈴木氏)
また2023年10月には、試運転中の1号機に対して、生成される油のpHの偏りを中和処理する設備の増設にも着手。こちらもアズビルに依頼して、計装機器の選定が進められていきました。
(株)CFPでは、工場の処理能力の向上と、より広範な種類の廃プラスチック処理を念頭に、あらかじめ中和設備を備えた2024年秋完成の2号機の構築も進めていきました。さらに2025年には1号機の処理能力をさらに高めるための拡張にも着手する予定です。
「今後、長期に稼働をしていきますが、そこでの改善・改良などはすぐにフィードバックしていく必要があるので、アズビルには協力をお願いしたいです」(鈴木氏)
「岡山ケミカルリサイクル工場の拡張はもちろんですが、将来的には、国内の各地域に同様の工場を設置することにより、地産地消のかたちでリサイクル処理のパフォーマンスを高めていきたいと考えています。ゆくゆくは東南アジアをはじめとする海外での展開も見据えています。そうした観点からも、海外に広く現地法人のネットワークを有するアズビルは、心強い味方だといえます」(福田氏)
製品として出荷される生成油を貯めるタンクに取り付けられ、液面のレベル測定を行うリモートシール形差圧発信器。
生成油を貯めるタンクの液面レベルを制御するための単座調節弁(右)とスマート・バルブ・ポジショナ。
用語解説
※1 マテリアルリサイクル
プラスチック廃棄物を新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法のこと。
※2 ケミカルリサイクル
廃プラスチックを化学的に分解することで、分解油などの化学原料に戻し、再利用可能な物質にするリサイクル方法のこと。
※3 サーキュラーエコノミー
製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化することで、資源利用に伴う環境負荷を低減するための経済システムを意味し、「循環経済」または「循環型経済」と和訳される。廃棄物をリサイクルして原料、製品などに再生し循環させる経済モデル。
※4 PLC(Programmable Logic Controller)
装置や操作盤に設置したセンサやスイッチなどの入力機器からの信号を入力回路で取り込み、あらかじめプログラムされた条件で出力回路をON/OFFすることで電磁弁やモータなどの出力機器を自由に制御するコントローラ。
お客さま紹介
岡山ケミカルリサイクル工場
取締役
油化・発電事業部
部長
福田 健志 氏
岡山ケミカルリサイクル工場
油化・発電事業部
鈴木 孝典 氏
株式会社CFP 岡山ケミカルリサイクル工場
- 所在地/岡山県笠岡市みの越16
- 操業開始/2024年3月
- 生産内容/プラスチックの油化
この記事は2024年09月に掲載されたものです。