HOME > アズビルについて > 会社PR > azbil MIND > 顧客とともに半導体製造における課題解決に取り組む

顧客とともに半導体製造における課題解決に取り組む

― 継続的改善と革新マインドでお客さまの課題解決を支援。高度化・微細化し、進化していく半導体の製造技術にも対応 ―

センシング技術を中心に、主に半導体市場向けにおよそ20年にわたって真空計を提供してきたアズビルでは、半導体製造における成膜、エッチングの工程に用いられる隔膜真空計の経時的な精度変化の課題に対応するサファイア隔膜真空計をリリース。常に未来を見据えた革新的スタンスで現場に密着し、お客さまの課題解決に向け継続的改善に取り組むことが、ユーザに価値を届ける原動力となっています。

半導体製造装置向けの真空計において経時的な精度変化が切実な課題

スマートフォンやタブレット、パソコンをはじめ、家電製品や自動車など我々の日常生活において活躍する様々なデジタル製品を機器の内部で支えている半導体。その市場は大きく成長し続け、より高度かつ微細な半導体を製造するために、素子や技術も進化してきました。アズビル株式会社では、半導体製造装置に組み込まれるセンサ類を供給し、20年以上にわたり半導体産業に貢献してきました。そして近年、力点を置いて取り組んできたのが隔膜真空計です。半導体製造には、薄い板状のウエハ上に配線やトランジスタの材料になる薄膜を形成する成膜、また不要部を除去して所定の形状に加工するエッチングという工程があります。これらの工程は、不純物の少ない環境で、なおかつ適正な真空度に維持した真空チャンバの中で行う必要があります。その際、真空チャンバ内の真空状態を高精度に計測するために用いられるのが隔膜真空計です。真空計内部は、高真空状態にある基準室と測定室がダイアフラム(隔膜)で仕切られています。測定室の超微小な気体の圧力変化により基準室との圧力差が生じた際のダイアフラムのたわみから真空状態を計測する仕組みです。

従来、このダイアフラムの材料にはニッケル合金箔(はく)が広く用いられてきましたが、成膜中に膜の原材料がダイアフラム上に堆積したり、エッチングの工程で使用するフッ素系や塩素系のガスによりダイアフラムそのものが腐食することにより真空計そのものの基本精度が変化するという課題が長年ありました。

材料にサファイアを適用することで耐食性、再現性を高める

こうした課題に対しアズビルは、ダイアフラムの材料として、耐食性が高いサファイアを適用してはどうかと考えました。単結晶構造のサファイアは腐食性ガスに対する耐食性も高く、熱変化などに対する安定性にも優れています。そのため、計測機器として計測値の再現性にも優れており、計測精度を高めることができます。一方、サファイアは加工が難しいため、製品化に向けて新たなMEMS*1加工技術や信号処理技術、センサパッケージの開発に取り組みました。

そして2006年から極めて薄い人工サファイアのチップを用いた「サファイア隔膜真空計」の開発を開始。2011年には、成膜やエッチングのプロセスにおける経時変化による真空計の精度劣化という課題に対し、技術的な改良を加えた形 SPG5/6をリリースしました。

同製品では、膜の原材料の堆積により不要なたわみが生じないように、中央部分をわずかに薄くするという独自形状のダイアフラムを開発。また、不均一な堆積がたわみの原因となることから、ダイアフラムを覆うサファイアの円盤に細微な穴を開けて特定の場所に意図的に堆積させ、たわみによる計測誤差を小さくするという対策も行っています。さらに堆積自体を抑えるために、ダイアフラムの手前におよそ4000本の通り道を設け、膜の原材料を除去するフィルタの役割を果たすトラップ構造を開発。こうした加工技術と開発者の創意工夫により、計測誤差発生の大幅な低減を実現しました。

サファイア隔膜真空計 形 V8C/V8Sに施された課題解決策

サファイア隔膜真空計 形 V8C/V8Sに施された課題解決策

お客さまのニーズを聞き、継続的な改善と価値を提供

現状、国内の半導体市場向けの真空計は、海外製品のシェアが高い状態ですが、アズビルは国内のメーカーとして、これまでお客さまのニーズに対応した製品を生み出してきました。その背景には、アズビルがベンダーとして製品を提供するだけではなく、研究開発部門の担当者が実際に半導体の製造にかかわるお客さまの現場を訪れ、直面している課題を研究開発にフィードバックし、改良、開発を重ねてきた経緯があります。

半導体製造プロセスでは、技術の発展とともに、革新的な素子や加工のための新種のガスが利用されています。こうした新しいガスは真空計内部への原材料の堆積や腐食の状態に影響を及ぼし計測精度に変化が起こる原因となるため、お客さまのニーズに合わせて真空計の改良を続ける必要があり、半導体機能が向上していく限り終わりがありません。アズビルではお客さまの現場の声に常に耳を傾け、製造現場の課題解決に向けて継続的改善に取り組んでいくところが強みとなり、製品の開発につながってきました。

さらにアズビルでは、海外製品に代わって国内の真空計市場を凌駕(りょうが)していきたいというチャレンジ精神を持って、製品の競争力を高める取組みを強化しており、サファイア隔膜真空計の新製品 形 V8C/V8Sをリリースしました。形 V8C/V8Sでは、200~250 ℃という高温の環境でも利用することができることに加え、新型フラットセンサや凸凹センサ等の開発によりエッチング工程で使用するガスの変更などにも柔軟に対応できる用途適合性をMEMSの加工技術により高めています。加えて昨年には、アズビルの開発拠点である藤沢テクノセンターにMEMSの開発に特化した本格的なクリーンルームを整備するなど、新たな開発拠点を設置し、研究開発と生産が一体となった生産体制を整え、強化しています。

耐食性・再現性・安定性に優れた隔膜真空計で、定期的な調整の頻度や時間を低減させることは、半導体市場のお客さまの生産性向上を支援するとともに、広い目で見れば半導体の機能が向上することにより、スマートフォンをはじめとする社会のあらゆる電子機器やインフラが高度化していくため、技術革新を続ける社会への貢献にもつながります。今後もアズビルでは、「お客さまとともに現場で価値を創る」というグループ理念の下、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を通じ、未来を見据え、半導体技術の革新に伴い日々変化するお客さまの課題に真摯(しんし)に向き合い、お客さまとともに課題を解決してまいります。

*1:MEMS
半導体製造技術を基にした微細加工技術などを応用し、シリコンなどの基板を用いてセンサ、電子回路などの機械要素部品を集積させた超小型デバイス/システム。

この記事は2023年03月に掲載されたものです。