アジャスタブル近接センサ 形 H3C
オートチューニングと余裕度の可視化で調整工数削減と安定稼働に貢献
1.はじめに
近接センサは,センサに近づいた金属に反応し,出力をON/OFFする非接触スイッチである。
従来の近接センサは動作距離が固定であり,ねじ状になっているセンサのねじをずらすことで検出位置の調整を行っている。ねじによる検出位置の調整は,微調整が難しく時間がかかる,作業者によって調整位置がばらつく,という課題がある。また,出力のON/OFFしかわからないため,調整後の検出余裕度がLEDの表示でおおよそしか確認できないという課題もある。これらの課題を解決するため,アズビルはアジャスタブル近接センサ 形 H3Cを開発した。
図1 アジャスタブル近接センサ 形 H3C
2.製品概要
形 H3Cは出力を2つ搭載し,従来センサが2つ必要であったアプリケーションではセンサを1つで対応することができる。それぞれの出力に対してしきい値を設定することにより,検出位置を出力ごとに調整することができる。
2.1 IO-Linkによるセンサの設定
本製品はIO-Linkに対応しており,しきい値などの各種設定,チューニングを通信で行うことができる。また,稼働時間や発振周波数などセンサの状態を取得することができる。
2.2 チューニング
各出力の設定をマニュアルで行うほか,オートチューニング機能を搭載している。チューニング機能にはしきい値の設定を2つの出力それぞれで行うStandard Modeと,しきい値と動作モード,動作ロジックを一括して行うCombination Modeがある。
Combination Modeはアズビルが新規開発したチューニングであり,その1つに4ポイントチューニングがある。これはティーチングポイントとして4点を指定すると,図2のように4点(図中のT1~T4)の間に2つ出力のしきい値(図中のS1,S2)を設定し,4つの状態を区別することができる。このチューニングはマシニングセンタの主軸に装着されるツール(工具)のクランプ状態の確認をアプリケーションとして想定している。
2.3 設定ツール
設定を簡単に行えるよう設定ツールを開発した。設定ツールはFDT®(Field Device Tool)仕様に基づき,DTM™ (Device Type Manager)アプリケーションとして開発している。
設定ツールは各種設定やチューニングを行うことができるほか,動作の余裕度の確認や検出レベルのグラフ化機能を搭載している(図3)。
・ デバイス管理
登録している各デバイスの状態確認,設定変更
図2 4ポイントチューニング
図3 設定ツール
図4 形 H3Cのアプリケーション例
4.おわりに
形 H3Cでは,今回紹介した4ポイントチューニングのほか,各種チューニングにより様々なアプリケーションへの応用を想定している。アプリケーション例を図4に示す。
今回開発したアジャスタブル近接センサ 形 H3Cのチューニングや専用設定ツールは,お客さまに快適な設置設定と工数削減,動作の余裕度の確認による安定した装置の稼働に貢献できると考える。
<商標>
FDTはFDTグループの商標です。
DTMはFDTグループの商標です。
<著者所属>
佐藤 永幸 アズビル株式会社 アドバンストオートメーションカンパニーCP開発部
喜入 信博 アズビル株式会社 アドバンスオートメーションカンパニー CPマーケティング部
この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2021年05月に掲載されたものです。
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