ビルマネジメントシステム savic-net FX BMS
ゆめおおおか
環境保全の時代要請に応え続ける横浜市の大型駅ビル
横浜市の上大岡駅に直結する大規模複合施設「ゆめおおおか」では、2005年以来、管理組合が主体となり共用部の空調をはじめとする設備の省エネ施策を、ESCOの手法を用いて継続的に展開しています。施策への投資を最小化しながら省エネルギーを実現。その取組み実績により、同施設は横浜市が実施する地球温暖化対策計画書制度の優良事業者として高く評価されました。
建物分野 オフィスビル ショッピングセンター 官公庁建物 複合ビル 省エネルギー エネルギーマネジメント 中央監視システム 建物のエネルギーマネジメント
導入製品・サービス
公共性の高い施設の使命として、いち早く省エネルギーの取組みを推進
横浜市南部に位置する上大岡(かみおおおか)駅。京浜急行電鉄本線と横浜市営地下鉄ブルーライン(1号線)が乗り入れる同駅は、1日の乗降客数が27万人を数え、市の「主要な生活拠点」指定も受けています。その上大岡駅に直結している大規模複合施設が、1997年に完成した「ゆめおおおか」です。同施設は、商業棟、中央棟、業務棟(オフィスタワー)の3棟から成り、様々な小売店舗や銀行、公共施設、企業のオフィスなどが入居。地元・企業・行政が三位一体となって各種の都市機能が結びつく形で、人に優しい“まち”を形成しています。
ゆめおおおかでは、2004年ごろから世の中で高まりつつあった環境保全に向けた省エネ化の要請を受け、公共性の高い施設としていち早くそれに応える必要性に迫られていました。
「百貨店が入居する商業棟は別の管理ですが、中央棟、業務棟については、所有者や入居テナントなどが管理する専有部のほか、建物の冷暖房をつかさどる熱源設備や受電設備、通路の空調などは共用部として、各区分所有者の加入するゆめおおおか管理組合が維持管理しています。そうした共用部の省エネルギーをいかに図るかが重要なテーマでした」(森井氏)
「管理組合が管理する共用部だけでも、省エネ法に定める原油換算で年間3000キロリットルのエネルギーを消費する第一種エネルギー管理指定工場に該当していたことから、エネルギー管理士の選任が法制上求められていました。組合側の負担を軽減するために、エネルギー消費量を何とか3000キロリットル以下に削減する必要がありました」(中川氏)
運用改善を基軸にエネルギーのムダを排除、初期投資を抑えた施策を展開
管理組合から、ゆめおおおかの共用施設の運営委託を受けていた横浜市住宅供給公社では、ビルの空調制御や中央監視システムの導入・メンテナンスを竣工(しゅんこう)時から請け負っていたアズビル株式会社に相談。アズビルは、ゆめおおおか側が初期投資をすることなく一連の施策を展開できるESCO事業※1を提案しました。
「一企業が所有するビルとは異なり、区分所有者の合意が必要な共用部の設備改修では、資金をどのように調達するかが大きな課題です。区分所有者に多大なコスト負担が生じないESCO事業による提案は、我々にとって最適なものでした」(森井氏)
「設備などハードの更新・置換えは行わずに、制御プログラムの追加や設定値変更による運用改善によってエネルギー消費のムダを削減していく内容でした。TCO(Total Cost of Ownership)の削減という意味からも成果が期待できました」(中川氏)
ESCO事業の提案、さらに施設竣工以来長きにわたるアズビルの実績も高く評価され、ゆめおおおか管理組合、横浜市住宅供給公社の合意の下、アズビルの提案が2005年4月に採用されました。運用改善を中心とした対応であったため、工事はほぼ1カ月という短期間で完了し、同年6月から、以降6年間にわたるESCO事業がスタートしました。
特に効果を上げた施策は、空調設備の運用を見直すことでエネルギー消費のムダを徹底的に削減するものでした。例えば、今までは居室内の快適性を最優先し空調起動時に冷水・温水弁を一定時間30%開いて配管内の予冷・予熱を行っていましたが、これを改め、外気の温湿度条件に応じて予冷・予熱を自動的に判断するという運用に変更し、冷水・温水ポンプの動力にかかわる電力を削減しました。ほかにも、室内温度を通年で24℃とし、ユーザーがそれに対し±3℃の設定変更を行えるようになっていた運用を、遠隔設定値スケジュール機能を追加し、月ごとに室内温度設定ができるようにした上でユーザーの変更可能範囲を±1.5℃に改める、といった施策を実施。夏期・中間期の温水使用量をほぼゼロにするなど、想定された省エネ効果を実現しました。
ゆめおおおかに中央監視システム(BEMS)として導入されているアズビルの建物管理システム savic-net™FX(手前)とビルマネジメントシステム savic-net FX BMS(中央・奥)。
共用部通路に設置されているファンコイルユニット。手動バタフライ弁に電動モータを追加し、熱量計で計測している流量と温度から電動バタフライ弁を制御。適切な流量の冷水・温水を流すことで、ポンプの電力をはじめとするエネルギーを大幅に削減した。
コンサルティングサービスにより、省エネ施策全般をトータルに提案
2011年で6年間のESCO契約が満了しましたが、さらなる省エネルギーを追求すべく、同年を開始年とするESCO事業をアズビルとの間で再契約。空調機器やポンプへのインバータの導入など、一部ハードにまで踏み込んだ施策を展開しています。
「空調の自動制御にかかわる高度なノウハウを持つアズビルが、BEMS※2に蓄積された電気や空調などの運用データなどを解析し、それをベースにした総合的な観点で施設の省エネ施策を提案してくれたことは、我々にとって大きな安心感につながっています」(加納氏)
また、ゆめおおおかは、2010年に横浜市が開始した地球温暖化対策計画書制度※3の対象事業者となりました。この制度は、現場の運用プロセスに踏み込んだチェックポイントが細かく設けられており、これらに対する計画書の提出や報告が求められています。
「やはりアズビルの知見が必要と考え、新たな提案をあらためて依頼しました。横浜市の新制度への対応に加え、省エネ法関連書類の作成、さらには省エネ施策の策定などをトータルに行うコンサルティングサービスの提案があり、採用を決定しました」(中川氏)
コンサルティングサービスの成果もあり、横浜市が計画書制度の第1期と定める2010~2012年度の3カ年で、ゆめおおおかは31.3%のCO2削減を実現しました。
「300社以上の対象事業者の中から、5社の優良事業者の一つにゆめおおおかが選ばれ、市当局から表彰を受けることができました。このことは、組合員にとっても大きな誇りとなっています」(森井氏)
今後もゆめおおおかでは、アズビルの継続的な提案を協議し、なお一層の省エネルギーの実現に向けた施策の展開を検討していきます。
「現在、ゆめおおおかではESCOの継続活用によるさらなる省エネ事業の検討を始めています。アズビルには、これまで同様にコストメリットに優れた提案で、さらなる省エネルギーの実現に向けた提案を大いに期待しています」(加納氏)
横浜市に提出した地球温暖化対策実施状況報告書。
地球温暖化対策計画書制度における優秀事業者として横浜市からゆめおおおか管理組合に授与された表彰状。
用語解説
※1 ESCO(Energy Service COmpany)事業
工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。資金を顧客が負担し、ESCO事業者が省エネ保証を行う「ギャランティード・セイビングス契約」と、ESCO事業者が資金提供を行い、顧客が省エネ効果を含めたサービス料を支払う「シェアード・セイビングス契約」という二つの契約形態がある。
※2 BEMS(Building Energy Management System)
ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネ監視・制御を自動化し、建物全体のエネルギーを最小化するためのシステム。
※3 横浜市の地球温暖化対策計画書制度
「横浜市生活環境の保全等に関する条例」に定められた制度。市内で一定規模以上の温室効果ガスを排出する事業者が、地球温暖化対策計画書を作成・公表、実施状況を報告。これに対し市がその内容を評価することで、市内における温室効果ガスの排出抑制に向けた取組みを計画的に進めるもの。
お客さま紹介
理事長
森井 正博 氏
管理事業部
担当部長
上大岡総合管理事務所
所長
加納 正人 氏
管理事業部
管理事業課
上大岡総合管理事務所
課長補佐 兼 担当係長
中川 哲也 氏
ゆめおおおか
ゆめおおおか管理組合
- 所在地/神奈川県横浜市港南区上大岡西1-6-1
- 設立/1996年10月
- 事業内容/ゆめおおおか施設内共用部の管理・運営
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2015 Vol.1(2015年02月発行)に掲載されたものです。