新たなオートメーションをベースに持続可能な社会へ「直列」につながる事業展開を目指す
― “ポストコロナ”を見据えた持続的な成長に向けて ―
2012年に社名を山武から現社名へと変更したアズビルでは、2013年度から2016年度までの4年間と、2017年度から2019年度まで3年間の2ステップに分けて中期経営計画を展開。事業基盤の整備を進めることで事業収益性、成長力を強化してきました。2020年6月には、新会長、新社長による新たな経営体制が発足。グローバル規模で激変する事業環境にあって、これまでに築いてきた基盤をしっかりと継承しながら、さらなる持続的成長を実現すべく取組みを進化させていきます。
- 2ステップの中期経営計画を展開。収益性の強化と事業成長を実現
- グローバルの基盤強化に着手。生産・人材・BCPの体制を整備
- 人々の暮らしや働き方の変容が新たなオートメーションの需要を喚起
- 豊富な資産を基にDXを推進。ポストコロナを見据えた事業を展開
- グループ理念の実践そのものが持続的社会の実現への貢献
2ステップの中期経営計画を展開。収益性の強化と事業成長を実現
アズビル株式会社では1906年の創業以来、「技術の力で人々を苦役から解放する」という創業者の想いを継承し、「人を中心に据えて課題を解決する」という発想に基づいて、オートメーション技術を進化させてきました。
そうした中、創業100周年を迎えた2006年には「人を中心としたオートメーションで、人々の安心、快適、達成感を実現するとともに、地球環境に貢献する」ことをグループ理念として制定。さらに2012年には、社名を山武からアズビルへと変更しました。同年、技術・製品を基盤としたソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」となること、地域の拡大と質的転換による「グローバル展開」、そして体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指すという三つの基本方針を定め、基盤づくりを進めてきました。その基本方針の下、azbilグループにおけるビジネスの3本柱であるビルディングオートメーション(BA)事業、アドバンスオートメーション(AA)事業、ライフオートメーション(LA)事業の各領域で組織改革や収益力強化などにかかわる各種施策を展開。急速な事業環境の変化にも即応しながら安定した成長を遂げています。
同時にazbilグループでは、2021年度をターゲットとする長期目標として「人を中心に据え、人と技術が協創するオートメーション世界の実現に注力し、顧客の安全・安心や企業価値の向上、地球環境問題の改善などに貢献する世界トップクラスの企業集団となる」ことを掲げ、2013年度から2016年度、および2017年度から2019年度を対象にした2ステップでの中期経営計画を展開。収益性の強化と事業成長を実現する事業構造の変革に取り組んできました。
特に2017年度から2019年度の3カ年を対象とした中期経営計画では、さらなる持続的成長に向けたチャレンジとして三つの基本方針そのものを強化してきました。具体的には、お客さまの現場で課題解決に貢献し、社会やお客さまの長期パートナーとなるために、IoT、AIなどを含む技術と製品・サービスの開発に、より一層注力することとしました。また、海外においては、これまでの顧客ニーズに応じた新たな製品に加え、コンサルティングなどのサービス提供を含めたソリューション展開で質的な転換を図ることとしました。さらに環境変化へ柔軟に対応するために、お客さまとのパートナーシップの強化やグローバル展開を加速する人材育成に向けた活動をさらに強化することで「学習する企業体」の進化を目指すこととしました。
azbilグループ、三つの基本方針と三つの事業領域の拡大
グローバルの基盤強化に着手。生産・人材・BCPの体制を整備
これら施策に関連して、グローバルな事業展開を支えるための基盤整備も大きく進展しています。具体的には、20カ国・地域を超える国々に現地法人や拠点を設置してサービス網やサプライチェーンを強化し、技術開発や生産についても日本、アジア、欧米にまたがる3極体制を構築しました。
国内では、湘南工場と技術開発拠点である藤沢テクノセンターをマザー工場と位置付け、「4M(Man、Machine、Material、Method)」の革新をベースに、「生み出す」「実証する」「リードする」という三つの機能を担わせることでグローバル生産体制の強化を図っています。こうした技術開発と生産体制に基づいて、IoTやAI、クラウドといった先進技術を取り入れた商品・サービスが次々に開発・生産され、お客さまの元に届けられている状況です。
以上のように持続的成長に向けた施策実践を通じてazbilグループとしてお客さまへ提供する価値を高めることが可能になるとともに、なお一層の事業収益力の強化を実現するに至っています。
azbilグループの事業を支える人材という側面では、事業環境の変化に対応した人事制度の改革、人材の最適配置なども積極的に進めてきました。例えば、人材育成の担当部署であるアズビル・アカデミーでは、技術革新と市場の変化に適応できる人材を育成・再教育し、グループ内での人材の流動性を高めることで、どんな環境変化の中でも能力を発揮できる体制整備に努めています。また、海外展開を牽引(けんいん)するグローバル人材の確保・育成、ダイバーシティの推進に注力していることもそうした取組みの一環です。
そのほか、自然災害やパンデミックなどに備えた、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の整備も切実なテーマであると捉えています。これについてazbilグループでは、グローバル3極の開発・生産体制の整備に加え、防災施策として自社建物の耐震化やハザード点検、備蓄品配備、非常用通信インフラの整備、教育訓練などに取り組む一方、お客さまに対して製品やサービスを提供し続けるための強固な財務基盤の構築、製品や部材の在庫の確保、人員や生産設備についての体制整備を進めています。
併せて、CSR経営に根ざしたコーポレートガバナンスの強化も着実に進捗(しんちょく)しました。次なる長期目標の策定とそれにかかわる施策展開に向けた執行体制を刷新し、取締役会についてもガバナンス強化の観点から、独立社外取締役の構成比率を順次高めてきており、現在では11人中5人という構成になっています。
人々の暮らしや働き方の変容が新たなオートメーションの需要を喚起
こうした中、アズビルでは2020年2月28日、2012年の代表取締役社長就任以来、azbilグループの指揮を執ってきた曽禰寛純(そね ひろずみ)に代わる新社長を発表。6月24日開催の株主総会、取締役会での承認・決議を経て、それまで本年4月からは執行役員副社長を務めていた山本清博(やまもと きよひろ)が代表取締役社長兼執行役員社長に、曽禰が代表取締役会長兼執行役員会長に、それぞれ就任することになりました。
「この新体制の下、azbilグループでは、グローバル規模で激変するビジネス環境において、これまでに築いてきた基盤、達成してきたことをしっかりと継承しながら、さらなる持続的成長を実現すべく、『新オートメーション領域開拓』『環境・エネルギー分野拡大』『ライフサイクル型事業強化』の三つの事業領域拡大へ向け、施策を展開していきます」(山本)
いま私たちの眼前には、新型コロナウイルス感染拡大により世界的に経済活動が停滞しているという状況があり、企業の事業環境は引き続き厳しい状況に置かれることが予想されます。しかしその一方で、この状況を中長期的に捉えると、オートメーションの新たな需要の増加が見込めることから、azbilグループにとっては持続的な成長に向けた大きなチャンスでもあると考えています。
具体的には、新型コロナウイルス感染症の拡大は人々の暮らしや働き方についての行動変容をもたらしており、企業においてもオンライン化やテレワークへと舵かじを切ることが切実なテーマとして浮上しています。それに向けた様々な課題の解決にオートメーションが果たす役割がますます重要になってくることから、azbilグループの提供するオートメーション技術への需要は確実に高まっていくものと予想されています。
また、新型コロナの問題に限らず、企業や社会にとっての恒常的な課題である少子高齢化やグローバル化、働き方の改革、あるいは持続可能な社会を目指す上で喫緊のテーマである気候変動や各種インフラ老朽化などへの対応に向け、IoTやAI、クラウドなどの先進技術の発展により、新たな社会課題の解決に向けてオートメーションが果たすべき役割は大きく、さらに期待が膨らんでいくことは間違いありません。
これに関しアズビルでは、今回の新体制への移行に合わせて、新たなオートメーション領域の開拓による事業拡大を念頭に置いた社長直属の組織としてITソリューション推進部を2020年4月1日付で新設。また、クラウド運用センターも新たに設置しました。これによりIoT、AIなどの最新技術の応用、クラウドを活用した商品のサービス化などを加速させるとともに、azbilグループ全体でのクラウド運用体制の強化を図っていきます。
左:アズビル株式会社 代表取締役会長兼執行役員会長 曽禰 寛純(そね ひろずみ)
右:アズビル株式会社 代表取締役社長兼執行役員社長 山本 清博(やまもと きよひろ)
豊富な資産を基にDXを推進。ポストコロナを見据えた事業を展開
このようにazbilグループの強みは、デジタル技術を含む先進技術を取り入れた製品・アプリケーションの数々をラインアップし、お客さまの現場における高品質なエンジニアリングサービスを提供できる体制を整えるとともに、長年のビジネスの中で膨大なビッグデータを蓄積し、高度なノウハウを培ってきていることです。これらazbilグループならではの豊富な資産を融合させることで、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、お客さまにこれまでにない新たな価値を提供していきます。そこにazbilグループにとっての事業展開・成長が見込めるものと確信しています。
例えば、“ポストコロナ”を見据えたソリューションの一つを紹介すると、病院などの医療機関における風量制御システムがあります。これは、平時に一般病室として使用している部屋の圧力を、有事には「陰圧」にすることで風の流れを制御し、ウイルスの流出を防ぎ、換気量を増加させることで、直ちに感染症病室に切り替えることができるというものです。このソリューションでは、平時における病床稼働率を担保して、医療機関のお客さまのコスト増大を回避し、医療スタッフ皆さまの安全環境を確保することが可能となります。
グループ理念の実践そのものが持続的社会の実現への貢献
冒頭でも述べたとおり、「人を中心としたオートメーションで、人々の安心、快適、達成感を実現するとともに、地球環境に貢献する」ことがazbilグループの掲げる理念です。この観点から、エネルギー不足や環境負荷の増大、経済格差の拡大など、地球規模で増大する社会的課題を解消し、持続可能な世界の実現を目指して国連が採択したSDGs(Sustainable DevelopmentGoals)*1への対応も、グループ理念の実践にほかなりません。これまで培ってきたお客さまとの信頼関係、経験・知見をベースとしながら、先進技術の活用により新たなオートメーションを実現する商品開発のさらなる推進。これを通じ、環境・エネルギー分野にかかわる事業の拡大、ライフサイクル型事業の推進により、持続可能な社会へと「直列」につながる事業展開を進めていきたいと考えています。
2019年度には、azbilグループが着実な成長を遂げ、持続可能な社会へ「直列」につながる貢献を果たしていくことを念頭に、グループの行動指針や行動基準も大幅に見直しました。併せて、azbilグループ独自のSDGs目標も定めています。azbilグループの従業員一人ひとりが、持続可能な社会の実現に向けた明確な目標を意識し、こうした新たな指針、基準を確実に順守していくことで、世界へのさらなる貢献と企業価値向上を目指していくことになります。
「コロナウイルス感染拡大の影響は、短期的な事業環境としては不透明であり、引き続き厳しい状況が予想されます。azbilグループではこれまでに強化してきた企業体質、事業基盤、そして徹底した危機管理によってこの難局を乗り越え、社会構造や価値観の変化によってもたらされる課題に対して果敢に取り組むことで、その解決と自らの持続的成長の両立を実現してまいります」(曽禰)
持続可能な社会へ「直列」につながる事業活動・成長
*1: SDGs(Sustainable Development Goals)
2015年の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標のこと。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17のゴールと169のターゲットが示されている。
この記事は2020年08月に掲載されたものです。