小規模ビルのエネルギー管理に貢献するビル管理システム SmartScreen2
1.はじめに
SmartScreenは,延床面積5000㎡規模の小規模建物に向けたビル管理システムであり,1998年の販売開始以降,オフィスビルや病院などに1万システム以上導入されている
近年,持続可能な社会の実現に対する機運の高まりにより省エネルギーの社会的要求は年々増加しており, SmartScreenがターゲットとする小規模建物においても,エネルギー管理の重要性が高まっている。建物のエネルギー管理にはBEMS(Building Energy Management System)と呼ばれるシステムが一般に使われるが,小規模建物の場合,BEMSを導入することはコスト面から現実的でなく,既存のビル管理システムにエネルギー管理の役割も持たせていくことが求められる。
そこで,小規模建物におけるエネルギー管理の第一歩として,エネルギーを可視化する機能を大幅に拡充した後継製品であるSmartScreen2を開発し,2020年1月より販売を開始した。
2.製品概要
図1 SmartScreen2外観
図2 SmartScreen2のシステム構成
SmartScreen2のシステムは,SmartScreen2本体と,設備機器の近傍に設置され本体に設備機器の情報を通信経由で伝える小型リモートI/Oモジュールによって構成される。またFCU(Fan Coil Unit)コントローラを接続し, SmartScreen2をFCUの集中操作パネルとして使用することもできる。I/OモジュールおよびFCUコントローラの最大接続台数は100台(50台×2チャンネル),通信幹線は最大1,000mであり,小規模の建物であれば建物内のどこでも情報の授受ができる。本体にはETHERNETを2ポート備えており,ほぼ同等の画面を遠隔に設置したPCから監視できるほか,アズビルが提供する総合ビル管理サービス(BOSS-24)やBASトータルシステムメンテナンスサービス(BESTMANEV)などのサービスに接続できる。
3.SmartScreen2のエネルギー管理機能
SmartScreen2の主要なエネルギー管理機能と,Smart Screenからの拡充点を表1に示す。
表1 主要なエネルギー管理機能
機能 | SmartScreen2 | SmartScreen |
---|---|---|
トレンドグラフ機能 | 〇 | × 機能なし |
日月年報作成機能 | 〇 | × 機能なし |
データ収集機能 | 〇 最大13ヶ月 (1分周期収集時) | △ 最大20日 (1分周期収集時) |
電力デマンド制御機能 | 〇 | 〇 |
以下に,個々の機能について述べる。
3.1 トレンドグラフ機能
管理データの時系列推移をグラフ表示する機能。建物内のエネルギーの使用量,設備の使用状況などの推移を可視化し,増エネルギーに繋がる設備の異常や運用の無駄がないかどうかを直感的に確認できる。グラフは最大16枚。1枚につき4点のデータを,15日分まで遡って表示。
図3 トレンドグラフ画面例
3.2 日月年報作成機能
時間ごと,日ごと,月ごとのデータを帳票形式で画面に表示し,CSVファイルに出力する機能。建物内の温度やエネルギー使用量を登録し,定期的に観測することで,トレンドグラフとは異なる前年同月比等の長期的な視点で設備の異常や運用の無駄の有無を確認できる。帳票枚数は系統ごとに帳票を作成することを想定して最大10枚,1枚あたりの登録データは最大20点。
図4 日報画面例
3.3 データ収集機能
最大200点の管理データを,1分単位の時系列データとして長期的に収集・蓄積する機能。トレンドグラフや日月年報作成機能によって増エネルギーの兆候を捉え,本機能を使用してより詳細な分析を行うことができる。蓄積期間は最大で約13カ月。蓄積したデータはCSVファイルとして出力し,PC上で分析を行う。
3.4 電力デマンド制御機能
デマンド時限と呼ばれる30分の周期ごとに,電力使用量の伸びからデマンド時限終了時点の使用電力量を予測し,常に平均使用電力が目標電力以下になるように設備の稼働状態を調整する機能。契約電力量を最適値に抑えられるため,建物の電気料金を削減すると同時に省エネルギーに貢献する。
予測される電力に応じて,停止させる設備機器を3段階のレベルで各8台ずつ登録。使用電力が目標値を超過しそうなときには警報として通知する。
図5 電力デマンド制御画面例
4.おわりに
本稿ではSmartScreen2の簡単な紹介とともに,Smart Screen2が提供する各種エネルギー管理機能について述べた。今後は,当社が提供するサービス群とも連携し, SmartScreen2単体でなし得る以上の付加価値を持ったエネルギー管理サービスを提供していく所存である。
<商標>
SmartScreen,BESTMAN,BOSS-24はアズビル株式会社の商標です。
ETHERNETは富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の商標です。
<著者所属>
大澤 義孝 アズビル株式会社 ビルシステムカンパニー開発本部開発2部
この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2022年04月に掲載されたものです。
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