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最新のAI画像解析技術を用いた顔認証・温度検知ソリューション

1.はじめに

2020年2月に日本コンピュータビジョン株式会社と業務提携し,AI顔認証・温度検知ソリューションの販売を開始した。

当社は1987年よりビルセキュリティ事業に取り組み,現在は非接触ICカードリーダを中心とした入退室管理システムを様々な建物や企業に販売している。顔認証技術は入退室管理システムの利便性を飛躍的に向上させるとともに,温度検知(発熱の疑いのある人を検知する)技術はパンデミック時において安全と安心を提供する手段となる。

2.製品概要

AI顔認証・温度検知ソリューションは,先進的なAI技術に基づく高速で高精度の顔認証機能,2つのカメラ,検知センサ,サーモグラフィカメラなどのハードウェアを集約した専用デバイス(図1)と,それらを統合管理するソフトウェアSenseLink(センスリンク)により構成される。

図1 AI顔認証・温度検知ソリューション専用デバイス

2.1 顔認証デバイス SensePass

SensePass(センスパス)は,ハンズフリーでの入退室(図2)を実現するデバイスであり,次のような特長を備えている。

  • 最大2万人のデータを搭載し,0.3秒で認証
  • 暗所(0.5 lux,月明り程度)でも認証可能
  • マスクをしていても認証可能
  • 写真などによるなりすましを検知
  • SensePassの顔認証アルゴリズムは,香港に本社を置くAI企業,SenseTime(センスタイム)社が開発したものである。SenseTime社のアルゴリズムは,NIST(National Institute of Standards and Technology:アメリカ国立標準技術研究所)が実施した顔認証ベンチマークテストFRVT(Face Recognition Vendor Test)2020において,8つの評価項目のうち5つの主要分野で1位を獲得している。

    図2 顔認証によるハンズフリー入退室

    SensePassを利用することにより,入退室管理システムの利用者はセキュリティカードの紛失,持ち忘れなどのリスクから解放され,管理者はそれらへの対応コストを削減することができる。また,同じく顔認証技術を使って,勤怠管理,来客受付などを行うこともできる。

    2.2 温度検知デバイス SenseThunder

    SenseThunder(センスサンダー)シリーズは,顔認証デバイスに小型のサーモグラフィカメラを組み合わせ,温度検知機能を付加したものである。顔認証機能を利用して目や額の位置を特定,サーモグラフィカメラが計測した多数の温度点から演算に最も適した点を選び出し,体表温・体温・室温の3種類のビッグデータにてディープランニングしたAIにより,高精度で体温を推定する。そのため,背景や照明などの影響を受けにくい。

    コンパクトなSenseThunder-Mini,大型画面を採用し外部モニタ出力端子も備えたSenseThunder-E,さらに最大5人を同時に計測することができるSenseThunder-Airがある。

    表1 SenseThunderシリーズ 仕様比較

    SenseThunder
    Mini
    SenseThunder
    E
    SenseThunder
    Air
    画面サイズ5.5インチ8インチ8インチ
    測定誤差±0.4℃±0.3℃±0.4℃
    測定距離~1.2m~1.5m~2.5m
    モニタ出力なしありあり
    同時計測人数1人1人5人

    2.3 管理プラットフォーム SenseLink

    SenseLinkは,最大300台の顔認証・温度検知デバイスを統合管理するソフトウェアであり,次のような機能を備えている。

    • デバイス管理
      登録している各デバイスの状態確認,設定変更
    • 登録者管理
      従業員,グループ情報の登録や更新
    • イベント管理
      顔認証,温度検知履歴や異常温度アラートの管理
    • また豊富な外部連携API(Application Programming Interface)により,入退室管理,勤怠連携などの外部システムとの連携が容易である。

      図3 管理プラットフォームSenseLink

      3.入退室管理システムとの連携

      当社の入退室管理システムの専用コントローラには, SensePass,SenseThunderシリーズを非接触ICカードリーダと同じように接続することができる。入退室管理システムを導入する各部屋やエリアの用途,セキュリティレベルに応じて,カードリーダ(コスト重視),顔認証(利便性重視),指静脈(セキュリティ性重視)などの認証方法を自由に選択することができる。またSenseThunderの温度検知機能により,発熱の疑いのある人を入室させない,また入室に応じて室圧や気流を素早く制御するなどの応用も可能である。

      システムレベルでは,SenseLinkのAPIを利用して,顔とカードの一括管理,ビルの受付や搬入口における来客登録の仕組みなどを順次開発して提供する計画である。

      4.おわりに

      AI顔認証・温度検知ソリューションにより入退室管理の利便性を向上させるだけでなく,ユーザー管理,履歴管理も含めた連携機能を提案し,入退室管理システムおよびビルディングオートメーションシステムと併せて,お客さまに新たな価値を提供していく。

      <謝辞>
      執筆に際しご協力いただいた日本コンピュータビジョン株式会社に感謝の意を表する。

      <著者所属>
      粒崎 洋一 アズビル株式会社 ビルシステムカンパニー
            マーケティング本部プロダクトマーケティング部
      上田 祐司 アズビル株式会社 アドバンスオートメーションカンパニー
            マーケティング本部プロダクトマーケティング部

      この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2021年05月に掲載されたものです。