GX推進でカーボンニュートラル実現へ貢献
― GXにかかわる施策を事業横断で展開する専門組織を設置。外部企業との協業も含めてソリューションを広げ社会課題解決に貢献 ―
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、アズビルが成長事業領域と定める「新オートメーション事業」「環境・エネルギー事業」「ライフサイクル型事業」という三つの領域を横断する形でグリーントランスフォーメーション(GX)の活動を推進する専門組織を創設。外部企業との連携、協業といった取組みにより、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を目指しています。
GX推進のための各種施策の展開を既存事業の枠を超えて担う専門組織を設置
地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、世界各国で取組みが加速しています。政府からは2050年までに温室効果ガス(GHG)*1の排出を全体としてゼロにするという「カーボンニュートラル」が宣言され、脱炭素社会の実現へ向けた各種施策が進められています。そのような中、カーボンニュートラル実現に向けて、社会全体の変革を目指す「GX*2」の推進は、様々な業界・業種において、社会課題解決への貢献とともに大きな事業機会として、取り組むべき重要な経営課題となっています。
azbilグループでは、「人を中心としたオートメーション」の理念の下、長年にわたり事業を通じてお客さまの現場で省エネルギーの実現に取り組んできており、CO2排出量削減など、人の活動と切り離すことができない事業に数多く携わってきました。昨今のエネルギーの高度利用や労働力人口の減少など現代の社会を取り巻く「新たな社会課題」の解決を事業機会に、2030年度 売上高 4,000億円・営業利益600億円規模を目標とする長期経営計画の達成に向けて新規事業領域の開発にも積極的に取り組んでいます。これを受け、既存のビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)といった事業の枠を超えて、GX推進を担当する専門組織として2022年4月に発足したのが「GX推進部」です。「新オートメーション事業」「環境・エネルギー事業」「ライフサイクル型事業」という三つの成長事業領域のうち、特に「新オートメーション事業」と「環境・エネルギー事業」にフォーカスし、その実行組織として各種施策を展開・推進しています。
外部組織との協業を積極的に展開し、より新しい事業領域を拡大
新オートメーションの領域では、工場やプラントにおける製造プロセスの「自律化」実現に向けて要素技術の獲得や研究、自社製品への実装を進めています。この自律化は、自動化や最適化という形で製造現場や建物管理の効率や品質の向上に貢献してきた従来型のオートメーションシステムから、いまだに人手に委ねられている問題発生時の原因調査や対策実施の意思決定などをシステム側が自律的に進めることを目指すものです。自律化の機能を適用し、高度制御を活用してプラントを自律的に安定稼働することや、IoTを活用して最適なタイミングでメンテナンスを実施することは、省エネルギー・脱炭素の実現にもつながります。さらにAIを活用してプラントの挙動を予測し、それに対応できるシステムを準備することでオペレータの心的負担を軽減する効果も得られます。またプラントの運用から長期的に蓄積されたデータやリアルタイムで収集できる制御上の運用データを利活用し、例えば今まで高度制御を導入することが難しいとされていたバッチプロセス*3に対して制御改善を実施し、省エネルギーや歩留まりの改善、効率化の推進や品質向上に役立てられます。
環境・エネルギーの領域では、カーボンニュートラルの達成を事業目的とする外部組織・企業への出資、ならびに業務提携を通じた事業開発をさらに加速していきます。アズビル株式会社では、これまでも電力システム改革への積極的な参画としてディマンドリスポンス(DR)*4を活用し、バーチャルパワープラント(VPP)*5 の取組みに参画、アグリゲーター*6 の役割を担ってきました。また、NTTグループなど5社との協業によるオフィスビルをはじめとする大規模施設のCO2 排出量削減に関する取組みを進めてきました。今後はこれらの取組みに加えて、再生可能エネルギーの調達や出力変動が大きい再生可能エネルギーの有効活用を推進していきます。その実現を目的に、グリーン電力ソリューションに強みを持つ株式会社クリーンエナジーコネクトに出資し、業務提携を行いました。これにより建物における再エネ利用率の向上を図り、お客さまのカーボンニュートラルを支援します。また、改正地球温暖化対策推進法に基づくファンド事業を展開する株式会社 脱炭素化支援機構にも出資を行い、脱炭素に資する新たな事業機会や、これまで参入できなかった分野での脱炭素に取り組む事業者とのパートナーシップなどの創出を目指していきます。
さらに、エネルギーの高度利用やエネルギー転換に向けて、アズビルの技術を活かせる市場や分野の検証を進めることに加え、2019年以降注力してきた各種エネルギーデータの利活用について、エネルギーマネジメント領域における協業の事業コンセプト「DX-EGA™」を推進しています。DX-EGAとは、アズビルとアズビル金門株式会社、および株式会社 東光高岳、東光東芝メーターシステムズ株式会社との4社協業体制により、スマートメーターから収集した各エネルギーデータ(電力:Electricity、ガス:Gas、水道:Aqua)を統合的に把握、分析して活用する取組みです。このエネルギーデータを軸として様々な領域でDXを支援することで、新たな価値の提供を目指しています。例えば、金融機関が提供する、CO2 の排出量算定や削減の支援サービスにアズビルの環境・エネルギー関連の技術の提供を行い、今までアズビルが蓄積してきたノウハウを基にGHG排出量の算出や可視化に貢献しています。企業や業界の枠を超えた協業により、アズビルの技術や商品を活用できる領域を拡大していくことが、GX推進につながると考えています。
他社との事業提携、出資による事業開発の取組み
社会の課題解決、変革に必要なのは「競争」よりも「協創」
経済産業省が2022年2月に発表した、GXに取り組む企業群が一体となって経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場創造を目指すための場となる「GXリーグ基本構想」にも、アズビルは積極的に参加しています。カーボンニュートラルという大きな社会課題を解決していくには、単一企業による努力だけでは難しく、自社が取り組んでいる領域や市場を超えたあらゆる企業との連携が重要なテーマとなってきます。このような意味でGXの推進には、「競争」よりも「協創」が重要であると考えており、単一企業だけでは解けない社会課題に対して、必要に応じてアズビルの技術やノウハウを協業先とも共有し、一緒に解決していこうという狙いです。今後もさらに広範な外部組織・企業との積極的な連携・協業を進め、商品力や価値提供の強化を精力的に進めるとともに、お客さまの事業への貢献・社会貢献を拡大し、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を果たしていきたいと考えています。
※DX-EGAは、アズビル株式会社の商標です。
*1:温室効果ガス(GHG)
大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体の総称。
*2:GX(Green Transformation)
温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを経済成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力向上の実現に向けて経済社会システムを変革すること。
*3:バッチプロセス
製造工程で、ある程度まとまった時間や単位操作ごとに処理を区切り、処理ごとに都度中身を入れ替える方式。
*4:ディマンドリスポンス(DR)
需要家側のエネルギーリソースを制御し、電力の需要を増減させることで、需給バランスを取ること。
*5:バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)
仮想発電所。再生可能エネルギーや需要家側が所有するエネルギーリソースといった新しいエネルギー源を、あたかも一つの発電所のように機能させ、社会の需要を満たす電力システムとして機能させようという考え方。
*6:アグリゲーター
複数の需要家と電力会社の間に立って、電力の需要と供給のバランスをコントロールすることや、各需要家のエネルギーリソースを最大限に活用することに取り組む事業者。
この記事は2023年06月に掲載されたものです。