HOME > アズビルについて > 会社PR > azbil MIND > 設計品質向上により高度な製品価値を追求

設計品質向上により高度な製品価値を追求

― 不適合発生の未然防止に必要な各種情報を知識データベースとして開発部門間で共有 ―

アズビルでは製品品質の向上に向けた取組みの一環として、構造化知識研究所が提唱するSSM(Stress-Strength Model)*1に基づいて、不適合事象やその発生メカニズムにかかわる知識をデータベース化。各製品開発部門を横断した知識の相互活用により、不適合や類似事象発生の未然防止に向け、より広範な視点を踏まえた製品設計および生産工程設計が可能になりました。お客さまにとっての製品価値をさらに高めていくための体制強化を推進しています。

製品の不適合事象にかかわ情報をSSMで知識化して設計工程で活用

「人を中心としたオートメーション」で、人々の「安心・快適・達成感」の実現をグループ理念に掲げるazbilグループ。時代とともに変化するお客さまや社会の課題解決を目指し、ビルディングオートメーション(BA)事業、アドバンスオートメーション(AA)事業、ライフオートメーション(LA)事業の各領域で、先進の計測・制御技術に基づく製品・ソリューションを通じた価値提供に努めています。

そうした中で、重要なミッションの一つに据えているのが、お客さまの期待やニーズを満たす「品質」の維持・向上です。これに関しアズビル株式会社では以前から、各事業で提供する製品やエンジニアリング、そして保守サポートをはじめとするサービスの品質向上に向けた意識を、企業文化としてしっかりと根付かせていくための施策を全社で展開してきました。

その一つとして、近年特に力を注いでいるのが、製品設計および生産工程設計段階での品質の作り込みに関する取組みです。これまで社内の事業ごとの製品開発部門や生産技術部門に、お客さまの現場や、生産・開発の工程で発生する不適合についての情報が散在していました。これらの情報を統一・構造化(一般化)し、整理されたかたちで再利用できるようにモデル化(=知識化)。すべての開発部門がこの情報を基に、設計に入る前の段階で、過去に経験した不適合や類似事象の情報を得ることによって、高品質で効率的な設計を行っていけるような仕組みづくりを進めています。

このような知識構造化の方法論としてアズビルが採用しているのが、株式会社構造化知識研究所が提唱するSSM™です。このモデルに基づいて、製品や工程に起こり得る故障や不適合などの知識をSSM Master(不適合未然防止支援ソフトウェア)を使ってデータベース化。製品の設計工程や生産工程設計で役立てていこうというものです。

アズビル設計知識データベースの構築背景と狙い

アズビル設計知識データベースの構築背景と狙い

設計のみならずデザインレビューや不適合対応、技術伝承にも活用

アズビルでは、こうした取組みをまずはコントロールバルブ製品の開発部門で試験的に実践しました。2010年ごろから構造化知識研究所の支援の下でSSM Masterへの知識の登録を進め、2012年春には同部署における運用を開始しました。そこで好感触を得ると、次は社内の主だった開発部門が蓄積している知識をデータベースへ登録する検討を2012年から全社規模で推進。2015年春には、このSSM Masterを「アズビル設計知識データベース」と命名し、全社での運用を開始しました。

それと並行して、社内の開発業務の中で設計知識データベースの活用を促進していくための組織として、各事業の開発部門から選任された10人程度のメンバーで構成される設計知識データベース運用分科会も設置しています。

設計知識データベースの運用開始により、設計担当者は新しく製品の開発を進める前に、設計対象となる製品やそこで利用している部品などについて、過去に起こった問題事象やその発生メカニズム、設計上の注意点などについて、設計知識データベースを参照してから設計作業に着手するようになりました。設計対象を多面的に捉えた設計品質の向上、トラブルの未然防止に役立てていけるようになっています。

また、アズビルでは設計作業のみならず、デザインレビューを行うときにもレビューを行う担当者が必要に応じて参照する情報として、あるいはお客さまの現場や生産工程などでの不適合発生時に、トラブルシューティングを行う際の参考情報としても同データベースが活用されています。また、今後、若手設計者への技術伝承にも積極的に利用していこうと考えています。

全社横断による設計知識の共有が設計者に新たな気付きを与える

アズビルの設計知識データベースは、社内の製品にかかわる設計知識が各事業や部門を超えて、単一のデータベース上に統合されていることが大きな特徴です。設計担当者が他部門によって登録された知識にも触れるため、自部門で蓄積してきた情報だけではない、設計品質を高めるための気付きを得ることができます。

こうした設計知識の全社共有にあたり、設計知識データベース運用分科会は、データベースの検索時に選択項目として用いられる定義属性の標準化や、設計者が必要な知識を一字一句正確な用語で入力しなくても抽出できるよう定義属性の揺らぎを吸収するといった取組みも行っています。また登録情報の精度を上げるため、各事業の開発部門が持ち寄る知識を設計知識データベースに登録する際に審査する場を設け、有用性が精査された情報のみが登録されるような体制を整えています。

このような全社共有の設計知識データベースの有用性について、利用者に調査を行ったところ、ある開発部門においては、15年以上の経験を持つベテランと10年程度の経験を持つ中堅設計者のそれぞれ95%以上が、「新たな気付きが得られた」「チェックリストとして有用性を感じている」と回答。さらに、そうした気付きを得た、または有効性を感じた知識について、自部門/他部門の内訳を尋ねたところ、自部門の知識が39%であったのに対し、61%が他部門の知識だと答えており、設計者が全社での知識共有により多大なメリットを感じていることも見て取ることができます。

今後もアズビルでは、設計知識データベースの拡充と改善を継続的に図りながら、そのよりよい活用を目指して、SSMでの知識構造化のスキルを備えた人材育成を各開発部門で推進していきます。同時に、実際の運用を通じて、より効果的に知識活用を行っている部門の事例を全社に紹介することや、自社のベストプラクティスとしてまとめていくといった取組みも進めていきたいと考えています。そうした活動を通して、製品品質をさらに向上させ、お客さまにとってのアズビル製品の価値を一層高めてまいります。

知識分節の有効性評価

知識分節の有効性評価

*1:SSM(Stress-Strength Model)
製品や工程に起こり得るトラブルが発生するメカニズムの知識を、将来の設計や計画に利用できるように構造的に整理し、表現するモデル。

※SSMは、株式会社構造化知識研究所の商標です。

この記事は2020年04月に掲載されたものです。