特集に寄せて

アズビル株式会社
執行役員常務
3つの成長領域担当
伊東 忠義

私たちazbilグループは,持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献により企業価値の持続的な向上を図り,2030年に売上4,000億円規模への成長を目指しています。この成長を支える重要な施策に「3つの成長事業領域(新オートメーション事業,環境・エネルギー事業,ライフサイクル型事業)」による成長があります。「人間の苦役からの解放」を理念として,創業者の山口武彦がオートメーション事業に取り組んで既に118年の月日が経ちました。その間オートメーション技術は飛躍的に発展し,当時人間が行っていた様々な作業,業務は機械化され苦役からの解放は大いに進んだと言えます。しかしながら,私たちは新たに「持続可能性」という課題に直面し解決を求められています。その解決に寄与する技術を「新オートメーション」として定義し,貢献する重要なテーマ,領域を「環境・エネルギー事業」としています。そしてその技術と領域においてお客様の事業をライフサイクルにわたって支え,貢献することによりazbilグループの企業価値を向上させ,成長していくことが「3つの成長事業領域」の施策になります。今回の特集テーマである「持続可能な社会に貢献するオートメーション技術」は,まさにこの施策の中心をなす技術となります。

ところで,従来のオートメーションと新オートメーションの違いは何でしょうか。新しい技術や高度な機能,精度を有する商品,サービスが新オートメーションなのでしょうか。今の新オートメーションは5年後,10年後には新オートメーションではなくなるのでしょうか。この問いに答えるものが「持続可能な社会への貢献」となります。2023年にazbilグループのSDGs目標の1つである「新オートメーション」に2つの定量目標を定めました。

  • 新オートメーションで2030年に延べ8,000事業所で事業環境変化に強い状態を実現
  • 新オートメーションで2030年に延べ600万人にストレスフリー,多様な働き方につながる環境を提供

これらの定量目標を設定するために,まずは新オートメーションを以下のように定義づけました。

「自動化や環境改善の進んだ生産現場・オフィスでも生産・就労の持続可能性を阻害する要因は多々存在している。新オートメーションは,それらの阻害要因を解決し,生産現場の内的・外的な事業環境変化への対応力を高め,さらにストレスなく多様な働き方に繋がる職場環境を実現する。これらにより,生産現場・オフィスで働く人の安全の担保・労働環境の改善・心的負担の削減,労働人口減少に対するリソースの確保,生産ロスの削減,無駄の削減などの生産性改善の成果が期待できる。このように新オートメーションは,持続可能な生産現場・職場環境の基盤創りに貢献している。」

前述にある持続可能性を実現するための課題としては

  • オートメーションを担う装置・機器の故障による事故や生産ロス
  • オートメーションを担う装置・機器のメンテナンスコストの増大
  • これらの機器のトラブルにより,扱う作業者自体の心的負担の増大
  • 就労人口の減少による作業員の多様化の進展と対応の必要性

等が挙げられます。機械化や自動化とは違い,従来は人が対応していたようなこれらの阻害要因に対する解決策を提供するものが「新オートメーション」となります。

生産現場の自律化により,装置や機器の異常予兆を検知し,故障の発生する前に点検やメンテナンスを行うことで,事故などのトラブルを回避につなげることが可能となります。あるいは,生産現場の自律化により,コンディションベースのメンテナンスを可能とし,整備の必要な機器を必要なタイミングで整備することで,コスト削減と稼働率改善につなげることになります。これらは同時に生産現場で働く人の心的負担を軽減し,多様性の実現にもつながっていきます。

持続可能性を強化する上でもう1つ重要なことが,生産現場やオフィスで働く人のウェルネスの進展になります。例えば,部屋の温度が20℃のとき,それを快適と感じる人もいれば寒いと感じる人もいます。暑いと感じる人もいるでしょう。AIを用いたウェルネスの進展により,働く人それぞれの感受性という有機質なセンサをもとに制御し,快適性を提供することも可能となってきます。この結果として働く人の生産性は向上し,エネルギーの使用も押さえられ省エネルギーにつながります。

今回のTechnical Reviewでは,従来のオートメーション技術だけでは対応できなかった,生産現場やオフィス環境の持続可能性を阻害する要因に対する解決策となる様々な技術が紹介されています。これらの技術はすべて,最初に述べたazbilグループの2030年に向けた長期目標を支える「3つの成長事業領域」施策に直結し,社会の持続可能性に貢献するものとなります。今号をお読みいただいている皆様に,それぞれの技術のすばらしさが伝わることを期待して,私の特集への寄稿とさせていただきます。

この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2024年04月に掲載されたものです。