バルブメンテナンス体制強化とIoT技術活用サービスの提供で、国内全域の工場・プラントの安全と安定操業を支援
アズビル株式会社は、お客さまの工場・プラントにおけるバルブメンテナンス体制強化を目指し、全国5カ所にバルブメンテナンスセンターを設置し、人員、機材を相互補完できる体制を構築しました。これにより、地域横断的にスピーディなバルブメンテナンスを提供することが可能となり、IoT技術を活用したバルブの診断サービスの提供と併せて、お客さまの工場・プラントの安全と安定操業を支援します。
バルブの製造・保全実績を基に高品質のメンテナンスサービスを提供
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」の理念の下、計測と制御の技術を基盤とした製品やサービスを展開しています。主要事業の一つとしてお客さまの工場やプラントにおいて安全かつ安定した操業を確保し、生産品質や効率性の向上を担っているのがアドバンスオートメーション事業です。アズビルが提供する機器類は石油、化学をはじめとする様々な製造現場で導入されています。その一つであるバルブは、製造に用いられる液体や気体の流量・圧力をコントロールする役割を担っていることから、製造される製品の品質維持と安定供給のために不可欠な機器です。
通常、プラントでは安定操業や機能保全などを目的に、2年、4年などの一定周期で製造ラインを全面停止し、定期修理(定修)と呼ばれる大規模な設備の修理・修繕が行われています。バルブについても定修時に取り外して、各パーツに分解し、清掃や部品の交換などの作業を伴う開放点検を実施します。アズビルでは長年にわたるバルブの製造やメンテナンスの中で培われたバルブに対する知見と技術力を基に、自社製バルブはもちろんのこと、他社製バルブに対しても高い品質でのメンテナンスを提供。メーカーごとに点検を依頼する煩雑さの解消につながるため、お客さまの利便性の向上にも寄与しています。
バルブの芯(センター)を正確に保ちながら作業を行うため、バルブは整備用レールに固定して点検を行う。整備用レールを2本から4本に増設し、整備効率の高い作業動線を確保した。
五つのメンテナンスセンターで国内全域をカバーする、柔軟な体制を構築
アズビルは、コンビナートが広がる各地域に事業所を配置し、お客さまに近い場所でバルブをはじめとした納入機器のメンテナンスや保守を行っています。エチレンセンター*1の定修に合わせて周辺のプラントも定修を行うことや、定修に要する時間短縮したいというお客さまのニーズを背景に、バルブの点検や整備作業が集中する傾向にあります。こうした環境をふまえ、アズビルでは、比較的規模の大きな工業地帯にある鹿島、千葉、四日市、水島、香春(かわら)の5カ所の事業所内にバルブメンテナンスセンターを設置し、特定地区にメンテナンス作業が重なった際は、各地域の技術者が該当地域へ技術支援に行くなど、人員や作業場所・機材を相互補完できる体制を構築しました。各センターには、バルブの引取り保守作業が集中した際のセンター間の負荷調整や技術指導を行うオペレーションディレクターが配置されており、国内全域をカバーする地域横断的なソリューション型サービスを通じて、安定したメンテナンスを提供しています。
五つのセンターの中で最も規模が大きく、かつハブとしての役割を果たしているのが岡山県倉敷市にある水島営業所内のメンテナンスセンターです。同センターは近隣の大型コンビナートから依頼される多種多様なバルブのメンテナンスを通じて、多くのノウハウを蓄積しています。
2014年2月、水島営業所の移転を機にメンテナンスセンターの規模を拡大し、バルブ整備における動線の見直しや作業手順の効率化を進め、整備に要する期間の短縮とさらなるメンテナンス品質の向上を実現しました。
さらにこの拠点は、azbilグループ全体のバルブメンテナンス事業にかかわる技術者を育成する場としての役割も担います。国内外から多くの技術者が訪れ、大量のバルブを短期間で処理する管理方法やマニュアルに置き換えることが難しい整備スキルを実践形式で学んでいます。加えて、技術者が保有するメンテナンス技術を評価・可視化する仕組みを作り、さらなる技術力向上も支援。今後は、社内資格制度を設け、ある一定の基準に達した技術者を高スキル技術者として認定していきます。
お客さまのプラントから預かったバルブをパーツごとに分解し、内部の清掃や摩耗・劣化具合に応じて修繕や部品の交換、塗装を施す。バルブは新品同様の状態になり、再びお客さまのプラントへ戻される。
整備が完成したバルブは、専用試験機を用いて各種の機能検査を行う(耐圧、気密試験・漏洩試験・作動試験等)。
メンテナンス技術とIoTの融合で、バルブの診断サービスを実現
バルブは外側から目視で確認しただけでは内部の摩耗や劣化の状態を把握することができないため、ある一定の期間が経過するごとに点検するタイムベースメンテナンスが一般的ですが、近年、分解せずにバルブのコンディションを把握し、状況に応じてメンテナンスを実施するコンディションベースメンテナンス(CBM)という効率性の高い方法にも注目が集まっています。
このCBMを可能にしたのが、バルブの開閉のコントロールだけでなく、稼働中のバルブの状態を計測するアズビルのスマート・バルブ・ポジショナと、そこで収集したデータを診断・解析する調節弁メンテナンスサポートシステムPLUG-IN Valstaffです。IoT(Internet of Things)を基盤としたこのシステムは、一台一台のバルブをリアルタイムで状況把握するため、正常時とは異なる動きをしているバルブを容易に発見することが可能です。
昨今では、多くのプラントにおいて、経年化した設備が増え、経験豊富な保全人員も減少している中、熟練の技能をいかに伝承・補完し、安全で安定的な操業と生産性の向上を確保するかが大きな課題となっています。その観点からも、スマート・バルブ・ポジショナとPLUG-IN Valstaffは熟練の技術を補完し、保全作業員の負荷を軽減するツールとして活用することができます。今後は、海外のバルブメンテナンスセンターにおいてもスマート・バルブ・ポジショナを活用したバルブの診断サービスを導入していく予定です。
アズビルは、スピーディかつ高品質なメンテナンスと、先進技術を用いたバルブの診断サービスによる付加価値の高いサービスを提供し、今後もお客さまの円滑なプラント運営を支援します。
*1:エチレンセンター
石油化学製品の原料であるエチレンを生成し、石油化学プラントに供給する施設。各社による共同運営により、統合が進められている。
※Valstaffはアズビル株式会社の商標です。
この記事は2017年06月に掲載されたものです。