熱量演算器 WJ-1203

savic-net™ G5 システムに接続可能な積算熱量計

1.はじめに

積算熱量計は、熱交換設備を通過する冷温水の流量と、冷温水配管の送り側、返り側の温度とを測定し、熱交換設備で消費される熱量を演算する製品である。アズビル株式会社では、1991年から中大規模建物用である積算熱量計の販売を開始し、WTYシリーズとして進化を続けてきた。近年、当社のビルディングオートメーションシステムはsavic-net™ FXシステムから新システムであるsavicnet™ G5システムへの移行をはじめた。本稿では、WTYシリーズの機能を継承し、savic-net G5システムに通信接続可能な新製品、熱量演算器(WJ-1203)を紹介する。

2.製品概要

熱量演算器(WJ-1203)は、特定計量器の範囲外である口径40Aを超える配管での熱量課金用途に使用することができる製品である。また、表示器(QJ-1203)を接続することで、設置場所で各計測値を確認することができるだけでなく、製品動作状態などの情報を確認することができる。

図1 熱量演算器構成図

2.1 特長

2.1.1 savic-net G5システムへの接続

熱量演算器(WJ-1203)はsavic-net G5システムにおけるプライマリデバイスであるジェネラルコントローラ(WJ-1111)および熱源アドバンストコントローラ(WJ-1102)との通信接続を実現することでスーパーバイザリデバイスである統合コントローラ(BH-101J0)での監視を可能とした。通信接続となるため省配線工事が期待でき、パルスカウントの計量ミスをなくすことができる。また、熱量演算器(WJ-1203)のsavic-net G5システムへ接続は、電気・水道・ガスなど異なる種類のメータの値を収集し、一定期間内の使用料を算出する機能をもつ集中検針が可能である。

通信方式はオープンプロトコルであるBACnet MS/TP、Modbus™に対応しており、用途に応じて使い分けることができる。そのため、BACnet MS/TP接続では当社のセカンダリデバイスとしては同一ネットワークでの一元管理ができる。また、Modbus接続は量水器、電力量計などの機器に多く採用されているため、同一ネットワークに各機器を接続した検針システムを構築することが可能であり、シンプルな設備管理を実現する。

2.1.2 エンジニアリング

BACnet MS/TPでの接続では、savic-net G5向けエンジニアリングツールにて、パラメータを遠隔から設定することが可能である。また、積算値のプリセット等熱量演算器のパラメータや通信等のパラメータはNFC(Near Field Communication)対応Android™端末に実装したアプリケーションのSmart Engineering Toolで設定が可能である。Smart Engineering Toolを利用することで事前にオフィスでパラメータを作成しておけば、製品本体へはAndroid端末をかざすだけでパラメータを一括ダウンロードすることができる。そのため、パラメータの設定間違いの低減、同一パラメータ内容機器へのパラメータ設定時間の短縮、帳票の管理の向上が期待できる。

2.1.3 フレキシブルな機能拡張

熱量演算器(WJ-1203)はsavic-net G5システムと接続しない場合でもスタンドアロンとして利用することができる。この場合、小型リモートI/Oモジュール(RJ-12)を別途手配し組み合わせることで、演算部の入出力機能が選択可能となり、現場に最適な入出力機能に拡張することできる。

図2 システム構成図

図3 機能拡張例

2.1.4 冷暖自動切替

小型リモートI/OモジュールのDIOモジュール(RJ-1202)を接続し、DI機能を利用することで冷房と暖房の切替を手動切替することができるが、送り側温度と返り側温度の大小関係から冷房か暖房かを自動で判別し、切り替える方式も選択できるようにした。この方式を選択することで省エネ計装での中温冷水(15℃程度の冷水)を活用した空調方式での冷水判断が可能となった。また、ヒートポンプを活用した空調ユニットの温水で冷房、冷水で暖房する計装でも冷暖の判断が可能となった。

図4 冷暖自動切替ロジック

2.2 最新のJIS(JIS B 7550:2017)準拠

2.2.1 計測精度

熱量演算器(WJ-1203)は特定計量器でないため検定対象ではないが、新JIS(JIS B 7550:2017)に準拠した性能を確保した。新JISに準拠させるための計測精度は、熱量演算器(WJ-1203)と体積計量部であるMagneW™3000(Model MGG□□)、感温部であるTY7840それぞれで精度を確保することで、各部を組み合わせた状態で検査をする必要がなく、それぞれを必要な時に手配できるようにした。

2.2.2 熱量換算係数の自動算出

従来製品(WTY8000)では熱量換算係数として30℃未満は4.186(冷房時)、30℃以上は4.123(暖房時)と固定値を使用している。しかしながら新JIS(JIS B 7550:2017)では国際法定計量機関の定める熱量換算係数(OIML R75)となったため、送り側温度及び返り側温度の計測値より温度計測毎の自動算出を採用した。

2.2.2 熱量換算係数の自動算出

従来製品(WTY8000)では熱量換算係数として30℃未満は4.186(冷房時)、30℃以上は4.123(暖房時)と固定値を使用している。しかしながら新JIS(JIS B 7550:2017)では国際法定計量機関の定める熱量換算係数(OIML R75)となったため、送り側温度及び返り側温度の計測値より温度計測毎の自動算出を採用した。

3.おわりに

今回、口径40Aを超える積算熱量計を開発し概要と特長を紹介した。今後40A以下の特定計量器の領域の積算熱量計が求められるため、必要追加機能を整理し、ビル市場における積算熱量計を本製品である熱量演算器でカバーし客先ニーズに対応していく所存である。

<商標>

savic、savic-net、savic-net FX、MagneWは、アズビル株式会社の商標です。
Androidは、Google LLCの商標です。
BACnet MS/TPは、ASHRAEの商標です。
ETHERNETは、富士ゼロックス株式会社の商標です。
Modbus is a trademark and the property of SchneiderElectric SE, its subsidiaries and affiliated companies.

<著者所属>
藤田 雄三 アズビル株式会社 ビルシステムカンパニー開発本部開発4部

この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2020年04月に掲載されたものです。