マルチベンダー通信に対応するIoTゲートウェイ 形 NX-SVG
1.はじめに
エンドユーザーのスマートファクトリー化ニーズを背景として、装置メーカーにおける装置のIoT化要求が高まっている。この要求に対し、通信プログラムの開発作業負荷および開発納期が課題となっている。さらにはIoTデータ収集対象となるデバイス種類、ネットワーク種類は拡大傾向にあり、様々な通信プロトコルに対応可能なマルチベンダー通信に対応したIoTゲートウェイへのニーズが高まっている。この需要に応えるため、形 NX-SVG(図1)を開発した。
形 NX-SVGは省スペース化を要求される装置にも組み込み可能なコンパクト設計を実現し、また、通信プログラム(通信ラダープログラム)が一切不要なうえ、かつ多種多様なデバイスとの通信を実現した。
①各社表示器 | ⑨小型デジタルマスフローコントローラ |
②CNC | ⑩エア管理用メータ |
⑧各社PLC | ⑪電力調整器 |
④計装ネットワークモジュール | ⑫デジタル指示調節計 |
⑤グラフィカル調節計 | ⑬プログラム調節計 |
⑥記録計 | ⑭デジタルマスフローコントローラ |
⑦インバータ、電力量計等 |
図1 形 NX-SVG
2.製品概要
形 NX-SVGに実装されたすべての機能は、装置開発者の開発労力を最小化することを目的としている。その特長について述べる。
2.1 特長
2.1.1 データレジスタtoデータレジスタの簡単設定
アズビル製機器ならびに各社のPLC(Programable Logic Controller)、CNC(Computerized Numerical Controller)、Modbusなどの通信プロトコルに対応している。形 NX-SVGでは通信伝文構築という概念ではなく、転送元デバイスのデータレジスタと転送先デバイスのデータレジスタを設定するだけで通信設定が完了する(図2)。異なる通信プロトコルの機器間であっても、データレジスタtoデータレジスタのエンジニアリング思想は同じであり、完全なプログラムレス通信(ラダーレス通信)を実現している。このエンジニアリング低減効果は絶大である。
図2 データレジスタtoデータレジスタ設定
2.1.2 通信異常の原因究明を支援する通信履歴機能
形 NX-SVGは、機器との通信異常が発生した場合、通信異常の履歴を内部に自動保存する。履歴には、発生時刻、通信異常を発生した下位機器の識別、下位機器から受信した通信エラーコード、読出/書込の識別、読み書きしたデータの値等が自動的に保存される。保存された履歴はPCで時系列データ(図3)として追跡することができ、開発時のデバッグ作業だけでなく、装置が出荷されたあとの通信トラブルの要因解析を強力に支援する。通信トラブル時の解析ができる製品とできない製品では、トラブル解決するまでの所要時間で非常に大きな差が出る。
図3 通信異常履歴データ
2.1.3 高信頼で強力な通信接続台数
形 NX-SVGはアルミ電解コンデンサをもたないため、周囲環境温度が変動しても製品寿命が変動しない。また、バッテリレスで停電保持可能な内部メモリを使用しており、バッテリなどの定期交換部品も存在しない。
LAN×2ポート、RS485×2ポートの計4つに通信ポートを装備し、LAN1/2には合計128台(Modbus TCPマスタノードを含めると最大136台)、RS485には合計62台の計198台までの機器を接続可能な強力な通信機能を非常にコンパクトなハードウエアで実現している。
製品の信頼性と性能はエンジニアの作業効率の改善に大きく寄与する。
2.2 アプリケーション適用例
連続式浸炭炉などの工業炉では、機械全体の管理を行うPLCを中心としてバーナコントローラ、温度調節計、CP(カーボンポテンシャル)演算器、マスフローコントローラ、マスフローメータ、インバータ(コンベア制御)、ガス分析計など多くの計測制御機器が利用される。従来はこれらの機器の中でも相互インターロックが必要な部分のみI/Oでリンクされていた。しかしながら装置IoTが望まれる現在においては圧倒的に情報量不足であり、意思決定にはオペレータの熟練度を必要とする。
一方、IoT化された装置では、各機器、センサはIoTゲートウェイを通じて自由に情報交換ができるようになる(図4)。各機器がもつ有益なより多くの情報を収集、相互演算することで以下のようなメリットが生まれる。
- 空気比の適正管理
- バーナー燃焼状態の可視化
- プロセスガスの流量適正管理
- 故障部位と故障要因の早期発見
- コンベアのトラブル予兆管理
- 予期せぬ失火の予兆検出
さらにIoT化が進むと、プロセス状態診断、燃焼状態診断、エネルギー診断、部品寿命予測など熟練オペレータが経験で判断していた高等技能を機械装置そのものがもち、自ら判断できるようになる。形 NX-SVGはこのようなIoT化された装置の中で、各計測制御機器からより多くの情報を収集し、PLC、表示器、ストレージデバイスに情報を送る役割を果たす。
①各社PLC | ⑥デジタルマスフローコントローラ |
②各社表示器 | ⑦排気ブロア |
③インバータ | ⑧送気ブロア |
④デジタル指示調節計 | ⑨コンベア |
⑤バーナコントローラ |
図4 工業炉IoT
3.おわりに
今回、形 NX-SVGの概要と応用事例を紹介した。今後、需要が多くなるであろうOPC UA、EtherNet/IP、さらなる対応PLC機種追加(通信プロトコル追加)などを計画し、通信接続のバリエーションを増やすことで、ユーザーの通信プログラムレス対応が可能な機器の範囲をさらに拡大させる予定である。
さらには、形 NX-SVGに特殊な演算機能を追加したエッジ・コントローラ製品などに発展させていく予定であり、ユーザーのIIoT(Industrial IoT)ニーズに対応していく所存である。
<商標>
Ethernetは、富士ゼロックス(株)の商標です。
Modbus is a trademark and the property of Schneider Electric SE, its subsidiaries and affiliated companies.
EtherNe/IP™は、ODVAの商標です。
OPC UAは、OPC Foundationの商標です。
<著者所属>
牧野 豊 アズビル株式会社 アドバンスオートメーションカンパニー CPマーケティング部
この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2020年04月に掲載されたものです。
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