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アクチュエータの技術開発を主導する専門組織を設置

― 事業を横断した広範な製品分野への展開につなげる体制を整備し、計測・制御メーカーとしてのさらなる事業拡大へ向け技術基盤を強化 ―

アズビルでは長年にわたるバルブ製品の提供の中で培ってきたアクチュエータに関する技術開発力をさらに飛躍させるべく、アクチュエータ開発本部を設置しました。バルブに限らない、より広範な製品領域への展開を目指したスタディや新たな技術開発を推進する同本部には、azbilグループ全体の事業成長への貢献が期待されています。

長年にわたるバルブ製品供給の中で進化させてきたアクチュエータ技術

アズビル株式会社では1906年の創業以来、「技術の力で人々を苦役から解放する」という創業者の想いを継承し、「人を中心に据えて課題を解決する」という発想の下、オートメーション技術を培ってきました。特に、プラントや工場の生産プロセス、ビルの空調を制御する上で不可欠なバルブ製品において、アズビルは、1936年に日本初とされている国産コントロールバルブを生産し、同領域のパイオニアとして現在の地位を築いています。

バルブ製品の歴史において、流量を自在に制御する機能を備えたコントロールバルブ(調節弁)の登場は、最大の技術革新とされています。流量の制御は入力された信号に応じて弁の開度を調整することで行いますが、その開閉操作を担っているのがアクチュエータです。一般にアクチュエータとは、電気や空気圧、水圧、油圧といったエネルギーを、モータなどにより機械的な動作に変換する装置全般を指し、バルブの場合はバルブに取り付けられた駆動部であり、電気や圧縮空気などによって弁の開閉を行います。

大学や異業種との協業により技術の新たな可能性を探究

アズビルではバルブ製品開発の一環として、長年にわたりアクチュエータ開発に取り組み、技術を進化させてきましたが、このアクチュエータ技術にかかわる研究・開発の成果をより広範な製品分野へ展開していくことを目的に、アクチュエータ開発本部を2023年4月1日付で発足させました。同本部は、バルブ開発のほか、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の各事業を横断し、計測・制御メーカーとしての将来を見据え、技術基盤の強化を担う部門です。

これまでもアズビルでは、主にバルブ製品への実装を意図したアクチュエータの研究を、大学をはじめとする外部機関と共同で続けてきましたが、今後はそういった大学や異業種との協業をさらに強化していく方針を掲げています。その一例として挙げられるのが、周辺環境からのエネルギーを電力に変換し活用するエネルギーハーベスティングと呼ばれる技術をアクチュエータに応用した無給電バルブの研究です。具体的には、バルブ内の流体を遮断した際に弁に加わる運動エネルギーや、稼働しているバルブから生じる振動のエネルギーなど、バルブの稼働によって生じるエネルギーを回収し、それを基にタービンを回して発電を行い、回収したエネルギーをバルブ駆動のための動力源として活かすといったものです。こうした技術によりバルブの動作に必要なエネルギーが自給自足できれば、電力消費の低減はもちろん、将来的にはバルブ設置のための配線を不要にし、設置場所を選ばず、工期を短くすることも期待できます。そのためのメカニズムや、そうした仕組みに最適な弁の羽根の角度や形状、材質などの研究を大学などと共同で進めています。

また、アクチュエータの制御にかかわる研究も進めています。バルブの稼働環境は現場ごとに異なり、状況によってバルブへ与える負荷も変動します。そうした稼働中のバルブの状態や、環境の変化によって生じる負荷の変動などをアクチュエータで捉え、バルブの制御を行うためのパラメータ(変数・設定値)へとフィードバックしながら、最適な稼働状態を維持するための制御の研究を継続しています。こうした革新的な技術を実現することで、今よりもさらに精度が高い情報を基に不具合の予兆を捕捉し、故障前に修繕や機器交換の対応をすることも可能になることに加え、機器の寿命を予測しメンテナンス計画を立案するなど、大きなメリットがもたらされます。

社内プロジェクトによる市場調査を推進。そのための人材育成にも注力

バルブの開発から始まったアクチュエータの研究ですが、そこで得られた成果と技術は、エネルギーの最適化や各種機器における安定稼働の担保など、広域な分野で価値を生み出すことが期待できます。アズビルでは今後の展開として、現在のアクチュエータ技術の高機能化を進めることに加え、既存のバルブ市場だけでなく、新しい分野への進出も見据えており、アクチュエータ開発本部を中心にしたスタディプロジェクトを発足させました。アクチュエータにかかわる事業の拡大や新規立上げなどを念頭に、ターゲット市場の検討、関連製品や技術の動向に関連する調査などを、順次進めているところです。

また、これらを進めるための開発スキルの蓄積・向上にも取り組んできています。例えば技術開発の分野では、技術者が強化すべき固有技術・管理技術は共通するものが多く、技術者同士がお互いに優れた点を取り入れることで、品質・技術レベルの向上を図ることができます。そこでアクチュエータ開発本部では、ノウハウなどの設計知識、メンバー個人の保有する資格やスキルをデータベース化し、組織として必要な保有技術、個人の目指す技術目標を設定、強化すべき項目をスキルマップとしてまとめて運用しています。これにより技術者が確実にスキルアップできるようになりました。今後も人材育成と技術力強化の側面から、アズビルで2011年から継続的に進めてきたこの取組みをさらに深耕していきます。

azbilグループでは、社会構造・環境の変化に起因する社会課題や顧客ニーズに対して、新たなオートメーション技術で応えていく「新オートメーション事業」、サステナブルな社会の実現に向けた省エネ・省資源に貢献する製品・サービスの提供を核とした「環境・エネルギー事業」、長期にわたり顧客の資産価値を維持サポートする「ライフサイクル型事業」という三つの成長領域を、事業変革の柱に位置付け、各領域の取組みを強化しています。

アクチュエータの技術開発は、いずれの領域にも深くかかわる基盤技術であり、アクチュエータ開発本部は、今後のazbilグループの事業成長に大きく貢献していくことを目指しています。


■ アクチュエータ開発本部の技術活用領域

アクチュエータ開発本部の技術活用領域

この記事は2023年07月に掲載されたものです。