働きの創造の場、進化し続ける新実験棟がオープン
未来のオフィス空間を創造・実証する協創の場
2022年9月、アズビル株式会社の研究開発拠点である藤沢テクノセンター内に、新実験棟、第103建物が誕生しました。オフィスで仕事をするのが当たり前だった時代から、テレワークが普及し働く場所を選べる時代へと変わった今、オフィスで働くことの意義や執務環境の大切さが見直されています。アズビルは、ニューノーマル時代に求められる理想のオフィス実現に向け、計測や制御の技術、クラウドサービスなどを活用したソリューションを提案してきました。第103建物は、そうしたソリューションを検証する実験の場であると同時に技術のショールームとしての機能を持ち、ワークスペースとしての役割も担っています。
人々の快適を追求し進化し続ける施設として、これまでのショールームとはまた違う、新しいコンセプトの下に誕生した第103建物。その取組みを詳しくご紹介します。
藤沢テクノセンター内に誕生した第103建物
第103建物 1階のワークスペース
人に寄り添う空調システムで快適なオフィス空間を実現
第103建物では、働く人に寄り添うことで、誰もが快適に、安心して働くことができる未来のオフィス空間を追求しています。例えば、広いオフィス空間でも、細かいエリアごとに空調の設定ができるシステムを導入することで、自分に合った環境の下で働くことができるようになります。また、体感温度が異なる人の集まるオフィスでは、快適と感じる室内環境は人によって異なりますが、アズビルでは室温制御に、暑い、寒いといった体感を取り入れており、オフィス内の温度が暑いと感じたときや寒いと感じたときに、自身の端末から「暑い・寒い・快適」という体感を申告することで、申告者の周辺を快適な温度に変更することができます。これにより、その場で働く人々にとって快適な温度を保つことが可能になります。この申告型空調システムを第103建物の1階ワークスペースに導入し、実証を行っています。
スマートフォンなどの端末から体感を申告
計測技術の活用により、環境にも配慮
建物の価値を高める上で欠かせないのが省エネ対策と環境への配慮です。第103建物では、赤外線アレイセンサを使ったシステムで空調と照明の制御を行っています。このシステムは物体が発する赤外線を検知するので、人がいるか、いないかを正確に見極めることができます。人がいるエリアでは適切に空調を行い、人がいなくなると空調の風量の抑制や照明の消灯を自動で行うことで、省エネルギーに貢献します。
また、人を検知する機能を活かして、食堂の混雑状況の確認や、換気システムと連動して新鮮な外気を取り入れることもできます。感染症対策にも効果的な機能として、2階の食堂で検証を行っています。
さらにアズビルは、お客さまやほかの企業との協創を行いながら新たな領域にチャレンジしています。例えば、空調と照明の連携を2階の食堂で検証しており、空調のダクトには段ボールダクトを採用して環境負荷を軽減することや、空調の熱源に太陽熱エネルギーを有効活用するといったことも行っています。
第103建物 2階にある食堂
屋上に設置された太陽熱エネルギー設備
お客さまや社員の声を取り入れて成長し続ける建物
第103建物では技術のショールームとして、来訪いただいたお客さまにアズビルの製品を実際に見て、試して、体感いただくために新たな見せ方を試みています。AR(Augmented Reality:拡張現実)もその一つであり、通常は人目につかないところで活用されるアズビル製品の効果をより分かりやすく伝えています。
アズビルの製品、取組みを知っていただき、お客さまから新たなニーズやアイデアの情報交換を行いながら、人へのやさしさを未来につなぐ製品づくりの協創の場となるように。これからも進化し続ける第103建物にどうぞご期待ください。
蓄熱槽や空調吹出口にARのアプリケーションが入ったタブレットを向けると、蓄熱槽内や吹出口周辺の温度の変化を目で見ることができる。
完成することなく進化を続ける建物とともに
設計を担当するにあたり、アズビルからの要望は、建物そのものがアズビルの技術による省エネ効果や人への快適性を確認・検証する実験装置の役割を担うものにしたいということでした。第103建物では、導入している技術のショールームとしての役割を持たせ、訪れた人たちには多くの製品や技術を見てもらうと同時に、それらが建物の省エネルギーや居住者の快適さに貢献できるということを実感してもらえる施設になるよう、見せ方にこだわり、見学する際のルートや施工方法、色使いなども考えて設計しました。
建物全体の環境負荷の低減にも配慮し、建築資材の使用量削減と二酸化炭素の排出抑制にも取り組みました。その一環として採用したのが段ボールダクトです。金属製と比べて製造時・運搬時に排出する二酸化炭素が少なく、軽量かつ保温工事が不要なので施工に伴う負荷も軽減できます。第103建物は技術のショールームとして、あえて天井を張らずに「見せる設備」にしましたが、それにより内装材削減にもつながりました。
人への快適という点では、照明と空調を連動させる取組みに挑戦し、食堂のスペースで検証しています。このエリアでは涼しい温度の空間は寒色かつ高照度の照明に、暖かい温度の空間は暖色かつ低照度の照明にしています。温度を見える化することで、利用者は好みの空間を選ぶことができ、快適性が向上すると考えました。
また、寒色の照明は涼しさを感じ、暖色の照明は暖かさを感じる効果により、空調の温度設定が同じでもより快適に感じることや、あるいは消費エネルギーの小さい照明により空調の温度設定を緩和できることを期待しています。
今回のプロジェクトのためにアズビルとは何度もブレインストーミングを重ねましたが、「人を中心としたオートメーション」を掲げる企業として常に人を中心に考えていることが印象に残りました。
完成することなく進化を続ける建物とともに、アズビルの製品やシステムがかなえるウェルネスなオフィス空間の姿を、第103建物を通してPRするお手伝いができればと考えています。
照明を「光」として捉えることで新たな価値が生まれる
「空調と照明を連動したい」というアズビルの要望から、第103建物に納品した照明設備はすべて、「DALI(Digital Addressable Lighting Interface)」という照明制御システムを採用しています。DALIは国際標準規格に準拠したオープンプロトコルが特徴の一つであるため、規格に対応した幅広い製品を接続・管理できるだけでなく、中央監視システムと連携した制御もできるのが決め手でした。これにより、照明器具の更新の際には、オーナーのニーズに沿った照明機器を幅広く複数のメーカーからも選ぶことができますし、中央監視システムから照明の操作や状態確認ができ、空調との連動も可能になります。またDALIは、一つひとつの照明器具にアドレスを持たせることができるので、それぞれ個別にON・OFF、調光、調色の制御ができるのも特徴です。寒色と暖色の照明がある第103建物2階の食堂では、この特徴にさらに照明の色みがシームレスに切り変わるモードを組み込んだ照明制御で、利用者が違和感なく過ごすことができる空間を演出しています。
DALI照明を中央監視システムに連動させたこのプロジェクトではほかにも多くの収穫がありました。
中でも調光にアズビルが「隣接在」という概念を取り入れていることです。これは、人がいる場所だけでなく、その隣接エリアも「在」と見なすという考え方です。例えば、広いフロアで自分のいる場所(エリア)だけが明るくなると、周辺との明暗の差異に居心地の悪さを感じる場合があります。そうしたケースでは、隣接エリアもある程度の照度を確保することで、快適性を損なわずに、制御で照明電力を削減することができるという新しい知見を得られました。人がいないエリアも必要最小限の明るさで照らすことができたのは、DALI照明と赤外線アレイセンサが連動したことで実現できました。
これからの時代、照明の価値は大きく変わっていくと思います。分野や業種を超えた様々なモノ、コトにつながることで、多様な環境やライフスタイルに合わせたより豊かな暮らしを、照明を通して創造、提供していくことが照明の価値を高めることになると考えます。
今後もアズビルとの協業により、空調制御と照明の可能性を広げ、建物内居住者へ新たな価値を提供することを目指していきたいです。
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この記事は2023年04月に掲載されたものです。