HOME > 納入事例 > 金沢大学付属病院 多用途型トリアージ施設

金沢大学付属病院 多用途型トリアージ施設

感染症緊急対応時に活用するトリアージ施設を新設
用途に応じてスイッチ一つで簡単に室圧を制御

金沢大学附属病院では新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、文部科学省が推進する患者トリアージ用の施設を新設しました。通常時は多目的スペースとして利用し、パンデミックなどの非常時には感染対策用に切り替えて、感染症患者のいる部屋の空気を外部に流出させない仕組みを構築。施設の運用を行う医師や看護師でもスイッチ一つで簡単に室圧の切替えが可能になりました。

金沢大学付属病院 多用途型トリアージ施設

金沢大学付属病院 多用途型トリアージ施設

建物分野 病院 安全・安心 研究施設向け風量制御システム

建物内の陰圧制御が不可欠な多用途型トリアージ施設

1862年に創設された加賀藩の彦三種痘所(ひこそしゅとうじょ)を起源とする金沢大学。今日では、日本海側に置かれた国立総合大学として、我が国の高等教育と学術研究の興隆に貢献しています。同大学に併設された金沢大学附属病院は、医療従事者の養成に向けた教育や臨床研究の拠点として、また838の病床や高度な医療設備、そして優れた医療スタッフを備える特定機能病院としても重要な役割を担っています。

新型コロナウイルス感染症拡大に対して文部科学省が2021年2月にスタートさせた「附属病院多用途型トリアージスペース整備事業」を受け、同病院では、感染症患者を病状の緊急度や重症度に応じて治療の優先度を決めるトリアージを実施できる施設の設置を決定しました。パンデミックなどの非常時には感染対策用スペースとして、またパンデミックなどが起きていない通常時は多目的スペースとしてそれぞれ活用することを目的に、通常時/非常時の相互切替え可能な「多用途型トリアージ施設」の建設に取り組みました。

「トリアージ施設では、通常時に利用している空間の室圧を、感染症対応に適したものへと切り替えることで、室外に汚染空気が流出しないよう考慮することが必要です。そこで非常時には、診察室・処置室、陽性患者待合室といった感染症患者の出入りがある空間に対して、部屋の気圧を隣室に比べて低く保ち、空気の流れを部屋の内側に向けるという陰圧※1制御を行う仕組みが不可欠でした」(向井氏)

室内の陰圧環境への切替えをスイッチ一つの簡単な操作で実現

医療施設内の汚染エリアや清潔エリアで必要とされる安定した室圧環境を維持し、院内空気感染リスクを低減する風量制御コントローラ付きベンチュリーバルブ Infilex VN。

医療施設内の汚染エリアや清潔エリアで必要とされる安定した室圧環境を維持し、院内空気感染リスクを低減する風量制御コントローラ付きベンチュリーバルブInfilex VN

トリアージ施設における陰圧制御の実現にあたり、金沢大学附属病院で採用を決めたのが、アズビル株式会社の風量制御コントローラ付きベンチュリーバルブInfilex™VNでした。

「我々が思い描いていたものは、確実に陰圧制御ができることに加え、通常時と感染症対応時の室圧の切替えを俊敏かつ柔軟に行えるような仕組みでした。アズビルの提案は、まさにそうした要件にかなうものであり、さらにスイッチ一つで、誰でも簡単に通常時/非常時の室圧の切替えができるものでした」(中出氏)

金沢大学附属病院では以前から病院の空調・熱源といった建物管理を担う中央監視システムや制御機器、センサ類にアズビル製品を導入しており、これまでの豊富な実績による大きな信頼感も、採用を決定した大きな要因でした。

金沢大学附属病院 多用途型トリアージ施設は、2021年5月に着工し、同年8月に竣工(しゅんこう)。その後、Infilex VNが導入されたトリアージ施設で、通常モード(通常時)と陰圧モード(非常時)の切替えを行い、室圧、風量データによる室内環境の数値計測のほか、スモークを発生させた気流の確認など、陰圧制御の検証をアズビルが実施しました。

「差圧ダンパの動作状況を目視で確認すると同時に、アズビルから提出された気流の制御に関するデータなどを含め、確実に陰圧になっていることが確認できました」(中出氏)

多用途型トリアージ施設に設置された操作盤。スイッチ一つで通常モード/陰圧モードの切替えができる。

多用途型トリアージ施設に設置された操作盤。スイッチ一つで通常モード/陰圧モードの切替えができる。

            
診察室や処置室の室圧を確認できる室圧モニタ。室外と比べてマイナス表示されており、陰圧になっていることが確認できる。

診察室や処置室の室圧を確認できる室圧モニタ。室外と比べてマイナス表示されており、陰圧になっていることが確認できる。

            
          
       

大学の研究施設や実験施設の柔軟な運用の実現にも有用

金沢大学附属病院のトリアージ施設の運用開始後、同施設では数多くの患者の検査や診察を受け入れています。

施設において、通常モードから陰圧モード、あるいはその逆への切替えを実際に担当するのは、医師や看護師といった医療スタッフで構成される感染制御部のメンバーで、設備の管理者などと異なり、建物の空調設備機器について精通しているわけではありません。

「スイッチ一つで切替え操作ができ、約2分で陰圧の環境へと確実に移行できる点と陰圧の状態が確保されていることについて、医療スタッフから好評を得ています」(向井氏)

「一度陰圧環境に移行すれば、ドアの開閉などにより室内の気圧に変化が生じても、速やかに設定された状態へと回復できる点も高く評価しています」(中出氏)

今後、金沢大学附属病院では、新型コロナウイルス感染症収束後に非常時のトリアージ施設としての運用が不要になれば、この場所を病院スタッフの研修や医学研究のためのワークショップの実施、地域貢献活動などにも活用していく予定です。そして再び新型コロナウイルス感染症や新たな感染症がまん延した際には、直ちに陰圧環境を備えたトリアージ施設としての利用に切り替えます。

今回の取組みを通じて同病院では、今後も陰圧制御の必要性が想定される様々な場面において、Infilex VNの活用が非常に有望な選択肢になり得ると捉えています。

「例えば、必要に応じて一般病床を陰圧制御が必要な感染専用病床に切り替えるといった対応も、既存の病室を有効利用していくという観点から実現が望まれています。そうした場面でも、Infilex VNは大きな威力を発揮してくれるでしょう」(中出氏)

「さらに、附属病院に限らず大学全体の視点でも、産学連携の研究施設・実験施設などで、実験の用途に応じた運用で室圧の切替えを行い、終了したら元に戻すという需要が今後期待できると思います。そうした局面も含め、アズビルにはさらに積極的な提案を期待しています」(向井氏)

多用途型トリアージ施設内に設けられた診察室。天井内に設置されているInfilex VNが動作して室圧をコントロールしている。

多用途型トリアージ施設内に設けられた診察室。天井内に設置されているInfilex VNが動作して室圧をコントロールしている。

※Infilexは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 陰圧

周囲(外部)と比較したときの相対的な圧力の表現。周囲より圧力が高い場合を陽圧、低い場合を陰圧という。密閉した部屋の換気(部屋の中から外へ)が作動した際に、その部屋の気圧は下がり陰圧となる。気流は陽圧側から陰圧側へ流れるので部屋内を陰圧にすることでウイルスや菌を含む空気が外部に流出しない。

 

お客さま紹介

国立大学法人 金沢大学 施設部 部長 向井 和人 氏
国立大学法人
金沢大学
施設部
部長
向井 和人 氏
国立大学法人 金沢大学 施設部 宝町施設支援室 副室長	中出 和人 氏
国立大学法人
金沢大学
施設部
宝町施設支援室
副室長
中出 和人 氏

金沢大学付属病院 多用途型トリアージ施設

金沢大学付属病院

  • 所在地/石川県金沢市宝町13-1
  • 開設/1862年
  • 事業内容/特定機能病院

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2022 No.(2022年07月発行)に掲載されたものです。