タイに最大規模のバルブメンテナンスセンターを設立
― DXに対応した新しい付加価値で、アセアンを中心に国と地域を超えたソリューション活動を展開 ―
azbilグループのタイ現地法人であるアズビルタイランドは東部経済回廊エリア内に位置するラヨーン県で、15年以上にわたってお客さまのプラント設備にあるバルブのメンテナンスを行ってきました。施設の老朽化を機に、近年のDX化に対応したスマート保安をアセアンのお客さまにも展開すべくSolution and Technology Centerとして生まれ変わりました。azbilグループ最大規模のバルブメンテナンスセンターとして、お客さまへソリューション提案を行い、お客さまのプラントの安定・安全な操業を支えていきます。
先進的な技術を取り入れた、グループ最大規模のバルブメンテナンスセンター
azbilグループでは、新たな社会課題の解決を通じて、持続可能な社会へ「直列」につながる貢献と成長を目指しています。中長期的な成長を支える経営基盤の強化としてグローバルな事業基盤の整備を推進し、生産面においては、中国、タイ、日本の3拠点を整備し、製品生産の効率化とともにBCP*1などの対応も進めています。また、海外におけるお客さまの建物・プラント・工場などのサービス*2においても、日本国内同様の品質を展開すべく、体制の整備・強化、および人財の育成を進めています。
アズビル株式会社のタイ現地法人として1995年に設立されたアズビルタイランド株式会社は、首都バンコクに本社を構え、タイ政府が産業構造高度化に向けて開発を進める経済特区「東部経済回廊*3」エリアのラヨーン県とチョンブリー県に支店を有しています。ラヨーン県は海に面し、多くの石油化学コンビナートが集まっている工業地域であり、そうしたプラントでは、化学薬品など様々な流体を制御するコントロールバルブが、重要な生産工程の中で多数使われています。コントロールバルブを故障などで交換対応することは容易ではないため、できるだけ故障を防ぐために定期的に分解し点検(開放点検)・修理を行うことでプラントの安定稼働を維持しています。アズビルタイランドはアセアン域内のazbilグループ六つ(ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア)の現地法人の中で最大のバルブメンテナンスセンターを持っており、同センターでは15年以上にわたって自社製、他社製を問わず、お客さまのプラントで稼働しているバルブをお預かりし、開放点検などのメンテナンスを実施してきました。同施設が老朽化してきたことを機に、近年のDX*4化の流れに対応し、より進化したセンターへ生まれ変わるため、2019年12月、ラヨーン県南部にSolution and Technology Center(以下、ソリューションアンドテクノロジーセンター)として設立されました。
ラヨーン県に新設したソリューションアンドテクノロジーセンター。
日本で培われた技術をグローバルのお客さまへ提供
アズビルでは、IoT(Internet of Things)やビッグデータ、AI(人工知能)などの最新技術を活用した「産業保安のスマート化=スマート保安」と呼ばれる領域をはじめ、さらなる生産性や品質の向上を支援する製品・サービスの提供に取り組んできました。この技術をアセアンのお客さまにも展開するため、ソリューションアンドテクノロジーセンターを主要拠点とし、積極的にお客さまへの提案を行っています。例えば従来プラントは、稼働率を高く保ち、計画どおりの生産を行うことが利益創出につながるとされており、そのためには安定稼働が求められます。プラントで使用されている機器の中でもバルブは内部の摩耗や腐食の状態を外側から目視で把握することができません。稼働率を高く保つためには、プラントで多用されているバルブの安定稼働が重要で、以前から計画的な保全に取り組んできました。ソリューションアンドテクノロジーセンターでは、年間10,000台規模の整備が可能であり、こうした定期的なメンテナンスの対応に加え、アズビルの調節弁メンテナンスサポートシステム PLUG-IN Valstaff(以下、Valstaff)を活用してバルブの状態監視を行うサービスを提供しています。Valstaffは、お客さまのプラントで稼働するバルブの状態に関するデータを収集して、オンラインで傾向監視をすることで、プラントを止めることなく、バルブの不調を早期に検知します。これにより突発的な故障によるプラントの停止などのトラブルを未然に防ぐことができます。ソリューションアンドテクノロジーセンターでは、Valstaffで収集したデータを技術者が解析を行い、可視化した診断結果を迅速にお客さまに提供しています。診断結果により実際に開放点検が必要なバルブを選定することができるため、お客さまのメンテナンスコストの低減、保守計画の最適化に貢献しています。
azbilグループでは、日本国内で培われたバルブメンテナンス技術をアセアンの技術者に移転するなど、人財の育成にも注力しています。同センターには、日本のバルブメンテナンスにかかわる熟練技術者が常駐しており、現地の技術者にOJT(On the Job Training)を行い、アセアンの現地法人に対してはオンラインでの教育や相談を行っています。また、各現地法人でお客さまのバルブに関する対応が必要になった際には、タイから技術者を派遣する体制も構築されており、ソリューションアンドテクノロジーセンターは、アセアンの現地法人のバルブメンテナンスにおけるハブ的な存在となっています。
開放点検・修理が完了したバルブは、サイズに応じた耐圧・気密試験を実施して健全性を確認する。
次の時代を見据え、技術と人財の主要拠点に
ソリューションアンドテクノロジーセンターでは、バルブメンテナンスの見学やValstaffのデータ解析を基にしたソリューションを提案するほか、センター内のショールームで、プラントで使われるDCS*5や計装機器に加えて、最新技術を実際の製品に触れながら体感することができます。さらに、アズビルのマザー工場である日本の藤沢テクノセンターや湘南工場、東南アジア全域での包括的な展開や伸長を主目的としたアズビル直轄組織である東南アジア戦略企画推進室(シンガポール)とオンラインで連携して、タイの事業のみならず、国や地域の枠を超えて、それぞれの強みをお客さまにご紹介し、意見交換が行えるような環境を整えています。これにより、タイのお客さまが日本の生産現場やショールームをご覧いただくことで、アズビルタイランドの技術力のバックグラウンドを知っていただくことができます。また、日本を含む各国のお客さまには、タイやシンガポールなどのアセアンにおけるazbilグループの活動を知っていただく取組みをしています。
azbilグループでは2016年から、タイの有名な大学であるチュラロンコン大学、カセサート大学、キングモンクット工科大学から毎年インターンシップの学生を受け入れています。特にチュラロンコン大学との連携では、技術フォーラムや共同研究、セミナーを協力して実施し、インターンとして受け入れた学生がazbilグループに入社して、会社の即戦力となっています。
ソリューションアンドテクノロジーセンターは、アセアンの技術の主要拠点になることで、お客さまを各現地法人とともに支援し、技術・製品を基盤にしたソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」となり、お客さまの価値向上と発展に貢献してまいります。
ソリューションアンドテクノロジーセンターは、日本をはじめ、
アセアン域内の六つの現地法人と効率的な情報共有と意見交換が行われるように連携を強化している。
*1:BCP(Business Continuity Plan)
事業継続計画。災害などが発生した際に、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画。
*2:サービス
建物・プラント・工場などにおける設備やシステムに精通したサービスエンジニアが最適運転、定期点検、保守を実施するとともに、緊急の問題に迅速に対応するだけでなく、遠隔地でのデータ収集、リモートメンテナンス、収集したデータの解析、ソリューション提案まで幅広い顧客ニーズに対応している。
*3:東部経済回廊(EEC:Eastern Economic Corridor)
タイ政府が産業の高度化、高付加価値化を図るために2015年に提示した長期ビジョン「タイランド4.0」を実現すべく、タイ政府が指定した経済特区。次世代自動車やロボティクスをはじめとする10の重点産業を誘致し、高度先端産業の集積、開発を推し進めている。
*4:DX(Digital Transformation)
デジタル技術によって、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変革させる取組み。
*5:DCS(Distributed Control System)
分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。
※Valstaffは、アズビル株式会社の商標です。
この記事は2021年03月に掲載されたものです。