グローバルでの競争力強化に向け流量試験設備を新設
― 国際標準に適合したバルブの製品特性データを開示できる体制を整備し市場の要請に応える ―
国内バルブ市場におけるパイオニア的存在として、多彩な製品ラインアップで各分野のお客さまのニーズに応えるアズビルでは、グローバル市場における製品競争力の強化を念頭に、国際標準にのっとった試験が行える流量試験設備を新たに設置。より広範囲で詳細な製品特性データを実測し開示できる体制を整えるなど、市場の要求を満たすことで、製品のさらなるグローバル市場での競争力強化を目指しています。
国際規格に準拠した流量試験によりグローバル市場の要件を満たす
創業以来、計測と制御の技術を基に「人を中心としたオートメーション」を追求してきたアズビル株式会社。コントロールバルブ(調節弁)を初めて国産化したパイオニアとして認知されています。現在も国内有数のメーカーとして多様な用途、口径などのラインアップを備えた工業用および空調用バルブ製品を国内外の市場に供給し、azbilグループの展開するビルディングオートメーション(BA)事業、アドバンスオートメーション(AA)事業各領域におけるお客さまの幅広いニーズに応えています。
さらにアズビルでは、グローバル市場におけるビジネス強化を推進しており、特にAA事業においては、より国際競争力のあるバルブを提供することを目指しています。これに伴いアズビルは、バルブの高い制御性能を実現するというニーズに対応した上で、技術の研究とグローバル市場の幅広い要求に適合した製品を開発し、新たに設計した製品の特性を正確に検証・評価するため、流量試験設備を新設しました。
バルブの技術研究・製品開発において新規設計の詳細な検証を行うには、実機による試験・評価が不可欠です。これまでアズビルでは、これらの研究・開発において必要となる各種の試験や特性値計測などを、BA事業領域向けの空調用バルブについては藤沢テクノセンター内の設備で、AA事業領域向けの工業用バルブについては湘南工場の設備で実施していましたが、AA事業領域向けの工業用バルブの高い圧力条件下での特性データを取得するには限界がありました。一方、今日のグローバルに拡大が進むバルブ市場においては、IEC*1(国際電気標準会議)が国際規格として定めたバルブの試験方法や設備にのっとった試験を行い、各種条件下における係数(Cv値、FL値、xT値)*2の実測による値を開示することが一般的になっています。流体制御に関するビジネスを展開するメーカーとして、バルブ製品の各種データを実測値で計測し、流体制御技術力の優位性を市場に示すことはグローバルでの競争力獲得の上から必要不可欠でした。
水用流量試験設備(試験エリア)。口径に合わせて対応する配管に試験対象のバルブを設置して試験を行う。
国内に類例のない設備を整備、試験プロセスの自動化も推進
新設備の設置に際し、アズビルでは2016年からazbilグループ企業内の候補地を調査し、設置スペースや電力事情、将来の運用上のリスクなどを総合的に検討した結果、アズビル京都株式会社の既存建物内に流量試験設備を新設することを決定。アズビル京都は、アズビルの流量計測機器の中核工場として電磁流量計の一貫生産を担っており、国内最大規模の流量校正設備を有しています。そうした流体計測のための設備を備えていることからも、設置場所として最も適していると判断されました。
その後、2020年11月から建築・機械設備の設計に着手し、2022年7月に竣工、同年8月に流量試験設備の運用を開始。新しい試験設備では、水ならびに空気の試験が可能で、IECなどによる国際規格に準拠する評価試験手順を制御ロジックとして組み込み、アズビルの協調オートメーションシステム Harmonas-DEO™による運転管理を行っています。設備の具体的な特徴としては、まず液体(水)の試験設備について、容量300トン規模の地下水槽を設置して試験環境との間で循環させ、最大圧力3.25MPaでの試験が可能となっています。また、気体(空気)流量については、10m3タンクを6基設置して空気を貯蔵し、最大圧力3MPaでの試験を実現しています。大流量を扱える気体試験設備としては、国内ではこれまでほとんど例のないものであり、アズビルにとってチャレンジングな取組みだったといえます。
さらに今回の流量試験設備は、アズビルが有する計測・制御にかかわるノウハウを活かした取組みとしてHarmonas-DEOを活用し、試験プロセスの自動化を行っています。これにより、試験にまつわる作業の省力化はもちろん、人的ミスを防止できるなど安全面での効果が見込めるほか、遠隔地からの試験実施に向けた可能性も広がってくるものと期待しています。
空気用流量試験設備(流体騒音計測用無響室)。無響室内にバルブを設置して試験を行うことで、空気が流れたときの騒音特性の計測も可能。
大流量の空気をそのまま屋外へ排気することを避けるため、消音装置を通し、減速させてから屋外に排気する。
新たなバルブ研究・開発に活用し、グローバルな価値提供を目指す
アズビルがグローバル市場で競争優位性を発揮できる製品の開発に注力していく上で、今回新たに設置された流量試験設備は、新規バルブ製品の開発や新たなバルブの技術研究の検証といった場面で重要な役割を果たし、多大な成果を上げていくことが期待されます。さらに、国際標準*3にのっとった設備で計測することで、各種条件下における係数(Cv値、FL値、xT値)について計算による推定値ではなく、実測による数値の開示が可能となり、従来は登録されていなかったグローバルなバルブ市場で広く利用されているバルブ選定ツールにもアズビルのバルブが登録可能な環境が整いました。このことが、アズビル製バルブ製品のグローバル市場での競争力の強化へと確実につながっていくと期待できます。
今後もアズビルでは、コントロールバルブのパイオニアとして長年にわたり培ってきた技術力、ノウハウを最大限に活用し、国内、そしてグローバルのお客さまのニーズに応える、より高度な価値提供を目指していく意向です。
*1:IEC(International Electrotechnical Commission)
国際電気標準会議。電気および電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関で、各国の代表的標準化機関から構成されている。
*2:Cv値、FL値、xT値
Cv値:流体の流れやすさを示す固有の係数、FL値:閉塞流れを起こす圧力条件を決める係数(液体)、xT値:閉塞流れを起こす圧力条件を決める係数(気体)。
*3:国際標準
IECが公開した国際標準のIEC 60534-2-3に準拠。IEC60534-2-3とは、工業プロセス用調節弁の流れの容量における試験手順に関する規格。
※Harmonas-DEOは、アズビル株式会社の商標です。
この記事は2022年10月に掲載されたものです。