The Athenee Hotel, a Luxury Collection Hotel, Bangkok
タイ高級ホテルでESCOを活用した省エネ対策を実施。熱源の最適化により消費電力を効率的に削減
タイの高級ホテルであるアテネホテルでは、サステナビリティ推進やエネルギーコスト高騰への対応を念頭に省エネルギーに向けた取組みを推進しています。ESCOを活用し、BEMS導入によるエネルギー消費の可視化、および冷水・冷却水ポンプの変流量制御による最適化を行い、着実に省エネ効果を上げています。
建物分野 ホテル 快適 省エネルギー エネルギーマネジメント 海外 中央監視システム 建物のエネルギーマネジメント
導入製品・サービス
環境対策への社会的要請を背景に、運営施設の省エネルギーを推進
様々なライフスタイルを提案するタイを代表する総合不動産グループのAsset World Corporation Public Company Limited（アセット・ワールド・コーポレーション、以下、AWC）は、タイの大手財閥Thai Charoen Corporation（TCC）グループの一員として不動産事業を担い、高級ホテルや各種商業施設を展開しています。「Building a Better Future」という理念の下、企業活動全体ですべてのステークホルダーに対する責任を果たすことを目指しています。
「SDGs※1」や「カーボンニュートラル」などをキーワードに、世界規模で省エネルギーへの取組みが進む中、タイ政府は2021年8月に「国家エネルギー計画枠組み」を策定しており、こうした社会的要請や近年のエネルギーコスト高騰を背景に、AWCでは系列のホテルや商業施設の省エネルギーを強化し国内の環境対策を推進していくことを決定。その先駆けとして自社が運営するバンコク中心部に位置するマリオットグループの五つ星ホテルThe Athenee Hotel, a Luxury Collection Hotel, Bangkok（以下、アテネホテル）における省エネ施策に取り組みました。アテネホテルは、ワライ・アロンコン王女が所有していたカンダヴァス宮殿跡地に建てられたタイ王室との深いつながりを持つホテルです。
「アテネホテルでは、各設備の運転・管理を自社の設備担当者が手動で行っており、ホテル全体のエネルギー消費状況の詳細な把握・分析が難しい状況でした。効率的かつ持続的な省エネルギーを実現するには、中央監視システムを導入してエネルギーの消費状況を可視化し、適切な分析・改善を行うという体系的なアプローチが有効ですが、実施には設備のアップグレードなど資金面での課題もありました」（Soammaphat Traisorat氏）
建物全体を見据えたトータルな省エネ施策が期待できる点を評価
AWCでは先行投資を抑えながらベンダーの専門知識を活用することができるESCO※2を活用することを決定。省エネ提案を行っていた芙蓉総合リース株式会社の海外グループ会社であるFuyo General Lease (Thailand) Co., LTD.とアズビルタイランド株式会社をパートナーとして採用しました。
「azbilグループは、様々な産業でエネルギー消費を最適化するための革新的なソリューションとサービスを提供し、優れた実績を持っています。空調や照明といった個別設備の省エネルギーだけではなく、建物全体のエネルギーマネジメントをシステムとして実施できる知見を備えていることを高く評価しました」（Choo Leng Goh氏）
加えて、顧客の具体的なニーズや目標に合わせたソリューション提案ができること、タイ市内の大規模商業施設などのESCO事業でも多くの実績があることでも安心感があったといいます。
AWCでは2021年6月にアズビルタイランドとパートナー契約を結び、翌2022年1月、アテネホテルにBEMS※3として、アズビルの建物管理システムsavic-net™G5を導入。2022年10月からESCOスキームに基づく省エネルギー保証サービスがスタートしました。BEMSの導入によりアテネホテルでは、それまで手動で運用していた設備機器の運転が自動化され、エネルギーの使用状況をリアルタイムで監視できるようになりました。具体的な省エネ施策としては、チラープラントの冷水・冷却水ポンプにインバータを導入し、空調負荷に応じた変流量制御を行い、さらにポンプの運転最適化を実施。これにより電力の削減を実現しました。BEMSで収集した設備運用データについては、アズビル株式会社で分析と省エネ効果の評価を行い、それらはアズビルタイランドから毎月AWCへレポートとして報告され、より効率的な省エネ対策の実施と継続的な改善が可能になりました。
BEMSとして新たに導入されたsavic-net G5の監視画面。設備の稼働状況を分かりやすいグラフィックで確認することができる。
熱源機械室に設置された冷凍機で空調用の冷水を作り出す。BEMSの導入でスケジュールによる発停と台数制御を実施。
空調機に冷水・冷却水を送るためのポンプ（左）とポンプの変流量制御を行うインバータ（右）。
運用しながら順次課題を解消、省エネ目標達成に向け確かな手応え
2022年10月からの4年間を契約期間とするESCOでは、2017～2019年におけるアテネホテルの総エネルギー消費量（電気代）の平均値をベースラインとし、サービス期間を通じて建物全体で約8％のエネルギー削減を目標に設定しました。そのうちの50%以上でアズビルのBEMSが貢献しています。
「azbilグループの支援の下、BEMSを活用した継続的なモニタリングと設備稼働状況の分析に基づいて、課題の捕捉と改善を進めており、目標達成へ向けた手応えを感じています。また、一連の取組みや報告書を通じて、エネルギー削減を目に見える形で実感でき、アテネホテルにおける環境対策と省エネルギーへの意識が高まったことも大きな成果だと感じています」（Teerayut Chuchai氏）
今後のアテネホテルにおける省エネ施策の展開についてAWCでは、冷凍機の高効率化や太陽光発電の導入などにより建物の環境性能の向上も検討し、英国のBREEAM（BRE Environmental Assessment Method）や米国のLEED（Leadership in Energy and Environmental Design）などのグリーンビルディング認証※4も取得する考えです。
また、今回の省エネ施策を通じて得られたノウハウを自社が運営するほかのホテルや商業施設、オフィスビルにも展開し、さらなる地球環境への貢献を目指しています。
「azbilグループは、経験と技術的知識を持ち合わせており、エネルギー効率を改善しようとする組織にとって信頼できるパートナーです。アズビルタイランドには、新たに計画している二つの施設における省エネプロジェクトにも参画してもらう予定です。今後もアズビルタイランドとは、当社の運営する個々の建物のエネルギー最適化はもちろん、ともに地球環境への貢献の取組みを展開していくパートナーとして、協力関係を強化していきたいと考えています」（Soammaphat Traisorat氏）
※savic-netは、アズビル株式会社の商標です。
用語解説
※1 SDGs（Sustainable Development Goals）
2015年の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標のこと。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17のゴールと169のターゲットが示されている。
※2 ESCO（Energy Service COmpany）
工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する。
※3 BEMS（Building Energy Management System）
ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネルギー監視・制御を自動化し、建物全体のエネルギーを最小化するためのシステム。
※4 グリーンビルディング認証
建物における環境負荷の低減、利用者の快適性の向上などの取組みについて、第三者が認証を与え、その性能を保証するもの。
お客さま紹介
Director,
Vice Chairman of the Executive Committee
Soammaphat Traisorat 氏
General Manager of The Athenee Hotel
Choo Leng Goh 氏
Director of Engineer
Teerayut Chuchai 氏
The Athenee Hotel, a Luxury Collection Hotel, Bangkok
- 所在地／61 Wireless Road, Lumpini, Pathumwan, Bangkok, Thailand
- 開業／2017年10月
- 施設内容／ホテル、レストラン、会議・宴会場など
この記事は2023年11月に掲載されたものです。
