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成田国際空港 中央冷暖房所

気象情報に基づく先進の最適運転支援技術で
熱源にかかわるエネルギーコストを大幅削減

成田国際空港では、敷地内にある約50の施設へ空調用の冷水・高温水を中央冷暖房所から供給しています。課題となっていた省エネルギーを推進する中、ESCO事業により熱源の最適運転支援システムを導入。気象情報から算出する冷温熱需要予測に基づいて、各種熱源機器の最適起動・停止にかかわるガイダンスを提示するシステムを活用し、目標を大きく上回るエネルギーコストの削減を実現しました。

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空港内施設に冷水・高温水を供給するエネルギープラントの省エネ化が課題

中央冷暖房所の監視室に設置されたAdvanced-PSとU-OPT。

中央冷暖房所の監視室に設置されたAdvanced-PSとU-OPT。

日本を代表するハブ空港である成田国際空港。近年の急速なインバウンド需要の高まりを背景に、訪日外国人旅客を受け入れる、日本の空の表玄関としての存在感がますます高まっています。2016年に同空港を利用した外国人客は、前年比11%増となる1392万866人を数え、5年連続で2桁の伸び率を示しています。一方、2017年3月にスタートした2017年夏ダイヤでは、国際線の発着回数が週当たり3695回、就航都市数が108都市となるなど、いずれも過去最高を記録。1978年の開港から39年の歳月を経てなお発展を続けています。

同空港では、2011年から取り組んできた「エコ・エアポートビジョン2020」の成果を踏まえて、2015年度に「エコ・エアポートビジョン2030」を策定しました。これに基づき、空港運用に伴う周辺環境への負荷低減、地球環境の維持や持続可能な社会への貢献を果たすための施策に継続的に取り組んでいます。

「特に、旅客ターミナルビルや貨物ビルなど、敷地内にある約50の施設に空調用の冷水・高温水を供給する大規模エネルギープラントである、中央冷暖房所の省エネルギーを推し進めたいと考えていました」(近藤氏)

「これまでも中央冷暖房所では、省エネ機器の採用やコージェネの導入に加え、運用面での工夫なども行ってきましたが、さらなる省エネ効果を達成するには、より抜本的な施策が必要でした」(山本氏)

施設への供給熱量はそのままに、熱製造コストの大幅削減を目指す

U-OPTは、気象予測データを基にどの熱源機器をどのタイミングで起動・停止させるかを演算により決定する。また温度変化の予測値と実測値、製造熱量の計画と実測値をグラフで表示している。

U-OPTは、気象予測データを基にどの熱源機器をどのタイミングで起動・停止させるかを演算により決定する。また温度変化の予測値と実測値、製造熱量の計画と実測値をグラフで表示している。

2012年初めごろに、中央冷暖房所にかかわる省エネ提案を行ったのがアズビル株式会社です。提案内容は、同施設が熱源設備の監視・制御を行うDCS*1として運用していた高度情報統合生産システム Advanced-PS™に対し、最適運転支援システムである熱源設備/動力プラント全体最適化パッケージ U-OPT™を追加。中央冷暖房所から各施設への供給熱量はそのままに、熱製造コストの削減を図るというものでした。

「各施設への供給熱量を下げるという一般的な省エネ施策では、お客さまや従業員の快適性にも影響が及びます。そうした点で、供給熱量を変えずに熱製造効率を高めるというアズビルの提案は、我々の設備運営にとって、極めて理にかなっていました」(近藤氏)

「既存の監視・制御システムをそのまま活用し、大規模な改修などが不要である点も高く評価しました。さらにアズビルの提案は、シェアード・セイビングス契約によるESCO事業*2でした。これは多額の初期投資が不要で、あらかじめ設定した目標値の達成を保証してくれるというもので、リスクを最小限に抑えながら施策を展開できる点は我々にとって大きな魅力でした」(大場氏)

成田国際空港は、アズビルの提案を採用し、2013年に入ってから既存設備へのU-OPT導入を進めました。そして2014年4月には、5年間のESCO契約に基づくサービスをスタートしました。

個々の熱源機器の起動・停止をガイダンス。最適運用支援でコストを最小化

旅客ターミナルはガラス部分が多いため、その空調熱負荷は主に天候に左右されます。U-OPTを活用した最適運転支援の最大のポイントは、外部の気象予測サービスからの情報を基に、冷温熱需要の予測を行うことです。最新の気象情報を60分間隔で取得し、U-OPTでは、30分周期で常時24時間先までの熱需要予測を行い、中央冷暖房所に設置されている電気式、ガス式などの熱源機器の選択および起動・停止のガイダンスをオペレータに提示します。ひと月ごとに変動するエネルギー単価も考慮し、その時点でのコストミニマムを実現する、電気、ガスのベストミックスによる熱量供給を行うための運転を支援しています。

「これまでも、前日の気温や当日の状況などに基づいて、オペレータの判断で熱源機器を臨機応変に選択して起動・停止させてきました。従来は1時間前に機器を起動していたものが、U-OPTからのガイダンスで30分前からの機器稼働でも間に合うといった、より細かいタイムスケジュールでの最適起動・停止ができるようになりました。小さなコスト削減を積み上げて大きな成果につなげていくことができます」(山本氏)

「稼働開始とともに、U-OPTからのガイダンス、現場機器の運転状況をアズビルと共有してきました。それを受けてアズビル側でシステムを適切にチューニングし、ガイダンスの精度をさらに高めていってくれました」(島田氏)

中央冷暖房所における機器の起動・停止の最終的な判断は、あくまでも運用現場の責任者が人的に行っています。しかし3年にわたるシステムの運用の中で、現場が長年培ってきた運転ノウハウと、U-OPTに組み込まれたアズビルの知見との融合が進み、省コストを目指した運転がより高いレベルへと進化しています。

運用初年度には、あらかじめ目標として設定されたエネルギーコストの削減値を達成。2年目、3年目には目標を大きく上回る140%の成果を得ています。これに合わせて、CO2排出量 約700トン/年の削減も達成。省エネ活動が環境貢献にもつながり、効果を上げることができました。

「アズビルは3カ月に1回程度のサイクルで、ミーティングを通じてU-OPTの運用成果を分かりやすくレポートしてくれます。加えて、現場で発生している課題の解消に向けた支援、省エネルギー全般にかかわる情報やノウハウの提供にも積極的に努めてくれており、そうした点でも非常に助かっています」(萩原氏)

「ESCO契約は残すところあと2年ですが、その間、さらなるエネルギーコストの削減に向けた支援を期待する一方、今回の施策の枠組みにとどまらない広範な視点からの省エネルギーに向けた提案も、アズビルにぜひお願いしたいと考えています」(近藤氏)

中央冷暖房所のプラント内にある電気式冷凍機。

中央冷暖房所のプラント内にある電気式冷凍機。

二胴水管式蒸気ボイラ。

二胴水管式蒸気ボイラ。

※ Advanced-PS、U-OPTは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 DCS(Distributed Control System)

分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。

※2 ESCO(Energy Service COmpany)事業

工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。資金を顧客が負担し、ESCO事業者が省エネ保証を行う「ギャランティード・セイビングス契約」と、ESCO事業者が資金提供を行い、顧客は省エネ効果を含めたサービス料を支払う「シェアード・セイビングス契約」という二つの契約形態がある。

お客さま紹介

成田国際空港
株式会社
空港運用部門
施設保全部
機械グループ
副主幹
近藤 哲 氏
成田国際空港
株式会社
空港運用部門
施設保全部
機械グループ
大場 秀悟 氏
成田国際空港
株式会社
空港運用部門
施設保全部
機械グループ
萩原 雅人 氏
株式会社NAAファシリティーズ
機械部
冷熱供給課
課長
山本 哲也 氏
株式会社NAAファシリティーズ
機械部
冷熱供給課
主任技師
島田 栄一 氏

成田国際空港 中央冷暖房所

成田国際空港株式会社

  • 所在地/千葉県成田市成田国際空港内 NAAビル
  • 設立/1966年7月30日(新東京国際空港公団)
    2004年4月1日(成田国際空港株式会社)
  • 事業内容/成田国際空港の運営事業、商業施設の整備などのリテール事業、施設貸付事業、鉄道事業

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2017 Vol.4(2017年08月発行)に掲載されたものです。

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