セーフティアセッサ
製造現場の安全を確保するために、国際安全規格に基づいて、安全設計や安全防護の妥当性を評価する安全資格取得技術者。
「人間は過ちを犯すものだ」を前提に製造現場の安全基盤の構築を目指す
機械設備や生産システムが稼働する製造現場には、巻き込まれ、切断、感電、転落、爆発など様々な危険源が潜んでいます。日本国内においては、労働安全衛生法が1972年に施行されて以降、労働災害の被害者は減少傾向にありますが、それでも製造業における労働災害による死亡者数は2010年だけで211人に上っています(厚生労働省労働基準局報告)。
生産のグローバル化が進む現在、製造現場の安全をより確実なものにするために、ISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準会議)が定めた国際安全規格に基づいて、安全設計や安全防護の妥当性を的確に評価し、安全確保の方策を適切に指導する安全資格取得技術者「セーフティアセッサ」の役割に注目が集まっています。
これまで日本の製造現場では、安全の確保は主に作業者に対する教育や訓練を徹底することによって実施されてきました。しかし、安全確保を作業者任せにするこうしたやり方では、慣れなどによるミスまで完全になくすことはできません。
一方、言語や文化の異なる自国以外の労働者を多く受け入れてきた欧州では、早い段階から、「人間は過ちを犯すものだ」という考え方を前提にして製造現場の安全確保に取り組むようになりました。
その結果、機械や生産システムそのものの安全性を設計段階から考慮した本質安全設計をはじめ、リスクアセスメント※や安全防護などを実現するための規格が、罰則を伴う強制規格として整備されました。そうした背景の下で、日本における規格に精通したセーフティアセッサを育成す べく資格制度が誕生したわけです。
「隔離」と「停止」の原則を徹底し“危険源”から作業者を守る
日本国内においても、グローバルに通用する製造現場の安全確保が重要であるとの認識が広がり、一般社団法人 日本電気制御機器工業会(NECA)が経済産業省の補助事業として「セーフティアセッサ資格認証制度」を2004年にスタートさせました。既に、2011年までに4,147人の資格取得者が誕生しています。
セーフティアセッサ制度の基盤を成す安全確保の考え方とはどのようなものなのでしょうか。
そもそも事故の多くは、人が危険源と接触することによって発生します。これを防ぐためには、人と危険源を物理的に分離することです。具体的には、危険なエリアに人が入らないようにするガードなどを用いた「隔離の原則」、そして人が危険なエリアに入ったら即座に危険源を停止させる「停止の原則」を徹底することです。こうした状況を的確に評価し、安全指導を行うのがセーフティアセッサの役割なのです。
セーフティアセッサの資格は3段階に分かれています。1つ目は、基本安全規格のISO 12100を正しく理解した上で、リスクアセスメントを実施し、カテゴリに適合した安全機器を選定できる「セーフティサブアセッサ」。2つ目は、その能力に加えて、現場の運用状況を調査・確認して安全提案や安全説明会を実施し、ISOやIECの個別の安全規格について的確に説明できる「セーフティアセッサ」。そして3つ目は、さらに、第三者の立場 で安全性の妥当性を総合的に判断し、コンサルティングを実践できる「セーフティリードアセッサ」です。
これらは現時点では業界の認定資格ですが、製造現場の安全性を高めるという観点から、国家資格への格上げが期待されています。
※リスクアセスメント
作業における危険性または有害性を特定し、それによる労働災害(健康障害を含む)の重篤度(被災の程度)とその災害が発生する可能性と、そのリスクの大きさを具体的に評価する。
この記事は2013年02月に掲載されたものです。