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生産能力の向上やBCP対策を目的に新棟を建設

― プリント基板の開発・設計から電子機器の組立てまで、一貫した生産体制の整備により製造業各社のニーズに応える ―

豊かな自然に囲まれた長野県中野市で、電子機器の開発・設計・生産、プリント基板の実装・組立て・検査などの事業を展開するアズビル太信は、1974年の設立以来、高い技術力でazbilグループのものづくりの一翼を担ってきました。2024年3月には、BCP(事業継続計画)や従業員の安全・安心を念頭に新たな工場棟を建設。老朽化した旧工場棟を刷新し、生産能力を向上することで、アズビルをはじめとする製造業各社に向けて、さらに高度な価値提供を目指しています。

アズビル太信株式会社<br> 代表取締役社長<br> 小林 清素<br>

アズビル太信株式会社
代表取締役社長
小林 清素

キートップの受託製作を契機に合弁会社を設立し生産領域を拡大

azbilグループの一員であるアズビル太信株式会社は、1974年に中野プラスチック工業株式会社の創業者である小林鎮雄(しずお)氏と山武ハネウエル株式会社(現:アズビル株式会社)との合弁により株式会社 太信として設立されました。以来、電子機器の開発・設計・生産、プリント基板の実装・組立て・検査などを事業として展開し、2012年にアズビル太信に社名を変更しました。中野プラスチック工業は、第二次世界大戦中に住友ベークライト株式会社が操業していた中野疎開工場を引き継ぐかたちで1957年に創業。プラスチック成形やモールド(金型)製造を手掛けていたことから、アズビルが製造していた、ソリッドステートキーボード(SSK)のキートップの製作を請け負いました。その後、操業を開始したアズビル太信では、SSK本体やマイクロスイッチを使用した照光式押ボタンスイッチ、無接点近接スイッチなど、アズビルの製品を中心に生産を行ってきました。地元産業の発展を牽引(けんいん)する「信州の太陽を目指す」という想いを社名に込め、それを実現すべく、強化していきました。

燃焼制御機器の設計から部品調達、完成品の製造までを一括で対応

1980年になると、SSKは過去最高の受注量を達成し、国内シェアの約4割を占めるほどになりました。一方で、マイコンの出現とそれに伴う技術的進歩を背景に、価格競争が激化し、国内の大手コンピュータメーカーがパソコン製品を相次いで市場に投入する中で、SSKは低価格キーボードに押され、受注量が減少していきました。それを機に、アズビル太信ではアズビル以外のメーカーからの受注を開始し、外販体制を強化。大手コンピュータメーカーを中心に、パソコンなどに用いられる磁気バブルメモリー基板の組立てをはじめ、フロッピーディスクのコントロール基板、パソコンのメインボードやコントロールボードなどの生産を手掛け、プリント基板の高度な表面実装技術(SMT*1)を習得していきました。

1990年代には、アズビルが給湯器メーカーにOEM*2供給する風呂用リモコンやボイラのコントローラといった住宅用燃焼制御機器について、設計から部品調達、完成品に至るまでの一貫生産を担い、給湯器リモコンなど燃焼制御機器関連の受注が拡大していきました。また、アズビルのデジタル指示調節計 SDCシリーズなどの生産を開始。2000年代にはデジタル指示調節計 SDC 形 C40やモジュール形調節計の組立てを、2010年代は外販の半導体製造装置関連製品や電子顕微鏡用基板の生産を、さらに2020年ごろからはアズビルのPLC統合コントローラ DOPL™の生産をスタートし、ユニット品として供給する取組みも始まっています。

生産能力向上を目指した新棟建設で、BCP対策や従業員の安全・安心も実現

こうして、アズビルの製品の製造を担いながら外販体制も整える中、アズビル太信では創業時から稼働している1号棟の増築に加え、会社設立前から中野プラスチック工業の金型工場や倉庫として使用されていた建屋を、2号棟、3号棟として使用し、さらに5号棟を増設するなどして製造フロアを拡張してきました。しかし、生産量の増加に伴い工場建屋が手狭になり、併せて複数の建屋に生産機能が分散していることから生産効率の悪さも課題になっていました。また、2号棟は1970年竣工(しゅんこう)、3号棟は1969年竣工と、いずれも建設から50年が経過しており、老朽化が進行していました。なおかつ水害への対策や耐震性の強化など、安全面での対応も必要になっていました。

そこでアズビル太信では、生産能力の向上や安全・安心、BCPの観点から、2020年に工場棟の再整備を計画。老朽化した2号棟、3号棟を解体し、跡地に新たな6号棟を建設することで分散した生産機能の集約を図るとともに、1号棟については既存の建屋を活かし、必要な箇所に耐震補強を施すことにしました。工事は2021年12月から3期に分けて順次進められ、すべての工事が2024年3月に完了しました。

新設された6号棟は、旧2号棟、旧3号棟と比較して作業エリアが1,635m²拡大し、今後の生産量増加に向けてスペースの課題が解消されました。建設にあたっては、アズビルの湘南工場を見学して参考にするなど、効率のよい生産動線を目指して設計。6号棟西側に設けられたトラックバースを起点に、部品の搬入、工場棟内での生産といった各プロセスを経て、完成した製品がトラックバースから搬出されるようになり、生産の効率化に大きく貢献しています。安全面では、老朽化対策や耐震補強を実施し、浸水への対応も十分に考慮して建物の床高を確保しました。これによりBCP対策を推進することに加え、従業員の安全・安心の実現にもつながっています。また、災害が発生し、アズビルの湘南工場などの生産拠点が操業不能となった際には、その代替生産ラインとしても期待が高まっています。

6号棟建設にあたっては、環境に配慮し、屋上に太陽光発電システムを設置しました。工場全体で年間に消費される電力量のうち約8 %を賄っています。

アズビル太信では、ケースやプリント基板の開発・設計・実装組立て・品質保証まで一貫して生産を行うことができるため、外部企業が求めているものを設計段階から一緒に作り上げる体制が整っています。こうした高度な技術力を強みに、今後は外販体制をさらに強化し、ユニット完成品も積極的に手掛けていく考えです。アズビルはもちろん、広範な外部の取引先にも、アズビル太信ならではの価値を引き続き提供していきます。

新たに建設された6号棟

新たに建設された6号棟。6号棟の屋上には太陽光発電システムが設置されている。

表面実装部品搭載ライン(チップマウンタライン)

表面実装部品搭載ライン(チップマウンタライン)

アズビルの協調オートメーションシステム Harmonas-DEO™などのPLC統合コントローラ DOPLの組立てライン。アズビルの湘南工場にあった製造ラインを、そのままアズビル太信へ移設して生産を行っている

アズビルの協調オートメーションシステム Harmonas-DEO™などのPLC統合コントローラ DOPLの組立てライン。アズビルの湘南工場にあった製造ラインを、そのままアズビル太信へ移設して生産を行っている。

*1:SMT(Surface Mount Technology)
表面実装技術。プリント基板にペースト状のクリームはんだを印刷、電子部品をチップマウンタで搭載、リフロー炉で熱を加えてはんだを溶かし接合する三つの工程からなり、プリント基板の表面に電子部品を取り付ける方法。

*2:OEM(Original Equipment Manufacturing
製造業者が、自社のブランドではなく、他社のブランドとして製品を製造すること。

この記事は2024年09月に掲載されたものです。

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