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特集に寄せて:多様性と一体感でイノベーションを起こす

アズビル株式会社
執行役員常務
azbilグループ研究開発担当
西本 淳哉

IoTという言葉は今ではすっかり定着しました。AIも何度目かのブームと言われています。しかしながら、アイ・オー・ティやエー・アイを呪文のように唱えるだけで道が開けるわけではありません。ことの本質を良く見極める必要があります。

アズビルはこれまでイノベーションによって難局を打開してきました。例えば、インターネットが世に出る10年以上前、1984年に通信回線経由で顧客のビル空調を遠隔制御する総合ビル管理サービスBOSSTMを開始しました。昨今、ディマンドリスポンスやネガワット取引きが注目を浴びていますが、アズビルはビルを対象にオンライン、リアルタイムでこれらを実現する取組みをいち早く開始しています。このサービスもBOSSの仕組みが土台となっています。「ソリューションで顧客に貢献する。これをリモートで行う」。このコンセプトは、インターネットやクラウドサービスの先駆けであったと言えます。まさに、技術的にもビジネスモデル的にも大きな成長をもたらすものでした。

MEMSへの投資も思い切ったものでした。1986年にクリーンルームを整備し、マイクロフローセンサTMの開発に着手しました。最初の製品が上市されたのは1994年ですので、まさに苦節十年だったわけですが、今や、ここから生み出されるマイクロフローセンサ、ピエゾセンサ、サファイアセンサなどは、アズビルならではの付加価値の高いフィールド機器類となっています。

DCS(Distributed Control System;分散制御システム)の分野でも、1995年にアズビルはWindowsⓇベースのDCSを提案しました。今やこのコンセプトはDCSの常識となっています。

これらはほんの一例で、アズビルは大きな技術の潮流を捉え、積極的に新技術開発に取り組み、新たな事業モデルを提案することで発展してきました。

イノベーションは破壊的に起こります。従来技術の延長に拘泥していると、突然新たなプレイヤーが新たな技術を引っ提げて登場し、市場を席巻します。継続的にイノベーションを起こし続けなければ企業として成長が停滞し、やがて市場から退出を求められるでしょう。これまでの先人の取組みに匹敵するイノベーションを我々の手で生み出し、未来につながねばなりません。

チャンスはあります。イノベーションは少しの発想と技術の組合せで起こるということです。今後、計測制御システムの付加価値は、「システム化/ソリューション化」と「フィールド機器の高機能化」に二極分化していくでしょう。このとき有効なのはアズビルの技術基盤の多様性です。IT企業がプロセスの中身まで理解してソリューションを提供することは難しいでしょう。また、フィールド機器だけを提供している企業にはシステム全体を把握してソリューションを構想することは容易ではないでしょう。

azbilグループにはビル制御、プラント制御、AI、MEMSなど多様な技術基盤と知見があります。しかし多様であるだけでは生き残れません。多様な技術基盤を元に、外部からの様々な知見を有機的に組み合わせ、新たな技術、ソリューション、事業モデルを提案しなければなりません。多様な技術を1つにまとめるチームとしての一体感が必要です。

イノベーションのタネはそこかしこに埋まっており、これに気づき、掘り起こし、ものにする発想と一歩踏み出す勇気を持たねばなりません。 今般のTechnical Reviewには、azbilグループの各社から、システム、センサ、アクチュエータ、AIなど多様な論文が掲載されています。これらの技術のタネから新たなイノベーションが生まれることを期待します。

この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2020年04月に掲載されたものです。