HOME > アズビルについて > 会社PR > 会社紹介資料 > azbil Technical Review > 2017 > 戸建住宅向け全館空調VAVシステムの開発

戸建住宅向け全館空調VAVシステムの開発

キーワード:全館空調,空調制御,ダンパ,可変風量制御,省エネ,快適性,通信配線,施工性改善

戸建住宅向け全館空調システム「きくばり™」を対象とし、各室の風量を室温と設定温度に応じて自動制御できるVAV(Variable-Air-Volume)システムを開発した。本システムは、各室風量制御用のVAVダンパ、VAVダンパを制御するVAVコントローラ、各室温度設定用のVAVリモートコントローラ、独自の空調制御アルゴリズムを搭載した空調コントローラから構成され、住宅の熱負荷の変動が大きい場合や居住者の温度ニーズが多様な場合でも快適な温度環境を提供する。加えて従来「きくばり」比25%以上の省エネルギー化を実現した。

1.はじめに

戸建住宅向け全館空調システム「きくばり」は1システムの空調機を用いて家全体を冷房,暖房,換気,空気清浄,除湿することが可能で,廊下や脱衣所も含めた温度のバリアフリーを実現し,ヒートショックの原因となる住宅内の温度差を軽減できる。一方で,外出からの帰宅直後や個人の好みなどで,特定の部屋のみ空調を少し強くしたいケースや,長期間使用しない空き部屋に対しては冷暖房を停止したいケース,といったライフスタイルに合わせたニーズも顕在化してきている。

これらのニーズに対応するため,オフィスビルの空調制御などで採用されているVAVシステムを住宅向けに応用した,戸建住宅向け全館空調VAVシステムを開発した。本開発においてVAVシステムを住宅向けに適した仕様として実現するために,住宅に設置する際の施工性や,設置後のメンテナンス性も重視した製品設計を行った。

以降,2章で全体のシステム構成,3章以降で機能や施工性,メンテンナンス性の向上を支える個々の技術について紹介する。

図1 VAV制御 全館空調システム

2.システム構成

2.1 機能概要

今回開発した戸建住宅向け全館空調VAVシステムの住宅内における配置を図1に,またシステム構成機器間の接続関係を示したブロック図を図2に示す。室内機から送出される空調用の空気は,風道となるダクトを介して各部屋のVAV吹出し口から排出される。各VAV吹出し口には,今回住宅向けに新規開発したVAVダンパと,VAVコントローラが設置されている。また,VAVコントローラには,各部屋の温度設定インターフェースや,室温センサを搭載したVAVリモートコントローラ(以下,室内リモコン)を接続できる。通常,室内リモコンは1つのVAV吹出し口につき1台取り付けるが,容積の大きいリビングなど1部屋に複数のVAV吹出し口を設ける場合には1台のリモコンで連動制御することにも対応している。

各室内リモコンでユーザーが指示した設定温度や,温度センサで計測した室内温度は, 各VAVコントローラを介して,システム全体の温度要求を集中管理して制御指示を行う空調コントローラに収集される。各室からの熱要求に基づき,本システム用に開発した制御アルゴリズム(3章にて説明)によって,各部屋の温度が設定通りになるよう,各吹出し口のダンパ開度および室内機の温度・風量設定を制御している。

2.2 配線施工性の改善

戸建住宅の全館空調VAVシステム普及には,材料費のコストダウンだけでなく,設置工事での作業性も重要である。特に配線工事のコストダウンを図るために,各コントローラへの電源供給には低電圧の直流給電方式を採用し,天井内へのAC100Vコンセント設置工事を不要とした。また,各VAVコントローラ間の通信には,高い信頼性を要求される工業分野で多くの実績がある,CRC(Cyclic Redundancy Check)によるエラー検出と,差動伝送方式の物理層を備えた工業用通信方式を採用している。

本システムは住宅内で使用される機器であることを配慮し,安全性への配慮と,放射ノイズを削減するために,回路設計と制御方式の両面からシステム全体の低消費電力化を行っている。

回路設計においては,低消費電力のマイコンと高効率スイッチングレギュレータを採用し,また回路中のスタティックな電流消費を抑えるよう回路を最適化することで,VAVコントローラ基板における定常時の消費電力を削減している。

制御方式による低消費電力化対策としては,システム全体のピーク電力削減に配慮した。VAVダンパを動作させる際にモータ駆動が必要となるが,風圧を受けたダンパを回転させるだけのトルクを供給するためには多くの電流供給が必要である。各VAVダンパが独立動作して非同期で動作するシステム構成では,多数の吹出し口でVAVダンパが同時動作するケースが生じうる。この場合では,モータへの駆動電流供給のタイミングが重なってしまい,その結果大きな電流を供給できる電源回路が必要となってしまう。これはコストのみならず,放射ノイズを抑制する観点からも望ましくない。そこで今回のシステムでは,空調の制御周期に大きな影響がないよう通信速度を高速化し,住宅内に存在する複数のダンパ開度を空調コントローラから集中制御(時分割制御)することで,VAVダンパが動作する際のモータ同時動作数を大幅に抑制した。VAVダンパ台数を4台に簡略化したケースでの,ピーク電流抑制効果を図3に示す。この制御方式により,システム全体で要求されるピーク電流値を,非同期制御した場合に比べて約1/5以下に削減した(VAVダンパ接続台数が最大(16台)の場合)。

これらの低消費電力化や放射ノイズ抑制を行うことで,各VAVコントローラ間の電力・制御信号の伝送を,汎用的な屋内配線用4芯ケーブルのみで実現し,配線敷設にかかるコストを削減した。表1に今回開発したVAVシステム仕様を示す。

図2 システム構成ブロック図

図3 ピーク電流抑制

表1 システム仕様

項目仕様
機器接続台数吹出し口数16台 max
室内リモコン16台 max
VAV制御電力
(16台接続,空調機電力除く)
15W typ.
許容総配線長200m max (亘長40m max)

3.VAVダンパ

小型・ローコストとメンテナンス時の容易な着脱を実現するために,構造の簡素化を追求したVAVダンパを開発した。

3.1 構造と特長

一般住宅では,ビル空調と異なりメンテナンス時に天井裏へのアクセスが困難であるため,室内からアクセス可能な場所にVAV吹出し口全体を設置する必要がある。よって,天井裏に設置され室内に開口しているVAV吹出し口のダクトカラー(ダクトが接続される管)内にVAVダンパを着脱可能な状態で設置できる構造とした。図4に,ダクトカラーに取り付けられた状態と取り外した状態のVAVダンパの写真を示す。

ビル空調用のVAVダンパでは,一般的にダクトの管壁に回転シャフトを貫通して設置されたバタフライバルブが使用され,ダクトの外側からモータをシャフトに接続して動作させている。しかし,それではダンパの取り外しができないため,ダクトカラー内にネジ2本で着脱できるL字形のベースブラケットを用意し,ダンパ回転ガイドと駆動部などの全部品をそのブラケットに集約して構築するアズビル独自の構成とした。ダンパは,開閉のために90°程度回転できれば十分なので,ダンパ中央部とベースブラケットをヒンジ構造で接続したシンプルな回転ガイドとした。この構造では,従来品のように管壁の回転軸受け部における気密が必要ないため,低摩擦(低トルク)で動作できるというメリットも得られる。また,L字形のベースブラケットのもう1つの辺には,コンパクトなギアヘッド付ステッピングモータを取付け,リンク機構によりダンパを開閉する構造とした。これらの部品は,できるだけ空力抵抗が大きくならないように配置されている。ステッピングモータは,電圧パルスによるオープンループ制御のみ(角度センサ無し)で容易に正確な角度設定が可能なため,簡素な構成にできる。なお,モータは,風力により発生するダンパトルクに対して十分余裕のある動トルクを持つとともに,開度を変化させるときのみ電力を供給する省エネ駆動をさせるため,電源オフ時にも風力に対してダンパ開度が保持できるようなディテントトルクを持つものを選定した。

さらに,ビル空調用のVAVダンパでは,ダンパ全閉時にシール構造でダンパを完全に閉め切って風量をゼロにするようになっているが,高気密住宅では,非温調時も常に換気が必要であるため,全閉時のダンパ板の外周とダクトカラー内壁との間に所定の隙間を形成することで締切機構を不要にした。これにより,構造の大幅な簡素化が実現できたとともに,誤って全閉してしまったときでも必要な換気量を確保できるフェールセーフ構造も得られている。なお,ローコスト化のため,従来のビル空調用VAV吹出し口で必須となっている風量センサを排除し,次章で説明する風量予測制御で対応している。これらの結果,構成部品が少なく非常にコンパクトでシンプルな構造にすることができ,ダンパ全開時の空力抵抗が小さく,圧損の小さいVAVダンパを実現した。

図4 VAVダンパ

図5 システム構成ブロック図

3.2 仕様

主な仕様を以下の表2に示す。φ150(呼び径)のダクト専用となっており,一般の全館空調住宅に対応した仕様になっている。

表2 ダンパ仕様

接続ダクトφ150 (呼び径)
風量範囲10~200 m³/h
全開時の圧損10 Pa以下 @200m³/h
使用温度範囲-5~50℃
使用湿度10~95%RH 結露なきこと

4.制御アルゴリズム

本システムではVAVダンパとVAVコントローラから成るVAV吹出し口と室内リモコンを設置することにより,風量の操作と設定温度と室内温度の取得ができるという特長がある。これにより,部屋単位での室内温度の制御を実現した。空調機の吹出し空気をVAVダンパにより適切に分配することで,同じ設定温度を設定した部屋間の温度差をなくすことや,異なる設定温度を設定した部屋間に温度差をつけることができる。また各部屋の熱負荷の変動や設定温度の変更による干渉を抑制し,各部屋に必要な風量のみを供給する事で省エネ性を向上させている。

本章では2つの制御アルゴリズムについて説明する。基本となる温度制御は,風量の変動に対してフィードフォワード補正をしたPID制御(風量予測制御)である。もう1つは,温度ムラの解消と省エネルギーのために温度の高い部屋と低い部屋の空気を交換する制御(循環制御)である。

4.1 風量予測制御

VAVダンパを制御する一般的なビル空調用VAVコントローラは,上位システムから要求風量を入力されダンパ開度を変更することで風量を調整する機能を持つ。VAVダンパの上流静圧が既知であればダンパ開度は一意に定まるが,上流静圧にはいくつかの変動要因がある。上流静圧の変動がVAVコントローラの風量制御では外乱となる。

ダクトシステム特有の外乱に「他の部屋の風量の変動」がある。空調機から吹出した風をチャンバで分岐して各部屋に送る構造のため,各吹出し口はチャンバを介してつながっている。よって各部屋の風量が他の部屋の風量と相互に干渉しており,熱負荷の変動や設定温度の変更によって1つの部屋の風量に変動があると,その他の部屋の風量に影響が波及する。

また他にも「空調機の風量設定の変更」もVAVコントローラの風量制御の外乱となりえる。「空調機の風量設定の変更」によって空調機の静圧-風量特性が変化し(1),全部屋の風量に影響が生じるためである。

一般的なビル空調用のVAVコントローラでは,これらの影響を取り除くために目標値を要求風量,入力を風量センサの計測風量,操作量をダンパ開度としたフィードバック制御が搭載されている。しかし本アルゴリズムでは各部屋の要求風量から,他の部屋との相互の影響と空調機の風量設定を考慮したフィードフォワード補正を追加して,VAVコントローラに風量フィードバック制御を搭載せずに外乱の影響を取り除いている。

風量予測制御の概要図を図5に示す。風量予測制御は次の3段階からなる。

(1) 部屋ごとに目標値を設定温度,入力を室内温度,操作量を要求風量としたPID演算を行う。

(2)(1)で計算した要求風量の合計値から空調機の送風ファン圧力を推定する。

(3)(2)で推定した送風ファン圧力と(1)で計算した要求風から,部屋ごとのダンパ開度を導出する。

空調機の仕様より風量設定ごとの空調機の静圧-風量特性は既知であるので,空調機の吹出風量が定まれば送風ファン圧力を計算できる。簡単のため,各部屋の要求風量は空調機の風量供給能力の範囲内にあるとする。(1)で求めた要求風量の合計に応じた風量が空調機から流れたと仮定すると,空調機の風量設定と静圧-風量特性から室内機の送風ファン圧力を推定できる。一方で,各部屋の要求風量が空調機の風量供給能力の範囲を超える場合は,合計風量を空調機の風量供給能力の上限値以下に収まるように補正して同様の計算を行う。この送風ファン圧力の推定で「他の部屋の風量の変動」と「空調機の風量設定の変更」の影響を,以降のダンパ開度の計算に反映している。

VAVダンパの各開度における静圧-風量特性は,既知である。VAVダンパの静圧-風量特性を開度ごとに近似することで,VAVダンパの抵抗-開度特性を求めることができる。室内機の送風ファン圧力と要求風量とダクト抵抗からVAVダンパに要求される抵抗は求められるので,VAVダンパの抵抗-開度特性より,要求風量を実現するダンパ開度が導出できる。

風量予測制御の例を図6に示す。部屋Aが温度達成したため風量が減少した場合の動作を示している。部屋Aの要求風量が減少することにより,VAVダンパは閉まり,空調機の送風ファン圧力が増加することが推定できる。圧力の増加が推定されたため,他の部屋はVAVダンパを閉めて風量を維持している。

図6 風量予測制御の例

風量予測制御の効果確認を行った結果を表3に示す。これは,対象部屋の要求風量を60 m3/h に固定し,他の部屋の要求風量を変動させた際に導出されるダンパ開度と測定風量を示している。対象とする部屋以外の合計要求風量が減少するとVAVダンパが閉じ気味になり,風量を維持する動作をしていることが分かる。

表3 風量予測制御で導出されるダンパ開度と測定風量
(対象部屋の要求風量を60 m3/h に固定した場合)

対象部屋以外の合計要求風量[m³/h]ダンパ開度 [°]測定風量 [m³/h ]
9604959
7804455
6904259
5103856
4203769
2403570

4.2 循環制御

循環制御とは,空調機の熱交換を用いずに,室内温度よりも設定温度に近い空気を部屋に送り込むことにより室内温度を制御する方法である。空調機のヒートポンプを稼働させないので省エネルギーである。

暖房を例に原理を説明する。暖房では室内温度よりも温度が高い空気(暖気)を供給して対象の部屋を暖めている。通常の個室エアコンにおいて,暖気は熱源機によって作り出さなければ存在しない。しかし全館空調においては,暖気が空調機の近くや他の部屋に存在する場合がある。これは各部屋の設定温度の違いや日当たりなどの影響によって部屋ごとに温度状況が異なるためである。この他の部屋に存在する暖気を対象の部屋に供給すれば,空調機の熱交換を用いずに室内温度を上げることができる。また日当たりなどの影響によって室内温度が設定温度を超過する部屋では,より設定温度に近い温度の空気を供給することで,室内温度の超過を抑えることができる。このような熱の循環は個室エアコンではできないメリットである。

循環制御の例を図7に示す。部屋Aは室内温度24度で設定温度23度を超過しており,部屋Bは室内温度22度で設定温度23度を未達である。ここで空調機の還気温度が23度と双方の部屋の設定温度に近い温度である。そこで,空調機から23度の空気を双方の部屋に送り,空調機を経由して2つの部屋の空気を循環させる。これにより部屋Aの室内温度は下がり,部屋Bの室内温度は上がり,室内温度が設定温度に近づく。

図7 循環制御の例

5.快適性・省エネ性の検証

今回開発したシステムの検証は,まず,外乱の少ない屋内仮設ブース環境で基礎実験を行った上で,実際の住宅と同じ建築構造を持つazbilグループの研究施設「空気と暮らしの研究所“azbilハウス”」(図8 )(2)に,本VAVシステムの関連機器をすべて設置してデータ計測および各種機能テストを行った。快適性,省エネ性の観点から,以下に検証実験結果を示す。

図8 azbilハウス

5.1 快適性

快適性の評価には様々な手法があるが(3),特定のエリアに対してユーザーの希望した温度条件を,短時間で正確に実現できることは快適性が高いと考えられる。ここでは全館空調VAVシステムの特長である,個室ごとの温度を変更できる機能について検証した実験結果を示す。全館温度一定の状況から,特定の1部屋だけ設定温度を一定時間ごとに変更していった場合の,各部屋の温度計測結果をグラフ化したものを図9に示す(部屋間の温度差は,ヒートショックを生じない範囲を想定している)。

図9 VAV全館空調の快適性検証

この結果より,特定の1部屋(主寝室)だけ,−1℃ごとに温度設定通りに変更される一方,他の部屋は当初の設定温度付近を維持していることが分かる。また必要最小限の部屋容積のみを空調するため,一般的な全館空調の温度変更能力(約1℃/h)より短時間で,ユーザーの望む快適な設定温度に変更できる性能を有していることも確認できる。

5.2 省エネ性

全館空調VAVシステムの特長として,一部の部屋を省エネ運転にすることや,未使用の部屋を温調OFFすることが可能である。これは空調電力の省エネ化に大きく貢献できる。この省エネ効果を確認するために,一般家庭での通勤・外出・就寝などの日常行動パターンを用いて,従来の全館空調システムと,今回開発した全館空調VAVシステムで個室ごと省エネ設定を行った場合との消費電力比較を行った。使用した一般家庭の日常行動パターンとしては,建築環境・省エネルギー機構(IBEC:Institute for Building Environment and Energy Conservation)が定める,省エネ法における「住宅事業建築主の判断基準」(4)にて定義された「部分間欠運転スケジュール」を用いた。この結果を図10に示す。図中A棟が従来の全館空調システム,B棟が今回開発した全館空調VAVシステムの結果を示し,全館空調VAVシステムのほうが,約33%の省エネルギーを実現している。

VAVシステムを搭載していない従来の全館空調では,全館一括のスケジュール設定が可能なものもあるが,個室ごとのスケジュールは実現できないため,居住者ごとで個人差のある空調ニーズには対応できなかった。今回開発したシステムでは,各部屋ごとに一時的に空調を弱めるECOボタンや,部分的に空調停止するための空調オフ機能を実現している。この結果,エアコン同等の簡単な操作性をユーザーに提供でき,全館空調の快適性と省エネ性を向上させている。なお,空調利用の少ない時期も配慮した,通年の電力シミュレーション(AE-Sim/heat使用)では,全館空調VAVシステムは従来の全館空調と比較して,平均約25%以上の削減が見込まれる注1

図10 VAV全館空調の省エネ性検証

注1  [ 試算条件]AE-Sim/heatによる当社モデルハウスでの試算値,VAVなし:全館連続運転(4),VAVあり:部分間欠運転(4)(非空調室は設定温度2℃緩和,全館非空調時は換気のみ運転で消費電力80W),拡張アメダス気象データ(神奈川県辻堂)を使用,内部発熱:4.65W/㎡(顕熱のみ),COP値は当社きくばりsシリーズ4馬力定格値

6.おわりに

全館空調に対するさらなるニーズに応えるために,戸建住宅向け全館空調VAVシステムを開発した。これまでの全館空調では不可能だった個室ごとの温度制御の実現により, ①部屋ごとの温度設定変更による快適性向上,②不在時や未使用の部屋を空調抑制することによる省エネ効果というユーザーメリットを簡単な操作で提供可能にした。一方,多数の部屋を空調制御できる仕組みを提供することから,例えば,より高度なスケジュール運転を,簡単に分かりやすく設定できるユーザーインターフェースのニーズ増加も予想される。今後の計画としては,近年低価格化の著しいタブレット端末等を活用して,優れた操作性を提供しつつ,さらなる快適・省エネルギーを実現するためのシステム拡張を検討している。

<参考文献>

(1) 三枝隆晴 他,中小規模オフィスビルの空調ニーズに応えるセル型空調システムの開発,azbil Technical Review,Apr.2016,pp.47-53

(2) 岩田昌之,暮らしのさらなる安心・安全・快適を目指して~azbilハウスでの技術融合,azbil Technical Review,Apr.2013, pp.82-86

(3) 田辺新一,温熱環境の快適性評価,日本物理学会誌,1999, pp.440-448

(4) 住宅事業建築主の判断の基準におけるエネルギー費量計算方法の解説,財団法人 建築環境・省エネルギー機構(IBEC),2009,p53

<商標>

「きくばり」は,アズビル株式会社の商標です。

<著者所属>
森川 誠 アズビル株式会社 技術開発本部センシングデバイス技術部
松浦 友朋 アズビル株式会社 技術開発本部センシングデバイス技術部
地下 久哉 アズビル株式会社 技術開発本部センシングデバイス技術部
小貝 和史 アズビル株式会社 技術開発本部センシングデバイス技術部
上運天 昭司 アズビル株式会社 技術開発本部商品開発部
田中 裕造 アズビル株式会社 技術開発本部商品開発部

この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2017年04月に掲載されたものです。