時代の変化に対応する新しいオートメーションを創出
― 持続可能な生産現場・職場環境の基盤づくりに新機軸によるアプローチを展開 ―
2030年度をゴールとする「長期目標」を策定したazbilグループでは、その達成に向けて三つの成長事業領域を定めました。その一つである「新オートメーション事業」においては、これまで生産現場や職場環境を支えてきた従来型のオートメーションだけでは対応できない、経済成長や社会の持続可能性を阻害する要因による影響の解消を目指して、新機軸によるアプローチを展開しています。
- 2030年に向けた長期目標における駆動力となる三つの成長事業領域
- 現在のオートメーションだけでは困難な持続可能性を阻害する要因による影響の解消
- 社会環境の変化に追随し、安心・快適なサービスの提供を目指す
2030年に向けた長期目標における駆動力となる三つの成長事業領域
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」の理念の下、長年にわたり製品やサービスの提供を通じてお客さまの現場における課題の解決に取り組んできました。SDGsが国連で採決された2015年以降はSDGsを経営の重要な道標(みちしるべ)と位置付け、2019年にはSDGsの概念を織り込んだazbilグループの行動指針・グループ行動基準に改定しました。「環境・エネルギー」「新オートメーション」「サプライチェーン、社会的責任」「健幸経営、学習する企業体」の四つの基本目標からなる「azbilグループSDGs目標」を策定し、持続可能な社会の実現へ向け、活動を加速させてきました。さらに、2021年5月に、2030年度をゴールとする、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模の企業体を目指す「長期目標」を掲げ、実現への最初のプロセスとして、2021~2024年度を対象とする「中期経営計画」を策定し、オートメーション技術を共通基盤とした三つの成長事業領域「新オートメーション事業」「環境・エネルギー事業」「ライフサイクル型事業」を核に、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)という三つの事業分野を横断する形で取組みを展開しています。
現在のオートメーションだけでは困難な持続可能性を阻害する要因による影響の解消
これまで工場・プラントの操業やビル設備の管理・運用では、オートメーションが生産性や利便性の向上など、様々な価値を各現場にもたらしてきました。一方で、こうした現場の管理や運用においても高度化・多様化・複雑化が進み、省エネルギーと併せて快適性の向上も目指すなど、社会からの要求もさらに高度で複雑なものになっています。加えて設備の老朽化や就労人口の減少などの課題も持続可能性を阻害する要因となっています。従来型のオートメーションだけでは解決できないこうした課題に対応するには、時代の変化に合わせた新しいオートメーションの創出が不可欠です。
azbilグループでは2023年5月、新オートメーション事業におけるSDGsターゲットとして、「生産現場の内的・外的な事業環境の変化への対応力を高め、さらにストレスなく、多様な働き方につながる職場環境を実現」を掲げました。具体的には、MEMS*1技術を活用したセンサ機器による「計測の高度化」や、従来センサも含め収集データの高度活用による状態表現「データ化」、さらにはそれらのデータに基づきクラウドやAIを活用することで、これまで自動化することが困難とされてきた判断や意思決定までをシステム自ら遂行する「自律化」などの技術的枠組みと、工場・プラントやビルの現場で長年培ってきた課題解決のノウハウや技術力を融合させて、2030年までに、国内外の延べ8,000の事業所で事業環境の変化に強い状態を実現し、延べ600万人に対し持続可能な職場環境を提供することを目指しています。
社会環境の変化に追随し、安心・快適なサービスの提供を目指す
こうした新オートメーション事業コンセプトに基づく製品・サービスの提供は、BA、AA、LAの各事業領域において既に始まっています。例えばAA事業では、プラント操業において重要な役割を果たしているバルブの診断を行うDx*2 Valve Cloud Serviceを提供しています。診断結果はWebコンテンツとして閲覧でき、不具合発生の可能性があると診断された機器は即点検・修理対象とするなど状態基準によりメンテナンスの最適化を図りながら、バルブの故障を確実に防ぐことができます。
またBA事業の領域においては、建物の省エネルギーはもちろん、心身の健康にも配慮したウェルネスやABW(Activity Based Working)*3 への意識も高まっている一方で、建物の運用管理にかかわる専門知識を持った人材の確保が困難という状況にあります。そうした課題を解決する新しいオートメーションとして、ビル管理システムのデータをクラウドに収集・蓄積するビル向けクラウドサービスを提供しています。エネルギー使用量のリアルタイムな集計・可視化をはじめ、設備の保全管理を支援する幅広い機能を提供することで人材にかかわる課題の解消に役立っています。
加えて、建物内の空調については、室内空間を細かいゾーンに分割した制御を実現し、在室する人々が「暑い」「寒い」といった自らの体感を、スマートフォンなどの端末を通じてフィードバックすることで、ゾーンごとに自動的に温度が調節される仕組みを実現し、省エネルギーとともにオフィスの快適性の実現・生産性向上に貢献しています。
さらにLA事業の領域では、ガスメーターの情報をリモートで収集してクラウドサービスで提供するガスミエール™を提供。遠隔からの検針作業が可能になることで人手不足の対応や働き方改革に貢献しています。
このように新オートメーション事業は、機器の故障や就労人口の減少といった経済成長や社会の持続可能性を阻害する要因に対処することに加えて、工場・ビルなどで働く人の働きがいや働きやすさにも貢献することができます。それがお客さまのSDGs目標の達成だけでなく、社会的価値、経済的価値やアズビルの成長・発展にもつながっていくと考えています。変化し続ける社会や事業環境において、オートメーションが果たす役割・貢献領域は今後もさらに拡大していくことが見込まれます。azbilグループでは、「人」を中心とした新しいオートメーションで社会課題の解決に取り組み、様々な変化にもダイナミックに対応できる製品やサービスを提供していきます。
新オートメーション強化事例
※BiG EYESは、アズビル株式会社の商標です。
※ガスミエールは、アズビル金門株式会社の商標です。
*1:MEMS
半導体製造技術を基にした微細加工技術などを応用し、シリコンなどの基板を用いてセンサ、電子回路などの機械要素部品を集積させた超小型デバイス/システム。
*2:Dx
「Dx」とは医療分野で「診断」を意味する「Diagnosis」の略称。バルブの健康状態を把握し、お客さまにバルブを常に安全にお使いいただくことをこの言葉に込めています。
*3:ABW(Activity Based Working)
働く人が仕事をするために最適な環境(場所・時間など)を選ぶことができるワークスタイル。
この記事は2023年11月に掲載されたものです。