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ビッグデータ

様々な事象や活動から生成、蓄積されたデータ。多量、多様性、高頻度性という特性を備え、その分析によって社会や産業に有益な知見を導き出すことが期待されている。

マンガ:湯鳥ひよ/ad-manga.com

データから傾向や因果関係を導き、業務の質や効率性を高める

毎日の生活や仕事に欠かせないものになったインターネット。国内でもスマートフォンの保有率※1が50%を超えた今、外出時にネットで地図情報や天気予報を調べたり、家族や友人とSNS※2で連絡を取ったりすることは、日常の風景になりつつあります。

こうした中、新聞や雑誌などをにぎわしている言葉が「ビッグデータ」です。一種の流行語で明確な定義はありませんが、一般的に多量(Volume)、多様性(Variety)、高頻度性(Velocity)という三つの特性を備える情報資産※3と認識されています。

ビッグデータが注目される理由は、「社会や産業に有益な知見を導き出せるのでは」という期待の高さにあります。スマートフォンに代表されるデジタル機器が爆発的に普及し、そこで生まれる様々なデータを伝送、蓄積、処理するITシステムの性能も高まっています。大量のデータを分析で きる環境が整ってきたわけです。そのデータから一定の傾向や法則、因果関係を割り出し、高い精度で予測できるようになれば、様々な分野で業務の効率や質の向上に結びつくと考えられます。

これまでデータ分析といえば、製品在庫や売上実績など、表組みで管理できるもの(構造化データ)を対象としていました。しかし現在ではメールやSNSの文章、音声や写真、ウェブページの閲覧履歴(アクセスログ)など、多様なデータが続々と生まれ、蓄積されています。このような非構造化データを分析する試みが活発なのも、ビッグデータの特性を踏まえた動きといえるでしょう。雑多なデータから情報や意味を抽出すれば、分類や比較、ほかのデータと組み合わせた分析が可能になり、知見に昇華する道が開けるのです。

ビッグデータの代表的な活用例に気象情報サービスが挙げられます。民間気象会社は気象庁から提供される膨大な観測データを分析し、天気のほか、気温や降水量、風や波の高さといった詳しい予測情報を顧客に提供しています。さらに顧客から独自に集めた“空模様”などの情報も活用し、局所的・突発的に起こる豪雨や大雪の予測などに役立てています。こうした気象予測の確度が高まれば、自治体の防災活動、建築や農業、鉄道運行などで事前に適切な対策が講じられ、業務の確実性や安全性、効率性に貢献できるようになるでしょう。

ビッグデータの活用には業務知見を持つ人材も重要

企業がデータを業務改善に活用することは、ITシステムの導入当初から続けられてきました。ビッグデータは、そうした取組みの延長線上にあるもので、従来の知見 やノウハウを高度化し、それを顧客にタイムリーに提供することが競争力確保のために欠かせなくなっています。

例えばビル管理の分野では、BEMS※4で集めたエネルギーの使用実績データを分析し、エネルギー消費を適正化する取組みが進んでいます。今後はBEMSの 普及に伴って増加するデータを活用し、エネルギーの使用動向の変化を捉えながらデータ活用の場面に合わせた分析の精度を高めていくことが価値向上のカギになります。

ビッグデータを有益にするには、データ分析の成果を意思決定に適切に反映できる人材や組織づくりも重要です。解決・改善すべき課題を設定し、必要なデータを収集・分析するそれぞれの段階で的確な判断が必要とされ、実務経験に裏打ちされた業務知見が欠かせないからです。豊富な業務知見を有する企業と、高度なデータ分析技術を持つITベンダーとが協業し、ビッグデータ活用を深める動きも活発になると予想されます。

今後もウェアラブル(着用型)機器の普及や、ICタグ、センサなどの技術革新によって“Internet of Things(モノのインターネット)”の世界が広がるにつれ、ビッグデータの重要性は一層高まるでしょう。それが“宝の山”になるかどうかは、企業の取組み方にかかっているのです。


※1:スマートフォンの保有率
出典:『平成26年版情報通信白書』(総務省) 「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)より
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc141110.html

※2:SNS
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service)の略。メッセージや写真などのやりとりを通じて、個人間で交流できるサービス。代表的なものにTwitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)がある。

※3:三つの特性を備える情報資産
米国大手調査会社であるガートナー社が提案した「3V」の説明モデルに基づく。最近では、正確さ(Veracity)や価値(Value)という特性を加えた議論もなされている。

※4:BEMS(Building Energy Management System)
ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネルギー監視・制御を自動化し、建物全体のエネルギーを最小化するためのシステム。


この記事は2015年10月に掲載されたものです。