新しい働き方を支援する「人を中心としたオートメーション」特集にあたり
アズビル株式会社
代表取締役社長兼執行役員社長
山本 清博
今回の特集のテーマは「新しい働き方を支援する“人を中心としたオートメーション”」です。特集に寄せて,ということで,このテーマを選んだ理由についてお話しさせていただきます。
これまで,社会の様々な変化を受けて働き方も多様化してきました。高度成長期に今の働き方の基盤であるオフィスワークが定着し,昭和から平成への移行期には,当時の技術革新(オフィスオートメーションなど)の発展により業務のシステム化,フリーアドレス性の導入等が進みました。また,工場・プラントにおいては人的作業がロボットや各種装置に置き換えられ,人と機械が融合した生産が確立されてきました。
それでは,今回の事象を踏まえて,今求められている「新しい働き方」とはどのようなものでしょうか。場所が変わる,仕事のやり方が変わる,仕事の質が変わるという観点から考えてみたいと思います。
場所が変わるという観点では,従来のオフィス,工場,各種施設等の職場に通勤し,その職場での業務から,自宅,サテライトオフィスといった複数の場所での業務へと変化しています。また,仕事のやり方という観点からは,従来の対面での業務からリモートワーク,オンラインでの会議といった,バーチャルな空間でのコミュニケーションへと変化しています。
仕事の質という観点からは,従来の職場での快適,生産性という評価軸に,「安全・安心」という要素が加わりました。従前より,いわゆる入退室管理,あるいは災害時対応という観点からのセキュリティ対策は,着実に実装されていましたが,今後は感染防止という観点から,勤務している空間が「安全・安心」であるかということが求められるようになっています。
一方,地球温暖化対策という観点からは,日本政府をはじめ,主要各国がカーボンニュートラル社会の実現に向けて舵を切っています。従来の省エネルギー,節電といった取組みを基盤に,再生可能エネルギーのさらなる活用を加えたカーボンニュートラル社会の実現は,新しい働き方を実現する上での,制約条件として解くべき課題となっています。
このように場所や仕事のやり方が変わり,その職場で求められる質が変わる中,人々の安心,快適を実現するためのエネルギー消費を最小限にすることが,今まで以上に求められています。
アズビルのグループ理念である「人を中心としたオートメーション」は,オフィス,病院,研究所といった商業建物,工場・プラント,ガス供給インフラなどのライフラインといった様々な領域において,計測と制御を中心としたオートメーション技術で,人々の安心・快適・達成感を実現するとともに,地球環境に貢献することを目指してきました。人々が働く空間の安心・快適といった「質」と,その質を実現するためのエネルギー,資源などの「量」のバランスを,長期にわたり最適な状態に維持することにより,お客さまの価値創造を進めていただきつつ,地球環境に貢献できる状況を提供することにより,お客さま,社会,社員がともに達成感を共有できることを目指しています。
今回の社会の変化により,今まで以上に「空間の質」と,その質を実現するための「エネルギー・資源の量」のバランスをとることは難しくなってくると考えています。その際,重要なことは,働いている人々に寄り添い,安心・快適といった環境を享受しながら,環境負荷の低減に貢献できる状況を作り出すことであると思います。
azbilグループがこれまで培ってきた技術・製品・施工エンジニアリング・サービスといった様々な要素を用いて,その実現に貢献できると考えています。例えば,工場・プラントにおける制御用バルブ等の製品の状態をオンラインでモニタリングし,異常を予兆し安全に寄与する。同時に状態に応じたメンテナンスを可能とすることにより,現場での働き方の変革を支援することができます。また,オフィスにおける在籍の状態を赤外線アレイセンサで把握し,感染防止といった観点から適切な状態であるかを判断し,換気量を制御することも可能となります。
このようなソリューションを長期にわたり,働き方の変化に合わせて提供できることが,azbilグループの価値であり,これからもお客さまとともに,現場で価値を創り出し続けていきたいと考えています。
「地球は先祖からの相続品ではなく,未来の子供たちからの借りものである」という言い伝えがあります。新しい働き方の支援と,カーボンニュートラル社会への貢献の両立を,長期間にわたり実現することで,お客さまに達成感を感じていただく,そのような企業体であり続けたいと考えています。今回の特集 「新しい働き方を支援する“人を中心としたオートメーション”」 をご覧いただき,azbilグループの取組みについてのご理解を深めていただければ幸いです。
この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2021年05月に掲載されたものです。
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