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川崎市役所本庁舎

「環境にやさしい庁舎」を目指した本庁舎が完成、クラウド型BEMSの活用で省エネルギーと快適性を両立

川崎市役所本庁舎が2023年6月に建て替えられ、同年11月に本格的に供用を開始しました。新本庁舎は省エネルギーと快適性の両立を目指し、空調の中央監視システムと併せて、ビル向けクラウドサービスを導入。設備の運用データのより詳細な見える化と、分析しやすい環境を整備したことにより、エネルギー管理を実施し、効率のよいエネルギー使用に取り組んでいます。

建物分野 官公庁建物 快適 省エネルギー 中央監視システム ビル向けクラウドサービス 建物のエネルギーマネジメント

市の歴史を伝えるとともに現代にふさわしい施設として建築

古くから工業地帯として発展するとともに、都市部へのアクセスのよさからベッドタウンとしても人気を集めてきた神奈川県川崎市。2024年7月1日に市制100周年を迎える同市において、市政の中枢を担ってきたのが川崎市役所本庁舎です。川崎市に初めて本庁舎が誕生した1938年以来、戦前から増改築を重ねながら約80年にわたり運用されてきましたが、経年による施設・設備の老朽化が進み、耐震性に不安を抱えていたことから、2013年度に現在の場所で庁舎を建て替えることが決定しました。

新本庁舎の事業計画で力を入れたのが環境への配慮です。新本庁舎では設計コンセプトの一つとして、「地球温暖化対策の積極的な推進による、環境にやさしい庁舎」を掲げ、外部熱負荷を受けにくい建築外装計画を取り入れるほか、太陽光や地中熱などの再生可能エネルギーを積極的に利用し、エネルギー使用量および温室効果ガス※1排出量の削減を推進しています。

「川崎市建築物環境配慮制度※2(CASBEE®川崎)で最高位のSランク取得を目標に掲げ、市民や企業の環境配慮実施におけるモデルとなる施設を目指しました」(菅野氏)

クラウド型のBEMSの活用で施設全体のエネルギーを管理

川崎市役所本庁舎の新築にあたり空調の中央監視システムとして採用されたのがアズビル株式会社の建物管理システムsavic-net™G5です。新本庁舎では、きめ細かい設備運用とエネルギー管理を実現するために、室温などの計測点や空調機などの状態監視点を多く収集・管理できるようにしました。例えば既存の第3庁舎では、会議室の室温で暑い/寒いという連絡があった場合は、設備担当者が現場に行って空調機の設定などを確認して対応を行っていますが、新本庁舎では現場に行かなくても中央監視システムから居室の状態を細かく確認することができるようになっています。

「防災センターでつぶさに現場の状態や設備の運転状況が把握できるので、利用者が空調機の操作が分からなかったり、急に室内の温度や湿度の調整が必要になったりした場合などは、遠隔操作によりスムーズに利用者のバックアップができるようになりました」(鈴木氏)

また中央監視装置と併せてビル向けクラウドサービス EM(エネルギー管理)、BM(設備保全管理)、OP(熱源最適運転支援)も導入され、クラウド型のBEMS※3(以下クラウドBEMS)として2023年7月から稼働を開始しました。

「川崎市としてクラウドBEMSを導入したのは今回が初めてです。クラウドはソフトウェアの更新の必要がなくシステムが陳腐化しません。常に最新のソフトウェアで運用が可能です。また、既にクラウドBEMSを導入している他都市の事例もあったことが決め手となりました」(菅野氏)

空調熱源設備の稼働台数を制御するビル向けクラウドサービス OPでは、新本庁舎内の空調負荷の状況を見ながら冷水や温水の需要予測を行い、熱源設備の効率的な運転を支援します。

「省エネルギーはもちろんですが、なるべく人の手を介さずに常に設備の稼働が最適な状態であることを目指しました」(菅野氏)

消費エネルギーなどの状態を確認できるビル向けクラウドサービス EMでは、フロアごとの電力消費量などの見える化を実現しました。

「運用を始めて間もないですが、既に想像以上に興味深いデータが得られています。例えば、サーバ室の電力消費量は1日単位だと変化はありませんが、気温が高い夏季は空調をたくさん使用するため、冬季に比べて消費量が大きいことが一目で分かります。こういったデータは環境対策を考える上で重要ですし、対外的な根拠としても示せるので、積極的に活用したいと考えています」(石渡氏)

ビル向けクラウドサービス EMの画面。各フロアの電気使用量をグラフ化したもの。目的に合わせたグラフを作ることができる。

ビル向けクラウドサービス EMの画面。各フロアの電気使用量をグラフ化したもの。目的に合わせたグラフを作ることができる。

防災センターに設置されたsavic-net G5の監視画面。大型モニタに監視画面を映し出して関係者で一緒に確認することもできる。

防災センターに設置されたsavic-net G5の監視画面。大型モニタに監視画面を映し出して関係者で一緒に確認することもできる。

2025年4月からの省エネ対策検討に向けて

川崎市では、2023年7月から2028年3月の5カ年にわたりアズビルとクラウドBEMS保守・運用支援業務委託契約を締結し、収集・蓄積した設備運用データを最大限に活用して、省エネ施策の検討と実施を推進していく計画です。周辺ビルなどに分散していた部署の新本庁舎への移転が2024年2月に完了しました。2024年度は1年を通してエネルギーの消費動向を収集・蓄積し、省エネ対策などの施策の効果を検証する基準となるベースラインを設定し、2025年度から省エネ対策に取り組む予定です。

「運用データの見える化をすることで、分析しながらエネルギーの削減につなげられればと思っています。アズビルの省エネ支援サービスを通じて、どれだけのエネルギーが削減できるのか期待しているところです。プロの視点で見ていただき、エネルギーをできるだけ削減しながら、快適性も実現し、効率のよいエネルギー使用を目指します」(丹波氏)

「環境対策は川崎市の重要な施策の一つです。他プラントやビルでの省エネルギーやCO2削減のノウハウを豊富に持っているアズビルからの提案と協力に期待しています」(田口氏)

※savic-netは、アズビル株式会社の商標です。
※CASBEE®は、(一財)住宅・建築SDGs推進センターの登録商標です。

用語解説

※1 温室効果ガス

大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体の総称。

※2 川崎市建築物環境配慮制度(CASBEE川崎)

川崎市が基本構想に掲げる「環境に配慮し循環型のしくみをつくる」という政策の基本方向に沿って、持続可能な建築物を普及促進するため、建築物の建築に際し、建築主に対して環境への配慮に関する自主的な取組みを促し、地球温暖化その他環境への負荷の低減を図ることを目的とした制度。

※3 BEMS(Building Energy Management System)

ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネルギー監視・制御を自動化し、建物全体の使用エネルギーを最小化するためのシステム。

 

お客さま紹介

川崎市 総務企画局 本庁舎等整備推進室 担当課長 丹波 文雄 氏(取材当時)
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本庁舎等整備推進室
担当課長
丹波 文雄 氏
(取材当時)
川崎市 総務企画局 本庁舎等整備推進室 担当係長 田口 洋平 氏(取材当時)
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本庁舎等整備推進室
担当係長
田口 洋平 氏
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川崎市 総務企画局 本庁舎等整備推進室 担当係長 菅野 大地 氏(取材当時)
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担当係長
菅野 大地 氏
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川崎市 総務企画局 総務部 庁舎管理課 (庁舎設備担当) 担当係長 石渡 朋巳 氏
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庁舎管理課
(庁舎設備担当)
担当係長
石渡 朋巳 氏
川崎市 総務企画局 総務部 庁舎管理課 (庁舎設備担当) 担当係長 鈴木 正人 氏(取材当時)
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総務部
庁舎管理課
(庁舎設備担当)
担当係長
鈴木 正人 氏
(取材当時)

川崎市役所本庁舎

  • 所在地/神奈川県川崎市川崎区宮本町1番地
  • 竣工/2023年6月
  • 概要/地下2階・地上25階+中間階免震構造。発災時には災害対策活動の中枢拠点に。

この記事は2024年07月に掲載されたものです。

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