アグリゲータ
電力の需要、供給に関するあらゆる情報を集め、電力需要の安定化に努める事業者の総称。
アグリゲータは節電の切り札
最近、よく聞かれるようになった「アグリゲータ」という言葉。これは電力の需要調整を行う事業者の総称で、電力ビジネスが進んでいるアメリカでは既に一般的な存在です。
通常、電力需要は深夜が最も少なく、日中にそのピークがきます。そのため、電力各社は電力設備をピーク時に備えて用意するのですが、ピーク時以外ではその設備が余剰設備となることが悩みの種でした。その解決に貢献しているのがアグリゲータです。アグリゲータは電力の需要家と電力会社の間に立ち、数多くの需要家をとりまとめ、その需要家全体としてのピーク時使用量の削減を約束し対価を得る事業者です。需要家と日中のピーク時使用量の削減策を策定・実施することにより刻々と変化する電力需要の安定化に努めます。しかも需要家側の調整努力に応じた対価を電力会社に求めて割引料金や優遇サービスを引き出すなど、需要家の調整意欲の向上にも努めています。
このように、様々な業種・業態の需要家を集め、電力需要の分散と抑制を電力取引契約ベースで成立させるなど、電力の需要調整をビジネスとして成立させています。そして、東日本大震災以後、構造的な電力不足に悩む日本もまたこのビジネスモデルに注目したのです。
2012年はアグリゲータ元年に
日本国内では、電力各社自身が大口需要家(契約電力500kW以上)に向けた需要調整契約があります。しかし、500kW未満の需要家はその対象外な上に、その利用状況の実態も料金徴収段階で初めて分かるというのが実情です。しかも約5万件とされる大口需要家に対し、50~500kW未満の小口需要家の数はその10倍以上の77万件はあるとされ、ピーク電力需要全体に占める割合も約1/3とかなり大きなものです。夏場の電力需要の抑制に伴う節電施策を実効性のあるものにするためにも、この小口需要家へのアプローチは欠かせないのです。
そこで経済産業省は、これまで大口需要家を中心に取り組んできた電力の需要調整を小口需要家にも拡大するため、電力需要の実態把握を可能にするビル・エネルギー管理システム(BEMS)とともにアグリゲータの導入促進を検討。2012年4月に21の事業体をエネルギー利用情報管理運営者(BEMSアグリゲータ※)として採択しました。これにより、小口需要家を対象に、需要家の節電・省エネ支援を事業化する環境が整ったのです。まさに、日本におけるアグリゲータ事業の幕開けです。
BEMSアグリゲータは小口需要家に節電や省電力のノウハウを提供し、時には指導を交えながらピーク時の電力需要の抑制を促し、さらには年間を通した消費電力低減に取り組みます。一口に小口需要家といってもその業種・業態は多岐にわたり、電力使用量や時間、依存度など、需要家ごとに異なる事情も抱えています。アグリゲータはそうした個々の状況を正確に把握し、需要家に対して節電や省エネ活動へ意欲的に取り組ませる魅力的なプランを提案しなくてはなりません。しかも登録されたBEMSアグリゲータは21事業体もあるため、需要家にとっては複数のアグリゲータの提案内容を比較・選択できるというメリットもあります。
また、東京電力も契約電力500kW未満の需要家を対象に、電力消費量の抑制に応じて電気料金を低減するサマーアシストプランを用意しています。アグリゲータはこうした電力各社の施策を活用するとともに需要調整の成果を原資に、さらなる優遇措置を引き出すなど、需要家の節電・省エネ活動を強力にサポートしていくことも期待されます。経済産業省の呼びかけから始まった日本のアグリゲータ事業ですが、今回採択されたBEMSアグリゲータはそれぞれの専門性をいかに発揮し、需要抑制に取り組んでいくのでしょうか。日本型アグリゲータの将来像を見定める意味でもその成果に注目が集まります。
※ BEMSアグリゲータ
中小ビルなどにBEMS(Building Energy Management System)を導入するとともに、クラウドなどによって自らBEMS集中管理システムを設置し、事業者に対しエネルギー管理の支援サービスを行うものとして、一般社団法人「環境共創イニシアチブ(SII)」からSII登録を受けた者、またはコンソーシアム。
この記事は2012年08月に掲載されたものです。