ソリッドスクエア
初期投資不要、成果保証型スキームによる既存設備の運用改善で、ファンド物件の大幅な省エネ・省コストを実現
JR川崎駅西口エリアのランドマークとしても知られるソリッドスクエアでは、SDGsの取組みで折から高まる省エネルギーに向けた要請に対し、ファンド物件という施設の特質とも相性の良い、初期投資不要、成果保証型のスキームによる省エネルギーサービスを採用。既存の熱源や空調の設備の運用改善による施策の展開により、多大な省エネ効果を享受し、施設運用コストの大幅削減を実現しています。
建物分野 オフィスビル 官公庁建物 複合ビル 省エネルギー エネルギーマネジメント コスト削減 稼働改善 中央監視システム ビル向けクラウドサービス エネルギーマネジメントサービス
導入製品・サービス
社会的要請およびビジネス戦略上、施設の省エネルギーが重要なテーマに
JR川崎駅に隣接する旧明治製菓 川崎工場跡地の再開発に伴い、1995年5月に竣工したソリッドスクエア。このエリアでもひときわ目を引く同施設は、24階建て高層オフィスビル2棟からなり、地元企業のオフィス、川崎県民センターや神奈川県パスポートセンター川崎支所といった県施設、スポーツクラブやホールが入っています。また建物入り口にはガラスドーム屋根と円形の池を持つアトリウムが広がっており、市民の憩いの場所として日々にぎわいを見せています。
ソリッドスクエアは東京海上アセットマネジメント株式会社を投資法人とするファンド物件で、施設の賃料収入などの収益を投資家に配分するというスキームにより運営されています。同施設において、資産価値および投資家からの評価の向上を目的として取り組まれたのが、継続的な建物のメンテナンスと併せた省エネルギーのための施策検討でした。
「SDGs※1などで示される持続可能な社会への貢献という取組みに、社内で注力してきています。また、不動産投資信託の業界の中で、他社との差異化を図り競争力を高めていくには、設備管理コストの削減によって投資家様に対する利益還元をいかに拡大していくか、いわゆる内部成長をどう図っていくかが重要なテーマであったことも背景となっています」(吉田氏)
現行設備を活用した改善策により、初期投資不要の省エネ施策が可能
省エネ・省コストの実現に向け、東京海上アセットマネジメントは、ソリッドスクエアの竣工時に中央監視装置を導入し、以来、システムの維持・管理や更新といった保守サービスを通じて施設の運用を支えてきたアズビル株式会社に相談。建物の特性を踏まえ、アズビルから提案されたのが「省エネルギー保証サービス」でした。
「建物の省エネ施策というと、通常は高効率な空調・熱源機器への更新など、相応に規模の大きな投資を伴うものになりますが、アズビルの提案する省エネルギー保証サービスは、大きく設備を更新することなく、既存設備の運用改善によって省エネルギーを目指していくというものでした。初期投資が不要であることに加え、定額の業務委託料で利用できる上、実績が光熱費削減予定額を下回ってしまった場合は、アズビルがその差額を負担する成果保証型でリスクを回避できるなど、ファンド物件という当施設の特質とも極めて相性の良いものでした」(吉田氏)
「竣工以来、アズビルには一貫して設備管理の運用をサポートしてもらっており、2018年には中央監視装置を更新してさらに詳細な設備の運転データの収集も可能になりました。当施設の現場を熟知しているアズビルのデータを根拠にした提案や、行き届いたサービス体制には、大きな安心感がありました」(瀬川氏)
アズビルは、過去1年分の運転データを基に、年間約1,100万円のコスト削減を実現する施策を提案。ソリッドスクエアでは2019年8月に省エネルギー保証サービスの採用を決定し、2019年9月から2024年11月までを契約期間とするサービスの利用をスタートさせました。具体的な省エネ施策としては、ガス焚きと電動の熱源設備の運転効率を管理し、効率の高い機器を優先的に運転するという運用改善を行いました。また空調機回りでは、台数制御や間欠運転制御を行うコントローラを導入し、低負荷時における空気搬送動力の削減を図っています。
「設備やその管理について豊富な経験と知識を持ったアズビルの担当者が、設備の運転データなどを精査した上で、季節ごとの運転スケジュールや運転手順についてのアドバイスを現場の設備管理員に行っており、スムーズに運用ができる体制が整っています」(瀬川氏)
2018年に更新を行ったアズビルの建物管理システム savic-net™FX2。施設全体の運用状況を一括管理している。
サービス契約上の目標値に対し達成率154%のコスト削減効果
施設のエネルギー使用量や設備の運転状況などの情報は、アズビルの運営するクラウドサービス上に収集されており、パソコンやタブレットの画面上でグラフなどを表示し、確認や分析が行える。省エネ効果報告書もクラウド上で自動生成されているため、省コスト効果について最新値の把握が可能である。
このような施策を実施した結果、ソリッドスクエアでは想定を大きく上回る省エネ効果を得ることができました。
「サービス利用の第1期、第2期にあたる2019年12月~2020年11月には、省エネ対象設備のエネルギー削減率で23%を達成し、金額ベースでは、ガス使用量の大幅削減を中心に、電気、ガス合わせて2018年度比で約1,700万円のコスト削減ができました。削減の目標値は1,100万円で設定されていましたので、達成率は実に154%に上ります」(瀬川氏)
そうした成果に加えて、アズビルのビル向けクラウドサービスEM(Energy Management:エネルギー管理)を利用することで、オフィスのパソコンやタブレット端末からエネルギーの利用状況等を逐次確認することができます。データをダウンロードし、投資家に対する報告資料の作成などにも活用されています。また、アズビルの担当者からは省エネルギーに関する報告が定期的に行われています。特に半年に1度の報告会では、現時点での省エネ効果実績を確認するとともに、次に行うべき施策について共有されています。
「アズビルの担当者が、省エネ効果が出ているところ、逆に下がり幅が低い箇所について数字を根拠にきちんと説明してくれるので、とても納得感があります。これを受け、投資家様への説明もスムーズに進めることができます。また、建物に常駐する設備管理員のスキルによって、建物ごとに省エネ効果や設備運用にばらつきが出てしまいがちですが、アズビルにはメーカーの立場から、各設備管理員へアドバイスをもらえるので、均一的な状態を保つことができるのは大きなメリットだと感じています」(吉田氏)
「当施設は、国の省エネ法※2や川崎市の地球温暖化対策推進条例の適用を受けていて、法制度が定める報告義務を負っています。報告書の作成もアズビルが支援してくれており、所管の官公庁に対しても的確で品質の高い報告ができています」(瀬川氏)
今後もソリッドスクエアでは、熱源、空調をはじめとする設備のさらなるチューニングと運用改善を図ってエネルギー利用効率を高めていくことで、なお一層の省エネ効果を追求していくことになります。
「竣工から一貫して当施設の管理をサポートしてくれているアズビルには大きな安心感があります。今後も物件を取得していく際には、こういったメニューを積極的に取り入れていきたいと考えており、アズビルの提案に大いに期待しています」(吉田氏)
省エネ対象設備の光熱費推移(2019年12月~2020年11月)
※savic-net、savic-net FXは、アズビル株式会社の商標です。
用語解説
※1 SDGs(Sustainable Development Goals)
2015年の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標のこと。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17のゴールと169のターゲットが示されている。
※2 省エネ法
「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」。工場や事業所が使用するエネルギー量(原油換算)によって「第一種エネルギー管理指定工場等」(3,000kl/年以上)、「第二種エネルギー管理指定工場等」(1,500kl/年以上3,000kl/年未満)をそれぞれ指定し、エネルギー使用状況届出書、中長期計画書、定期報告書といった法定書類の提出やエネルギー管理統括者等の選任を求めている。
お客さま紹介
アセットマネジメント
株式会社
不動産投資運用部
マネージャー
吉田 明弘 氏
第一ビルディング
ソリッドスクエアオフィス
副課長
マネージャー
瀬川 千絵 氏
ソリッドスクエア
ソリッドスクエア
- 所在地/神奈川県川崎市幸区堀川町580
- 竣工/1995年5月
- 施設概要/地下2階、地上24階、高さ100m、延床面積168,904m²
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2021 No.1(2021年04月発行)に掲載されたものです。