カーボンニュートラル実現に向けた取組みを加速
― 地球温暖化対策に向けた温室効果ガス削減の世界的潮流を踏まえ、自らの事業活動と本業を通じた地球環境への貢献を両輪に脱炭素を目指す ―
地球温暖化対策として、二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガス(GHG)の排出削減が世界各国において重要なテーマとなっています。azbilグループでは、2020年10月に政府が示した「2050年カーボンニュートラル宣言」に準じて、脱炭素社会の実現を見据え、自らの事業活動および、製品・サービスの提供を通じた地球環境への貢献に向けたGHG削減目標を設定。その達成に向けた施策の展開を加速させています。
SDGsを道標に脱炭素社会実現に向けた施策を展開
気候変動問題や地球温暖化への関心が高まる中、温室効果ガス(GHG)*1の削減が世界規模の切実な課題となっています。気候変動への取組みは2015年9月に国連サミットで策定されたSDGs*2の一つにも掲げられているほか、同年12月の地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定の採択でも注目を集めました。パリ協定では、産業革命以前と比べて地球の平均気温の上昇を2 ℃より十分低く保つとともに、1.5 ℃以下に抑えるよう努力するという合意がなされ、この取決めは世界各国におけるGHG排出削減の動きを加速させたといえます。国内においても、2020年10月26日の臨時国会で、2050年までにGHG排出量を実質ゼロにするという「2050年カーボンニュートラル宣言」が発表され、様々な取組みが進められています。
こういった動きに先駆け、省エネルギーを軸としたCO2削減に積極的に取り組んできたazbilグループでは、2020年1月に「2050年温室効果ガス排出削減長期ビジョン」を策定。現在はそのマイルストーンとして2030年を見据えた長期的な定量目標を設定し、事業活動と環境対策を統合する「環境統合型経営*3」の試みをグローバルに展開しています。また、SDGsを経営の重要な道標とし、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献と持続可能な成長を目指し、azbilグループならではの取組みで脱炭素社会の実現に貢献する活動を推進しています。
急速な脱炭素化の潮流の中でGHG削減目標値を上方修正
azbilグループにおける脱炭素社会実現に向けた取組みは、自らの事業活動とお客さまへ提供した製品やサービスを通じた活動の大きく二つの側面で捉えることができます。一つ目の自らの事業活動における環境負荷低減では、2030年までのazbilグループの事業活動におけるGHG排出量(スコープ*41+2)について、30%削減(2013年基準*5)することを2019年に公表。この目標値は、パリ協定の「2 ℃目標」を達成する上で科学的な根拠があると認められ、SBTイニシアチブ( 以下、SBTi)*6による認定を取得しました。さらに、近年の急速な社会全体での脱炭素化の動きを受け、2021年8月、その目標を55% 削減(2017年基準)に上方修正しました。この目標が、産業革命前と比較して気温上昇を1.5 ℃未満に抑える水準と整合した「1.5 ℃目標」として、SBTiに再認定されています。
こうした目標を達成するためには、まず事業と一体で環境対策を強化する必要があります。アズビル株式会社では、ビルディングオートメーション事業、アドバンスオートメーション事業の両事業において、エネルギー消費の見える化・分析を支援するシステムなど、多彩な省エネ技術を培ってきており、そのシステムを活用してazbilグループ内における省エネルギーや節電の推進に取り組んでいます。そのほか、事業活動にかかわる設備や機器の高効率化を行い、営業車をガソリン車からハイブリッド 車、電気自動車(EV)に置き換えるといった広範な取組みを進めることで、徹底した省エネ化を図っています。
さらにスコープ2については、azbilグループの主要拠点における再生可能エネルギーの調達比率を高めていくという取組みを推進しています。既にスペインのアズビルテルスター有限会社の工場や、福島県にあるアズビル金門原町株式会社において、再生可能エネルギー調達比率100%を達成しています。
持続可能な社会の実現に向けた環境面でのazbilグループの取組み
多彩なソリューションの提供によりお客さまの現場で省エネルギーを支援
azbilグループにおける脱炭素社会に向けたもう一つの取組みが、製品・サービスの提供を通じた地球環境への貢献です。建物設備の省エネ運用を支援する自動制御システムや、生産プロセス装置の安定化・最適化を実現する制御高度化ソリューション、各種のエネルギーマネジメントソリューションなどの提供を通じ、お客さまの現場での事業活動にかかわる省エネルギーの実現に貢献しています。2020年度はazbilグループのお客さま現場において294万トンCO2/年の削減効果を実現。これは日本の排出量 約12億トンCO2/年の400分の1であり、azbilグループの事業活動に伴うCO2/年排出量 1.7万トンCO2(2020年度)に対して約170倍の環境負荷低減に貢献していることになります。2030年度にはこれを340万トンCO2/年にまで拡大するという目標を掲げています。
またサプライチェーン全体にかかわる間接排出(スコープ3)、つまりazbilグループが提供する製品・サービスをお客さまの現場でご利用いただくことや、調達部品を供給するサプライヤー側での生産活動におけるGHG排出量については、2017年基準で20%の削減目標を定め、これもSBTiによる認定を受けています。その実現に向け強化しているのが、製品の小型化や、必要となる部品点数をできるだけ減らすなどによる省資源設計と、製品自体のエネルギー効率を高める省エネ設計という二つのアプローチによる環境配慮型の製品設計です。加えて新たなSDGs目標として「すべての新製品を100%リサイクル可能な設計とする」を定めました。従来、各種製品には複数の素材を組み合わせたものが多く、廃棄する際に分解できずにリサイクルができない事例も多くあります。利用可能な最良の技術(BAT*7)の範囲において、お客さまが廃棄する際に適切に分解・分別され、リサイクルができるように、製品の設計段階から最終処分を意識したモノづくりに取り組んでいきます。
azbilグループでは、2050年におけるカーボンニュートラルの実現達成に向け、互いにゴールを共有し合った国内/海外のグループ各社が、取組みのロードマップの策定を継続的に進めています。こうした取組みが評価され、2021年12月には国際環境非営利団体であるCDP*8により、「気候変動」と「水セキュリティ」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価され、「気候変動」においてAリスト(最高評価)に選定、「水セキュリティ」においてA-(マイナス)の評価を獲得しました。
今後もazbilグループでは、世界共通の切実な社会的課題である地球温暖化、気候変動の重要な対策となる脱炭素社会の実現に向け、真摯に取り組んでまいります。
*1:温室効果ガス(GHG)
大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体の総称。
*2:SDGs(Sustainable Development Goals)
2015年の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標のこと。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17のゴールと169のターゲットが示されている。
*3:環境統合型経営
脱炭素化・資源循環・生物多様性保全などの幅広い環境活動が統合的に事業に取り込まれた経営。
*4:スコープ
スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3:事業者の活動に関連する他社の排出(スコープ1、スコープ2以外の間接排出)
*5:2013年基準
SBTイニシアチブ(*6)にて正式に認定された目標は、基準年、目標年ともに年度表記であり、本目標での年表記は年度を示しています。
*6:SBTイニシアチブ(SBTi)
温室効果ガスの排出削減目標(SBT)を達成するために、2015年にCDP(*8)(気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体)、WR(I 世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)、UNGC(国連グローバル・コンパクト)が共同で設立した団体。企業のCO2排出量削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ。
*7:BAT(Best Available Technology)
経済的および技術的に実行可能な最も効果的な技術。
*8:CDP
企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、110兆米ドルを超える資産を保有する590強の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。
この記事は2021年12月に掲載されたものです。