HOME > アズビルについて > 会社PR > A to Z > ダイアフラム

ダイアフラム

伸縮性および弾性を備えた、金属やシリコンなどを素材とする薄い隔膜のこと。圧力センサや温度センサ、加速度センサなどの様々な機器の多くは、この隔膜の物理的な状態変化を捉え、その変化量を電気信号に変換するという仕組みによって各種の計測を行っている。

マンガ制作:株式会社シンフィールド

物理的な変化を電気信号に変換、様々な機能を実現する重要な機構

私たちの日々の暮らしに欠かせないツールとなっているスマートフォン。単に電話をかけるだけでなく、インターネットから情報を入手するツールとして、また目的地へのナビゲーションや、写真や動画の撮影など、様々な機能を利用することができます。そういった機能を実現するために、多種多様なセンサが重要な役割を担っています。スマートフォンの中には物体にかかる動きを検知する加速度センサや物体の傾きを検知するジャイロスコープ、方向を知るための磁力計といった各種センサが搭載されています。

このような多くのセンサに広く使われているのが「ダイアフラム」です。ダイアフラムは薄い隔膜のことを指し、外力により変形し、力を除くとまた元の状態に戻る性質、つまり「弾性」を備えています。このダイアフラムの弾性を利用して、力がかかった際の膜の物理的な状態変化を捉え、その変化量を電気信号に変換するというのが、ダイアフラムを用いたセンサの仕組みです。

最適な素材を選択し適用することがセンサ開発の道を切り拓く

ダイアフラムの活用例として身近なものにマイクロホンが挙げられます。マイクロホンの一方式であるシンプルなダイナミック型のマイクロホン(ダイナミックマイク)を例にとると、マイクに内蔵された永久磁石内の可動コイルに振動板としてダイアフラムが取り付けられています。音波によってダイアフラムが振動すると、その振動でコイルが動いて電流が発生し、電流の変化が音響信号となって接続されたアンプなどに送られるという仕組みです。

こうしたダイアフラムの物理的変化量を信号に置き換えるという仕組みは、気体や液体といった流体の圧力を計測する圧力センサにおいても同様です。例えば、真空環境下と空気中では気圧が異なり、水中でも水量などにより水圧が変わります。センサの受圧部に張られたダイアフラムがそうした圧力を受けることによりたわみが生じ、その物理的なたわみを抵抗や容量などの電気信号に変換して圧力を計測します。

こうしたセンサにおいては、ダイアフラムの膜を形成する素材も計測対象や用途によって異なってきます。ダイナミックマイクであれば、振動や衝撃に強く、防水性に優れたマイラーフィルムと呼ばれるポリエステル系素材が多く、圧力センサなら、状態変化に対する応答性や寿命、耐腐食性などの要件に合わせて、ステンレスなどの金属、あるいはシリコンといった素材が選択されています。先進的なセンサではサファイアを用いているものもあり、そうした用途に応じた最適な素材を選択していくこともセンサ開発における大きなテーマの一つであるわけです。

目に見えないところで活躍、暮らしの中にあるダイアフラム

このようにダイアフラムは、様々なセンサに搭載され、スマートフォンやマイクロホンに限らず、私たちの身の回りの多様な場面で活用されています。特にスマートフォンへのセンサ類の実装には、微小な電気要素と機械要素を一つの基板上に集積するMEMS*1技術が活用されています。つまり、1メートルの100万分の1に当たるマイクロメートルという加工精度で作られた小型デバイスの中のダイアフラムに生じるたわみの量を、抵抗や容量変化に変換して計測を行うといった精密な機構が実現されているわけです。

また自動車にも、エンジンやブレーキ、タイヤといった駆動部から、エアバッグやリクライニングシートといった車内装備に至る数多くの箇所に圧力センサが利用されています。さらに家庭内に目を向けると、例えば風呂のお湯張りにダイアフラムが活用されているケースもあります。お風呂の湯が一定の量に達すると自動的に止まるのは、浴槽に備え付けられた圧力センサが水圧によってたわむことがきっかけとなっています。そのほかにも、エアコンや冷蔵庫といった家電製品に用いられている気圧センサ、さらには血圧計やガス・水道メーターなどの機器においても内部にダイアフラムが搭載されたセンサが組み込まれていたりと、ダイアフラムが随所で働いているのです。このように私たちは、日常生活や社会活動の様々な場面で、ダイアフラムの働きによる恩恵を受けています。目に見えないところで人知れず私たちの暮らしを支えてくれている“縁の下の力持ち”。ダイアフラムはまさにそんな存在なのです。

なお、ここでは特にセンサの受容部に用いられるダイアフラムにフォーカスして説明してきましたが、例えば人間の横隔膜や、建築において鉄骨の柱と梁(はり)を接合する板のことも同様にダイアフラムと呼ばれており、その定義や概念が業界や分野によって異なるということも最後に付け加えておきます。



*1:MEMS
半導体製造技術を基にした微細加工技術などを応用し、センサ、電子回路などの機械要素部品を集積させた超小型デバイス。

この記事は2024年10月に掲載されたものです。